鷹取 敦 |
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10月14日、会計検査院は平成20年6月の参議院決算委員会における検査要請に応じて行った「各府省所管の公益法人に関する会計検査の結果について」報告を行った。会計検査院の「過去の検査要請に対する検査結果の報告」 http://www.jbaudit.go.jp/effort/zuiji/demand/21.html に「各府省所管の公益法人について」に、要旨、全文、別表がPDFで掲載されている。 国および独立行政法人(以下、独法)は84の公益法人に、のべ145の基金を設置し税金等を拠出している。国が所管している基金は110、平成20年度末の保有額が約9120億円、独法が所管している基金は35、平成20年度末の保有額が1750億円、合計で145基金、約1兆円に上る。 これらの基金のうちかなりの割合が休眠状態であったり、実際の活用額に比べて、過剰に基金を保有している問題を会計検査院が指摘したことが、新聞、テレビでも報道された。 事業実績額の50倍以上を保有しその金額が上位の10基金が、毎日新聞に掲載されているので、本稿の末尾に引用した。このうち環境政策に関わるものとして、「土壌汚染対策基金」が9番目に記載されている。 会計検査院の報告書別表25ページをみると、この基金は平成14年に設置され、平成20年度末に約14億円保有しており、「基金保有倍率」は135.8倍とされている。なお、参考として記載されている平成17年度の基金保有倍率は238.0倍である。 基金保有倍率とは、「直近の基金保有額を直近3年間の平均事業実績額で除して得た数値」(会計検査院報告書の説明)である。つまり実際に1年間に使われた額の何倍の基金を保有しているか、を表しており、「土壌汚染対策基金」の場合にはこれが135.8倍もあったということである。1年間平均でたった1000万円しか必要としていないので、今のペースで事業を行った場合136年分も基金があり、無駄に税金を眠らせているということになる。「埋蔵金」と言われ、一般会計に返納すべしと指摘されても仕方がないだろう。 ところで「土壌汚染対策基金」とは何だろうか。この基金の受け皿である「財団法人 日本環境協会」のウェブに説明がある。 http://www.jeas.or.jp/dojo/kikin_gaiyo.html ひらたく言えば、個人が所有する、住宅・マンション等の土地で、ザル法である土壌汚染対策法においてすら指定区域となるほど著しい土壌汚染が見つかった場合、汚染原因者が不明・不存在等で対策が出来ない時、自治体を通じて対策費用の半分を助成するという制度である。他に都道府県等が四分の一助成するので、本人の負担は四分の一となる。なお、土壌汚染対策には大きな費用を要するので、四分の一の負担であっても極めて大きい。 土壌汚染対策法の問題点はこれまで、本コラムで何度も指摘してきたが、まず汚染が相当程度あっても見つからない方法で調べるという問題点があるので、そもそも汚染があっても「指定区域」に指定されるケースが少ない。 さらに言えば、これまでの土壌汚染対策法では、調査が行われるのは原則として工場が廃止される時なので、汚染があれば汚染者は工場の操業者であると考えるのが当然であり、「汚染原因者が不明」で「土地の所有者が個人」というケースはまず存在しない。 つまり「土壌汚染対策基金」は、現行法ではまず存在しないケースを想定しているのだから使われなくて当然である。その結果として14億円もの基金を積み上げてきたのである。 一方で、個人所有の土地から土壌汚染が見つかるケースは少なくない。廃棄物処分場の後を愛知県が土地造成し、現在のURが住宅開発した小牧の土壌汚染のケースは何度も報道されているので全国的に知られているが、これなどまさに、個人所有の土地が汚染されているケースである。この問題は本コラムでも、調査を池田こみち環境総合研究所副所長が紹介している。 ■産廃処分所跡地の住宅開発〜住民は終の住処を守れるか〜岡山市の小鳥が丘団地でも、住宅地として両備グループが宅地造成・販売した土地の土壌汚染(旭油化による)が深刻な問題となっている。 いずれも汚染の原因者・汚染の措置に責任のある者が不明ということではないから、基金の対象にならない。なったとしても、全く責任のない住民に対策費の4分の1もの巨額の負担はとても出来ないだろう。 個人所有の土地でなくとも、住宅周辺に土壌汚染があるが、土壌汚染対策法の対象外で調査されない例は日本中に少なくない。 活用されない巨額の基金が積み上げられている一方で、解決されない土壌汚染が積み上がっているという構図である。 「土壌汚染対策基金」は、単に税金が使われずに無駄になっているという問題ではない。住民が切に解決を願っている問題は放置され、一方で国(環境省)の天下り先である公益法人・日本環境協会に税金を投入し、余剰金を積み上げているのである。
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