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日韓環境アセスメント国際シンポ
〜韓国・牛浦湿原視察等〜


鷹取 敦

掲載日:2008年12月1日


■2008年11月29日(土)牛浦(ウポ)湿原・ラムサール条約登録地

 シンポジウム翌日には、エクスカーション(見学会)としてラムサール条約登録地である、牛浦(ウポ)湿原を視察した。釜山大学から牛浦まではバスで1時間半ほどかかる。

 ラムサール条約とは、湿原の保存に関する条約で、日本語の正式名称は「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」という。湿原は生物多様性にとって重要な存在である。鳥類や絶滅のおそれがある動植物、地域を代表する湿原等を保護するために登録される。日本では北は釧路湿原から奥日光の湿原、谷津干潟、藤前干潟、宍道湖、屋久島等多くの水域が登録されている。

 牛浦湿原は1998年3月にラムサール条約に登録されている韓国最大の自然湿原で、牛浦(128万平米)、木浦(53万平米)、砂旨(36万平米)、チョクチボル(14万平米)の4つの湿原から構成されており、全体を総称して牛浦湿原と呼ばれる。(参考:牛浦湿原パンフレット、昌寧郡作成)

 最大の牛浦の近くに牛浦湿原生態展示館(Upo Wetland Ecology Center)があり、まずはこの施設で牛浦湿原の概要について学習した。
牛浦湿原生態展示館

牛浦湿原の模型

 その後、湿原を囲む堤防の上を約1時間歩き牛浦と砂旨浦を視察した。牛浦は非常に広大で湖のようであり、一方、砂旨浦は浅い水面が中心のいわゆる湿原の体であった。紅葉の季節はすでに終わっており、常緑樹である松(韓国松、赤松等)と枯れた木、ススキ等が湿原を囲っていた。渡り鳥の飛来が多い季節には数千羽が訪れるそうだが、今回はそこまでの数はなく、また双眼鏡がないとなかなか詳細が確認できないので、どんな鳥がいたかなかなか確認は難しかったものの、アオサギ等のサギ類は大きいので容易に目にすること出来た。いい季節に来れば多くの鳥が見られてさぞ壮観なのだろうと思う。案内してくださった金氏(韓国アセスメント学会副会長)によれば、1日に2回一斉に飛び立つことがあり、それはすばらしい眺めだそうである。一方で、理由はよくわからないものの、湿原は年々縮小しているそうなので、貴重な湿原の行方が心配でもある。

牛浦

牛浦

牛浦の水鳥

牛浦のサギ類

砂旨浦

 散策の後、近くの食堂で鯉(の一種)を煮付けた韓国料理をいただいた。

 堤防を挟んで牛浦の反対側には、畑が広がっていた。このあたりは夏には水田、冬にタマネギの耕作が行われているそうである。韓国内でタマネギの耕作を始めた最初の地域ということで、エクスカーションの2つ目は最初にタマネギの耕作を始めたという旧家の160年前からの屋敷を訪ねた。

タマネギ畑

 公的な施設ではないが、依頼があれば見学に応じているそうである。今回は金氏の依頼で、屋敷の持ち主の弟さんがソウルからわざわざこのためにいらっしゃったそうである。タマネギ御殿というべきだろうか、入り口の前にタマネギの像が建っていた。



 200室以上ある広い敷地だが、御殿といっても1つ1つの建物が巨大な訳ではない。歴史的な韓国の様式の平屋が庭園とともに多数敷地内にある、というところである。他から移築された建物もあり、見学当日も改修が行われていた。






■2008年11月29日(土)影島(ヨンド)

 ここで正式なエクスカーションは終了し、希望者の参加でヨンド(影島)に向かった。ヨンドは「21世紀の海洋観光都市」として海岸沿いの景観等がアピールされている島である。(参考:影島区オフィシャルサイト http://japanese.yeongdo.go.kr/

 今回は観光客向けの場所は訪れなかった。散策した海岸の背後には急峻な山(ただし釜山の他の地域同様、高層住宅が建ち並んでいる)沖合にはたくさんの大きな船が並んでいるのが見えた。ヨンドには金氏の奥様の叔父さんが経営している小さな海鮮料理屋さんがあり、そこに案内していただいたのだ。昨日は天候が悪かったため、大きな魚は捕れなかったそうだが、小さな白身魚のお刺身とアナゴ焼きをいただいた。

ヨンドの海岸

ヨンドの高層住宅

ヨンドの沖合

アナゴ焼き

 ヨンドから釜山大学まで直線距離で約20キロ弱である。ヨンドから釜山大学の国際会館まで4人でタクシーで移動した。おそらく30キロほど走ったのではないかと思うが、24,400ウォン(約2,000円)であった。日本ではおそらく1万円程度かかるだろう。個人的には大気汚染、CO2などの環境面の観点からだけでなく、街の様子をみるためにも、ヨンドから釜山本土まで移動して地下鉄を使って移動したかったところである。鉄道を使えば乗り換え無しの1本で最寄りの駅まで戻れた。地下鉄の料金は料金は、1区間(〜10km)1,100ウォン(88円)、2区間(10km〜)1,300ウォン(104円)
(参考:http://www.pusannavi.com/home/home_11.html) 。いずれにしてもここのところのウォン安を抜きにしても日本と比べてきわめて安いことが分かった。

 参加者の1人であるJICAの臼井氏は折りたたみ式自転車を持ってこられており、どこに行くにも折りたたんだ自転車を持ち歩き、最寄りの駅から自転車で移動されていた。エクスカーションの後はヨンド行きには参加されず、釜山のダウンタウンから、ヨンドの隣の島に自転車で訪れたそうである。環境にやさしいだけでなく、小回りがきき機動的であるし、街を一人でめぐるにはぴったりの方法だ。すばらしい観光手段である。


■2008年11月30日(日)帰国

 帰りの便は少し早めだったため朝の渋滞の可能性も考慮して、帰りは8時に出発し3人で乗り合わせてタクシーで空港に向かった。地図をみると約20キロ弱あるようだが、40分で到着し、ひとり500円程度であった。

 釜山空港(金海国際空港)は国際線に7つほどしかゲートのない決して大きくはない空港であり、現在国際線ターミナルの新築工事中である。

釜山空港

 A330が空港を飛び立つとすぐに日本の領空に入り、天候がよかったため富士山から綺麗に見えた。



 青山教授の代理として参加した日韓国際シンポであったが、非常に学ぶことも多く、日韓の研究者・実務者のとの交流も実り多く、韓国の貴重な自然、歴史、文化にも触れることができ、貴重な4日間であった。

 代理としての貴重な機会をいただいた青山教授(所長)、論文およびプレゼンテーションの韓国語訳、現地の手配をしていただいた趙氏(Korea Environment Institute)、日本側で準備をしていただいた日本環境アセスメント学会国際交流委員会の臼井氏、シンポジウムの司会およびエクスカーションで案内をしていただいた金氏はじめ、ご尽力いただいた日韓のみなさまに心よりお礼申し上げます。

おわり