エントランスへはここをクリック   

築地移転予算成立
〜問われる国・都の民主党の今後〜

鷹取敦

30 Mar. 2010
独立系メディア「今日のコラム」


  築地市場の豊洲(東京ガス工場跡地・土壌汚染地)への移転に反対する民主党は、豊洲の用地取得費が含まれる予算案原案に反対し、用地取得費を削除した修正案を都議会に提出していた。共産党等、他の野党の賛成により修正案の成立が見込まれていた。
※これまでも東京都は東京ガスから用地を順次取得してきており、来年度予算 の取得費もその一部である。
 以下に引用した時事通信、共同通信の記事で報じられているように、30日、付帯決議をつけることで、民主党は一転して予算案原案に賛成に転じた。

 この2つの記事は書きぶりにやや差がある。時事通信の記事は「現在地再整備」(築地で建て替え、豊洲への移転はしない)の今後の議会による検討が次の焦点になるという点に重きをおいた書き方をしている。一方、共同通信では民主党が豊洲移転を認める立場に変わったと捉えた書き方をしている。

 一般論として言えば、付帯決議には拘束力は無いため、付帯決議を付けて賛成に回ったことは、事実上移転を認めたことに他ならないが、このケースについては、必ずしもそういうことにはならない。その理由の1つは東京都では民主党が先の都議選で多数の53議席を占め、野党を合計すると過半数を占ている点。もう1つは築地市場の移転には、民主党が政権与党の中枢を占める国、農水大臣の許可が必要であるという点にある。

 農水大臣の許可については、以前に青山貞一氏が下記に詳しく指摘している。

■築地市場の豊洲移転、新農水大臣が不許可で決着か!(青山貞一)
http://eritokyo.jp/independent/aoyama-col20025.htm


■都議会の会派構成(東京都議会ウェブサイトより平成22年1月25日現在)
都議会民主党 53人
東京都議会自由民主党 38人
都議会公明党 23人
日本共産党東京都議会議員団 8人
都議会生活者ネットワーク ・みらい 3人
無所属(自治市民’93) 1人
無所属(平成維新の会) 1人
合計 127人(過半数64人)

 石原知事は、今後、議会による「現地再整備」の検討結果を「尊重した」という形だけ作り移転事業を進める心づもりかも知れないが、市場の移転に必要な予算は今回の用地取得だけではないから、民主党が知事の判断を評価しなければ、豊洲移転関連予算を再度削除することが出来る。来年の予算審議で再度、議会が知事の判断の是非、移転の是非を問うことができるから、付帯決議といえども知事はこれを軽んずることはできないだろう。

 また、そもそもこのように汚染され莫大な浄化費用をかけなければ使えない土地を「適切な価格」で取得したか/するかどうかも問題になる。予算に賛成した民主党にはチェックする責任も生じる。「適切な価格」で購入するのであれば、それは都の財産として残るだけなので、土地を取得すること自体は事業推進の既成事実にはならず、移転を止める判断の妨げとはならない。汚染が問題にならないような土地の有効活用を行えばよいだけである。

 国、都議会双方における民主党の今後の対応が厳しく国民、都民によって評価されることとなる。

時事通信
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2010033000580
築地移転予算が成立=現在地再整備検討の付帯決議も−東京都

 東京都が進める築地市場(中央区)移転計画で、豊洲新市場予定地(江東区)の用地取得費約1260億円が盛り込まれた2010年度都中央卸売市場会計予算が30日の都議会本会議で民主、自民、公明3党などの賛成多数により可決、成立した。予定地の土壌汚染などを理由に移転反対を掲げていた最大会派の民主は、用地取得費を削除する修正案を出す構えを見せたが、現在地での再整備の可能性を検討するなどの付帯決議を付けることで賛成に転じた。

 付帯決議は、(1)議会が現在地再整備の可能性を検討し、知事は検討結果を尊重する(2)予定地の土壌汚染対策を検証し、安全な状態での開場を可能にする(3)知事は市場事業者の意見などを聴取し、合意形成などの有効な方策を検討する−との内容。委員会質疑での石原慎太郎知事の答弁を踏まえ、3党が共同提案した。

 今後は、この問題に関する都議会特別委員会での現在地再整備の検討が焦点となる。14年度中の新市場開場を目指す都は、6月に終わる予定地の汚染除去実験の結果を踏まえ、早期に用地を取得したい考え。しかし、同委の審議次第では議会側から計画凍結を迫られる可能性が残った形となり、石原知事は移転問題の扱いに引き続き苦慮しそうだ。

(2010/03/30-14:36)

共同通信
http://www.47news.jp/CN/201003/CN2010033001000715.html
都の築地市場移転予算成立 豊洲へ計画前進

 東京都議会の本会議が30日開かれ、築地市場の移転関連予算案を採決。民主、自民、公明党などが「築地での再整備の可能性について、知事は議会の検討結果を尊重する」とした付帯決議を付けて賛成し、可決した。
 今後、議会側の検討内容が注目されるが、都は移転の基本方針を堅持する構えで、与党の自公も協力。予算成立で、豊洲地区(江東区)への移転計画は前進した。

 民主党は、豊洲から高濃度の有害物質が検出されたことから、昨年の都議選以来、強引な移転に反対し、築地での再整備を主張。市場会計予算案から用地取得費1260億円を削除した修正案の提出を目指していた。

 民主党は修正案見送りの条件として(1)都が再整備を検討する(2)用地取得費の執行は議会の合意を尊重する、などの文言を都に要求。付帯決議では明記されず、石原慎太郎知事が答弁することで同意した。

 知事は予算特別委員会で答弁したが、都を主体とせず「議会が再整備案を検討した結果は真摯に受け止めたい」と表明。新市場の整備には議会の合意を踏まえるべきだとの質問にも「(二元代表制の観点から)議会の意思は尊重したい」と、一般論とみられる表現にとどめていた。

2010/03/30 16:51 【共同通信】