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カナダ・ノバスコシア州の
選挙資金改革法案


鷹取 敦

掲載日:2006年11月22日


 カナダ・ノバスコシア州の循環型社会構築政策、固形廃棄物管理法など、日常的にカナダ、ノバスコシア州に関連する情報やニュースをウォッチしている中で、ある記事を目にした。

 そのカナダCBCニュースの記事によると、カナダ・ノバスコシア州の保守党が、特定の個人、企業、団体からの政党への政治献金を、年間5000カナダドル(約50万円)までに制約する選挙資金改革法案を提出するという。(この改革案は連邦やマニトバ州、ニューブルンズウィック州、P.E.I.と同様のものであるそうだ。)また、州外からの献金は受け付けられないということである。
CBC NEWS 2006/11/17
Nova Scotia government to limit donations to political parties
http://www.cbc.ca/cp/Atlantic/061117/t111713A.html
 ノバスコシア州の上記の法案では政治献金に制約を設ける代わりに、政党は獲得票1票あたり年間1.5カナダドル(約1500円)の資金を公的資金より受け取ることになる。

 日本でも似たような『改革』なるものが行われた。「政党交付金」である。政党助成法を根拠とするもので2006年の政党助成金支給額は総額317億3100万円、各党の内訳は以下のとおりとなっている。
自民党  168億4,600万円
民主党  104億7,800万円
公明党   28億5,800万円
社民党   10億0,600万円
国民新党   2億6,600万円
新党日本   1億6,000万円
※日本共産党  受け取り拒否
出典:Wikipedia(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%94%BF%E5%85%9A%E4%BA%A4%E4%BB%98%E9%87%91

 一方、献金の方はと言えば、個人は献金先によって1000万円〜2000万円、企業・労働組合等の団体の場合にはその規模(資本金、組合員数等)によって750万円〜1億円、の限度額である。個人はもとより団体(企業・労働組合)の献金の枠は桁違いに大きいことが分かる。
 参考:http://www.pref.osaka.jp/senkan/dantai/gendo.html

 ノバスコシア州の政治資金改革の目的は、特定の個人、企業、団体が政治に大きな影響を及ぼすことにないようにということであり、これによって政党は特定の団体等に依存することなくより独立した立場を維持することが出来るようになる。

 日本の場合には、政党へ税金が投入されるようになっただけで、そのために納税者の負担が増えただけでなく、政党交付金の確保を理由に実態のない(政治理念を共有しない)政治家の離合集散が行われたり、政党要件を得ていない政治勢力、地方政党などは交付金を得られないなどの、副作用ばかりが目立つ。

 政党・政治家は本来、有権者・納税者の代表者でなければならないが、少なくとも日本の政治の現状を見る限り、政党・政治家が我々の意見、すなわち民意を集約・代表していると思えるだろうか。

 教育基本法のタウンミーティングやらせ問題で、伊吹文明文科相は「一番の民意は何でしょうか。 それは日本国憲法によれば、国会の議論こそ民意の最大の集積の場所です」と豪語した。しかし、国会の議論に民意が集積されているなどと誰が信じられるだろう。

 特定の団体によって政治献金の大きな部分が占められていれば、政党・政治家が彼らのスポンサーである団体の意向を政治に反映させようとしても不思議ではない。

 そして、環境問題、公共事業に関わる問題、談合問題など、政治・行政に関わる多くの問題、いわゆる『利権』とよばれる問題の根源の1つはここにある。この構造を解消せずしてこれらの問題を解決するのは難しいし、これが解消されれば多くの問題は改善に向かう可能性が少しは開けるだろう。

 ノバスコシア州の改革案は、州知事 Rodney MacDonald が公約としてかかげていたものであり、与党である保守党から提出されたものである。本当に「美しい国」を政治資金分野で目指すのであれば、この改革に倣ってもよいのではないだろうか。