環八開通 騒音予測と制限速度の騙し討ち 鷹取 敦 掲載日:2006年6月30日 |
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●環八開通 去る平成18年5月、環状第八号線(都道)、いわゆる環八(かんぱち)が全線開通した。 東京都の報道発表資料によると、最後に開通した区間は、
●東京都の騒音予測 この区間は一部はトンネルになっているものの、基本的に地上道路で、住宅地域を貫いている区間であるため、東京都(第四建設事務所)は事前に沿道の住宅地等への騒音の影響を(道路の建設に関わった)民間のコンサルタント会社に随意契約で予測調査を委託して実施し、住民に説明を行っていた。 東京都の住民への説明は、全ての地点において環境基準を下回る(ほんのわずか小数点以下、下回るだけの地点も複数)というものであった。 この予測調査は技術的にみて問題の多いものであり、その点について筆者は第三者としての意見(セカンドオピニオン)を地域住民(杉並区の「環八の会」、練馬区の地元商店街等)に求められ意見書を作成し、依頼者によって東京都や都議会に配布された。 この東京都調査の具体的な問題点の別の機会に紹介したい。ただ、この意見書は東京都にも都議会にも提出され、公開されている文書なので、具体的な内容に関心のある方はお問い合わせいただきたい。 この東京都の騒音予測は走行速度50キロを前提としている。環八の開通区間の設計速度は60キロだが、制限速度を50キロとするので、その前提で予測を行った、と東京都は住民に説明してきた。 ちなみに自動車騒音は走行速度が速いほどレベルが上がる(うるさくなる)。例えば東京都の予測条件の場合、50キロと60キロでは2.4デシベルの差がある。もちろんうるさいのは60キロの方である。 ●住民から環境対策の要望 住民は騒音対策をしっかりして欲しいと、遮音壁を高くすることを東京都に要望し続けてきた。仮に環境基準を下回るとしても(その調査自体、誤りがあるものであったが)、現在の環境が大幅に悪化(騒音がうるさくなる)ことを考えれば、住民として当然の要望であろう。 しかし東京都は、環境基準を上回らないという理由でその要望を拒否し続けた。 実態を考えれば、制限速度50キロが完全に遵守されることが期待できるはずもないのだが、仮に50キロが遵守された場合には、環境基準をギリギリ下回る、というのが東京都の予測結果であり、住民への説明であった。 ●開通直後の制限速度の変更 実際に開通した後、地域住民は環八の路面表示をみて驚いたという。環八の既存の区間に表示されていた50キロの制限速度の表示が塗りつぶされ消されていたという。 警察に確認したところ、従来の制限速度50キロが解除され60キロが新たな制限速度になったという。新しく開通した区間も制限速度60キロに変更になったそうだ。 制限速度50キロだから環境基準を下回る、そう繰り返し説明してきた東京都から地域住民へ、制限速度の変更について事前の説明は一切なかったそうである。 仮に50キロが60キロに変更になれば、東京都の予測モデルを用いた場合、2.4デシベル騒音レベルが上昇し、環境基準を達成できない地点が多数発生することになる。 現在は供用直後であるため、まだ自動車交通量も少ないそうだから、環境基準を上回るところまで悪化していないかもしれない。しかし計画交通量に達した時に、環境基準を上回る状況が発生することは東京都の予測結果からみても明らかだ。 低い速度で環境基準を下回る結果を示し、いざ開通する時には制限速度を緩和する。これは住民にとってみれば騙し討ちに他ならないだろう。 |