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築地市場の豊洲移転反対デモ

鷹取 敦
掲載日:2009年6月28日


 各地で6月の史上最高気温が記録され、東京都心でも31.8度の真夏日となった6月27日(土)、築地市場の豊洲への移転に反対するデモ行進が行われた。


築地市場移転反対デモ
撮影:鷹取敦 CASIO EX-Z850 2009.6.27


 この移転事業の問題点は、これまで本コラムで何度も指摘してきた。簡単に言えば、(日本最大の魚市場、大田市場に次ぐ青果市場、観光地としても世界的に有名な)築地市場の豊洲への移転の一番の問題点は、移転計画地の豊洲が東京ガスの工場跡地で、極めて高い濃度の有害物質で汚染されていることにある。

 一応、東京ガス、東京都により「汚染除去」が行われていることになっているが、処理後にもまだ大量の汚染が地下に残されること、粘土層への汚染、「不透水層」が確認されない地点があり汚染が広がる可能性が指摘されていること、東京都が行っている調査検討などの透明性が不十分であることなどが指摘されており、そもそも移転に必要性が無いとも指摘されている。

 この移転事業に反対する5回目のデモ行進行われ、数百人の参加者(記事により500〜1300人)が、築地市場から銀座、東京八重洲口前を通り過ぎ、常盤橋公園までの4キロ弱の距離を、移転の問題点を沿道の人々に訴えながら歩いた。


築地市場移転反対デモ
撮影:鷹取敦 CASIO EX-Z850 2009.6.27


 おりしも7月12日投開票の都議選、そして「近日中」とも言われる衆院選を控え、デモ出発地点の築地市場正門前では、「築地市場を考える会」の方、消費者団体の方に加え、野党の国会議員、都議会議員、候補者等が順番に築地市場の移転問題・豊洲の汚染問題を訴え、デモに加わった。

 デモでは沿道の人々に移転の問題点を訴えるビラを配られていた。一旦、ビラを受け取るのを拒否しかけた人も、築地の問題だと気がつくと一転して受け取り、話に耳を傾ける人も多く、一般の人の関心の高さがうかがわれた。

 デモが掲げていた看板では「土壌汚染対策法」を守って、法に基づいた調査をするよう求めていたが、この点については筆者の考えは異なる。本コラムでも指摘してきたように「土壌汚染対策法」は、極めて目の粗い粗ザル法である。そのザル法で採用している試験方法で測ってさえ、極めて高濃度の汚染が数多く発見されているのが豊洲の汚染である。現行の「土壌汚染対策法」を小手先だけ改正しても(附則3条を改正して遡って適用できるようにしても)、根本的な解決にはならない。

 一般論としては「土壌汚染対策法」の基本的な枠組みを見直し、経済的な誘導措置を含み、土地利用のあり方に至るまで配慮するような制度に変えて行く必要がある。豊洲への移転事業について言えば、法の改正を待たずとも、東京都が不要かつリスクをもたらす事業を見直せば済む。

 本日のデモに関してTBSの報道が詳しいので、以下に紹介したい。

TBS News i
http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye4169235.html
築地移転問題、衆院選にも大きく影響

 衆院選の前哨戦ともいえる東京都議選挙の投票日まで、あと2週間。大きな争点になっているのが、築地市場の移転問題ですが、都民の判断はその先の衆院選に大きな影響を与えそうで、与野党とも必死です。

 今回が5度目となるデモ行進には、市場の中卸業者や野党の国会議員など1300人が参加しました。

 「東京の半分の以上の魚を扱っている本家本山が、ガス工場が31年あった場所に市場移すって、世界の笑われものですよ」(新党 田中康夫 参院議員)

 70年の歴史をもつ築地市場の移転予定地の土壌から環境基準の4万3000倍の発ガン性物質などが見つかったのに加え、汚染された地下水が浸透しない粘土質の地層が2つの地点で見つからなかった事実を東京都が報告していなかったことが明らかになり、問題は深刻化しました。

 「危険をはらんでいるところに移転すべきではない」(仲卸業者[場内] 宇田川実さん)

 「(豊洲新市場予定地に)人が一生涯住み続けても、健康に影響がないという対策になっている」(東京都 大里直恵 新市場建設課長)

 「東京から政権交代」と、都議選を衆院選の前哨戦と位置づける民主党は、築地市場の移転反対を争点の1つに挙げます。

 「石原都政、その一つの目玉が豊洲への築地市場の移転。それをやめさせるためには、たった1つ、都議選で勝つことなんです」(民主党 鳩山由紀夫 代表、先月30日)

 自らが都議選の選対本部長をつとめる鳩山代表は、築地問題の解決のため、都議選での勝利を訴え、その後の衆院選も視野に政権交代の必要性を強調しました。

 「地方選挙は地方選挙、国政選挙とは別のものだと思っております」(麻生首相、25日)

 一方、都議選と衆院選の関係を否定する麻生総理も全候補者の事務所を訪問する力の入れようです。しかし、麻生総理が築地の移転問題に触れることは一切ありません。

 「引く(移転しない)も行く(移転する)も両方とも問題があるので、少なくとも選挙目当ての政争の具にしてはならない」(築地を含む東京2区選出 自民党 深谷隆司 衆院議員)

 築地移転問題を争点にしたくない本音が垣間見えました。

 「ワンイシューでも、選挙は戦える。築地市場の移転賛成か反対かで我々が選挙戦を戦うんだ。当然、移転はさせない」(民主党 衆院選公認 中山義活 前衆院議員)

 そのほかの東京第2区衆院選立候補予定者は中島束氏(共産党)、加藤文康氏(諸派)となっています。

 「この都議選挙で負けると、極めて深刻な事態になりますんで」(麻生首相、今月14日)

 候補者応援の場では強い危機感を示した麻生総理。首都決戦の攻防は、その後の政権選択に直結する戦いになっています。(27日17:43)