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家電リサイクル費用は
いつ誰が負担すべきか
〜審議会で「後払い方式」維持の方針〜

鷹取 敦

掲載日:2007年10月31日


 報道によると、産業構造審議会と中央環境審議会は、家電リサイクルの費用の「後払い方式」を維持する方針を固めたという。
(2007年10月30日23時32分 読売新聞)一部引用
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/
20071030i417.htm?from=main4

 後払い方式については、消費者がリサイクル料を払わずに不法投棄する例が後を絶たない。このため合同会合では、購入時に支払う「前払い方式」への変更を検討してきた。
 だが、同方式では、消費者が家電を廃棄せずに中古品業者に売り払う場合などに、リサイクル料を返還する仕組みが必要となる。こうした仕組み作りの費用がかさむことなどから、現状維持でやむを得ないという結論に達した。
 「後払い方式」とは法律に基づいてリサイクルのために家電(テレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコン)をメーカーに引き取ってもらう時に、消費者がリサイクル費用を支払う現行の方式である。これに対して「前払い方式」は購入時にリサイクル費用を製品の代金とは別に支払う方式である。

 記事にあるように、現在は「後払い方式」であることにより、リサイクル料を逃れるための不法投棄が後を絶たないと言われている。しかし「前払い」の場合には、メーカーに引き取りを求めずに中古品業者に売った場合、消費者にリサイクル料を返金する仕組みが必要となり、これにはコストがかかりすぎるために「前払い方式」を断念し、しかたなく「後払い方式」を維持するのだと説明されている。

 一方で「合同会合は、リサイクル料の引き下げにつながるよう、リサイクル費用の内訳をメーカーに定期的に報告・公表させる方針も打ち出した」(記事より)ことからも分かるように、そもそも消費者が支払っているリサイクル料が適切な額であるか不透明な点にも問題がある。メーカーや製品によってリサイクルにかかる費用は千差万別であるはずだが、費用な一律の額が徴収されている。

 現行の「後払い方式」でも、合同会合で議論されていたという「前払い方式」でも、この問題は解消できない。どのような製品であれ、どのようなリサイクル方法であれ、一律の額を消費者が支払うことになるからである。

 「後払い」か「前払い」かが問題なのではなく、そもそも日本の家電リサイクル法に「拡大生産者責任」の考えが徹底していないことが問題なのである。

 リサイクル費用がメーカー負担であれば、メーカーはよりリサイクルしやすい製品を開発するだろう。そうすればリサイクル費用が少なくなるからである。特に容器包装の問題、つまり過剰包装をなくす効果が期待される。また、中古業者に売った場合にリサイクル費用を返金しなければ、などという複雑な仕組みにする必要は全くないから、合同会合で懸念されていた問題も解消される。

 もちろんメーカーが負担するリサイクル費用は製品価格に一定程度上乗せされることになるだろう。しかし価格競争力、事後の負担を考えれば、メーカーは出来るだけリサイクルしやすい製品の開発を心がけるだろう。そうすればより競争力のある製品となり事後の負担も軽くなる。

 以前、「カナダ・ノバスコシア州廃棄物政策ニュース E−ウェイスト規制法可決」(http://eritokyo.jp/independent/takatori-col138.htm)で紹介したように、ノバスコシア州の電気製品のリサイクル制度では、対象となる製品の種類も多く、拡大生産者責任が徹底している。既に販売されている製品も含めて、全てメーカー負担でリサイクルされるのである。

 拡大生産者責任は、メーカーに責任があるからメーカーが負担すべきだという道義的なことに意味があるのではない、経済的なインセンティブ、つまり誘導を行うことにより、より環境負荷の少ない製品の開発が促進され、努力したものが報われる仕組みとすることを目的としている。

 「後払い方式」か「前払い方式」の二者択一がそもそも問題であったのだ。日本で「焼却」か「埋立」の二者択一であるかのように議論されていることとよく似ている。もっとも望ましい選択肢を排除して、二者択一の議論をしても正しい答えは得られない。