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UKの先進的な
ハイブリッド風力発電計画


鷹取 敦

掲載日:2007年2月16日


 カナダ・ノバスコシア州の循環型社会構築政策、固形廃棄物管理法など、日常的にノバスコシア州に関連する情報やニュースをウォッチしている中で、再生エネルギーの普及目標に関する次の記事を目にした。
Nova Scotia Plans Renewable Electricity Expansion
RENEWABLE ENERGY ACCESS 2007/02/07
http://www.renewableenergyaccess.com/rea/news/
story?id=47356
 記事の冒頭部分は次のようなものである。
 ノバスコシア州政府の再生可能電力指令における最新目標値には、2013年までに州内電力のおおむね20%を再生可能エネルギーとすると明記されている。これによりノバスコシアに現在設置されている49.26MWの風力発電の容量は今後3年で大幅に増強されることになる。
 対象とする「再生可能エネルギー」「自然エネルギー」「新エネルギー」の定義は必ずしも同じでないので、単純な比較はできないものの、日本のRPS法による再生可能エネルギー由来の電力の目標値は2010 年に1.35%に過ぎない。
RPS法の概要と施行状況について RPS法の概要と施行状況について(平成18年10月平成18年10月資源エネルギー庁)
http://www.meti.go.jp/committee/materials/
downloadfiles/g61108c06j.pdf
 しかし、ノバスコシア州の20%という目標値自体は、
「2010 年までに、カリフォルニア州は電力の 20% を再生可能エネルギーに頼ろうと計画している。」「最も野心的なもののの一つはニュージャージー州で、2021 年までに電力の 22.5%を再生可能にしなくてはならない。」
http://cruel.org/economist/economistnewenergy.html
The Economist Vol 381, No. 8504 (2006/11/18), "Tilting at windmills",pp. 72-74、山形浩生訳
「ERECのZervos 会長から19 日オープニングの基調講演でスタディーレポートが報告され、『最大限の政策的行動がとられるならば、現EU 15 カ国で2020 年には少なくとも最終エネルギーの20%は再生可能エネルギーで供給可能』と発表された。」
http://www.nedo.go.jp/kankobutsu/report/930/930-01.pdf
EU の再生可能エネルギー導入普及に関する最近の動き、NEDO 技術開発機構 パリ事務所 深澤和則、NEDO海外レポート NO.930, 2004. 4. 28
をみると突出して高い目標ではないことが分かる。

 ところで、ノバスコシア州で今後、増強が期待されている風力発電は、ともすれば「風任せでアテにならない」、すなわち電力を安定的に供給できないので予備的な位置づけでしかないと評価されることが多い。

 これに関してイギリスの風力発電に関する最新の記事を紹介したい。
UK approves world first offshore wind hybrid plan
REUTERS Thu Feb 8, 2007 8:11am ET
http://today.reuters.com/news/articlenews.aspx?type=
scienceNews&storyID=2007-02-08T131023Z_01_L08909163_RTRUKOC_0_
US-BRITAIN-OFFSHORE-POWER-GAS.xml&WTmodLoc=NewsHome
-C3-scienceNews-3
エクリプス・エナジー、英で風力・ガス複合発電
NIKKEI.NET
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/
20070209AT2M0900P09022007.html
 これらの記事では、イギリス政府のアイリッシュ海における先進的で先例のないハイブリッド発電計画を紹介している。この計画は、風力による発電に風が弱いときに、ガス火力による発電を組み合わせたものである。

 エクリプス・エナジー社のオーモンド計画ではほとんどの電力はイングランドの北西部の沖合に設置される30基の風力発電機で発電され、火力発電はモーカム湾から供給されるガスを利用した海上の小さい施設によるという。

 この計画はガス生産量の減少と環境問題・温暖化ガスの排出削減に対応するため、化石燃料への依存度を下げることを目的としたものである。

 日本では温暖化への対応として、原子力発電のように事故のリスクと放射性廃棄物による負荷の大きい発電の導入が「現実的」であるとされ、再生可能エネルギーに「ごみ発電」のように有害物質等の環境負荷が高く、循環型社会に逆行するものまで含まれようとしている一方で、風力発電のような自然エネルギーについては「安定した電力供給が得られない」、「途上国のように時々停電してもいいのであれば導入量を増やせるが」という主張を聞くことが多い。

 この考え方は、焼却、溶融、埋め立て、ごみ発電が「現実的」であるかのように喧伝されて相変わらず廃棄物処理の主流として推進されている廃棄物政策とよく似ている。堆肥化、資源化、そもそもごみの排出を減らすこと、本来の意味での「拡大生産者責任」などは「非現実的」であるとして、大幅な導入、採用が見送られているのである。

 自然エネルギー、資源化は「理想」だが、従来の方法を使うのは「仕方がない」という発想である。

 イギリスの試みは、言われてみれば簡単なもの(技術的な課題はあろうが)だが、自然エネルギーを補助的に使うのではなく、自然エネルギーの弱点を補うために補助的に従来の火力発電を使うという発想が画期的である(41%が風力発電による見通し)。自然エネルギーを有効活用しないのは「もったいない」という前提に立った発想であろう。

 これは、ごみは燃やさない、埋め立てないことを前提として、できるだけ資源化し、補助的に埋め立て処分を用いているノバスコシア州の廃棄物政策と同じ発想だ。

 「仕方がない」ではなく「もったいない」の発想である。