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「ストップ八ッ場ダム
住民訴訟2周年報告集会」
参加記


鷹取 敦

掲載日:2006年12月9日


 雨の降る土曜日の午後、水道橋駅から徒歩1分、全水道会館大会議室で開催された「ストップ八ッ場ダム住民訴訟2周年報告集会」に参加した。

 最初に弁護団の大川隆司弁護士より、八ッ場ダム訴訟について過去の宮ヶ瀬ダムや相模大堰訴訟の教訓を踏まえ、訴訟について説明があった。八ッ場ダム訴訟の詳細については「八ッ場ダム訴訟」(http://www.yamba.jpn.org/)をご参照いただきたい。

 ひきつづき報告集会では、「永源寺第二ダムの高裁判決勝利」について吉川稔弁護士の講演で、永源寺第二ダムでは地裁判決後に国のずさんな調査が露呈し、高裁で厳しく批判されて国が敗訴したこと、滋賀県の栗東新駅に関連し地方裁の発行を差し止めた初の判決が紹介された。

 つづいて「利根川河川整備計画の策定に対して」嶋津暉之さん(利根川流域市民委員会共同代表)から、住民参加で丁寧に合意形成が進められた「淀川水系流域委員会」と、対照的に上位計画も無しに強引に着手され、住民の意見は聞き置くだけとする(八ッ場ダムに関わる)利根川水系の現状について問題提起された。利根川水系でも淀川水系と同じような住民参加型の流域委員会を求め、住民は「利根川流域市民委員会」(34団体が参加)を自主的に立ち上げた。

 休憩を挟んで各都県(群馬県、栃木県、茨城県、埼玉県、千葉県、東京都)から裁判の状況、活動等について報告された。各裁判ではパワーポイントを使って、利水・治水・災害誘発等の各論点につてできるだけ分かりやすく丁寧な意見陳述が行われてきたことが分かる。被告は利水面についてようやく反論を始めた段階のようである。

 最後に、弁護団の高橋利明弁護士より「八ッ場ダムの危険性」と題し、ダムサイトの地盤の危険性と、周辺の地すべりの危険性について、事業者側の調査結果を踏まえた解説が行われた。

 全体説明や各地からの報告にあったが、そもそも八ッ場ダムは利水面から見ても全く不要なダムである。ごみ焼却炉建設問題にも共通する点であるが、将来の需要について常に過大な予測を繰り返し(それは常に実態とかけ離れ)、それを前提にダムの建設が続けられてきたことはデータからも明らかであった。

 会場から、どうしてこんな不要であり税金の無駄遣いであることが明らかなダム建設が繰り返されるのか、という質問があったが、これに対する原告団弁護士の答えが、自分は官僚になったことがないから真意は分からないが、事業を続けるため、税金を支出しつづけるために官僚が必要としているという以外考えられない、という趣旨の答えをしたのが非常に印象的であった。

 この構造はダムに限らない。道路でも焼却炉でも、本当に住民・納税者が必要としているのであれば、「淀川水系流域委員会」のように住民参加で丁寧な合意形成をすることになんら不都合はない筈である。そうしてこそ、本当に必要な機能・規模の公共事業が可能となる。

 しかし八ッ場ダムにせよ、他の公共事業にせよ、多くのものは環境アセスメントを含めて各段階で、住民の意見は「聞き置かれる」だけで、形式的な手続きを済ませ、「違法性はない」「手続き的にはなんら問題はない」などとして、強引に事業が進められている。そのこと自体が、その公共事業が真に必要ではない、すなわち無駄な公共事業であることを白状しているのではないだろうか。