鷹取 敦 |
9月2日、国際オリンピック委員会(IOC)は、2016年夏季オリンピックに立候補しているスペイン・マドリード、ブラジル・リオデジャネイロ、アメリカ・シカゴ、そして東京の4都市に対する評価委員会の評価を公表した。IOCが実施した世論支持率調査によると、「強い支持」と「支持」の合計がマドリード84.9%、リオデジャネイロ84.5%、シカゴ67.3%であるのに対して、東京は55.5%と最低である。(※1) (※1)16年五輪:IOC報告書「東京、世論の支持低い」(毎日新聞 2009年9月2日)IOCの具体的な調査方法は分からないが、以前に自治会で東京オリンピック招致への賛同を求める署名が回覧されてきたことがある。回覧であるから誰が署名したかしないかはすぐに分かる。本当に支持していなくとも、東京都から回ってきたものであれば、おつきあいで署名した方が無難だと思う人も少なくないだろう。また、一方で莫大な広告費をかけ、スポーツ関係者を総動員して、東京オリンピック招致をさかんに宣伝している。それだけのことをして、なお支持率が最低、半数をようやくわずかに上回る程度なのだから、国民は東京オリンピックなどいらないと言っているに等しいのではないだろうか。 一方、東京の強みとして評価されているのが「財政力の盤石さ」であるといわれている。これは麻生首相が「政府保証」(財務保証)を約束したためであるそうだ。 政府が財務保証をするということは、足りない分は税金で賄いますよ、ということである。日本はそうでなくても国の債務残高がGDPの170%を超え、他の先進国と比較して極めて高く、さらにこの「景気対策」で借金を積み増している状態である。日本の信用が落ち国債の利率が少し上がれば、借金がふくれあがり、返済に追われ、定常的な支出もままならなくなり、たちまち日本は首が回らなくなると認識すべきだろう。(すでになっているが。) この上に不要不急で、国民も望んでいないオリンピックに税金を投入することを約束することで、ようやく得たのが「財政力の盤石さ」なるものである。オリンピック計画としては仮に評価されたとしても、このような約束をしては国としての評価は下がるだけではないだろうか。 さいわい、2016年夏季五輪の開催都市決定まで1か月を切ったこの時点で、政権交代が実現した。現時点であれば、麻生首相が約束した「財務保証」を撤回することは可能である。東京五輪招致委員会は、「首相が総会に出席しないと、『財政保証の信頼性が揺らぎかねない』」(※2)と危惧しているというが、国民にとっては、むしろ無駄な税金の支出を食い止める好機と考えるべきだろう。 (※2)東京五輪は鳩山さん次第?…都がIOC総会出席要請(読売新聞 2009年9月4日)東京都は都議15人(民主7人、自民5人、公明3人)を公費(1人当たり100万円)でデンマークで開催されるIOC総会に派遣すると発表し、都民から苦情があいついでいるという。(※3) (※3)五輪招致支援で都議派遣、都民から苦情相次ぐ(日経新聞2009年9月4日)新たなハコモノ建設を招き、ただでさえ混雑している都心にさらに渋滞を発生させ、地球環境にも地域の環境にも国と都の財政にも深刻な影響に税金を投入しようという計画は、旧来の自民党政治の延長でしかない。 鳩山新総理は、このような計画への国の財務保証はしないと明言することが、政権交代を象徴する第一歩となるのではないだろうか。 |