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書き下ろし長編

コモンウェルス
Commonwealth: 20th Century Regime

目次と序文

佐藤清文
 Seibun Satow

2013年2月18日
初出:独立系メディア E-wave Tokyo

無断転載禁


Contents

序文

第一章 双世期(Twinturies)
 第一節 一九世紀と二〇世紀
 第二節 キーワードによる歴史
 第三節 ヒストリカルからヒストリックへ
 第四節 ウィーン体制と一八四八年革命
 第五節 ゴールド・ラッシュ
 第六節 金と紙幣
 第七節 二〇世紀の到来

第二章 アメリカの世紀とコモンウェルス(Pax Americana and Commonwealth)
 第一節 帝国主義
 第二節 エントロピーの世紀
 第三節 ドル箱
 第四節 帝国とコモンウェルス
 第五節 帝国と皇帝
 第六節 ヨーロッパの帝国
 第七節 中国の帝国
 第八節 コモンウェルスとは何か
 第九節 コモンウェルスのフラクタル性
 第一〇節 共同主観性の体制

第三章 キャンペーンとNGO(Campaign and NGO )
 第一節 戦争とキャンペーン
 第二節 戦争と国民国家
 第三節 国民国家と政党
 第四節 国民と移民
 第五節 コモンウェルスと平和
 第六節 ゲリラの時代
 第七節 コモンウェルスとNGO
 第八節 ゲリラとしてのNGO

第四章 神の尊厳死(God's Death with Dignity)
 第一節 予言の自己実現
 第二節 メディア・スターの時代
 第三節 ローリング・トゥエンティーズ
 第四節 交通と文化
 第五節 コモンウェルス以後
 第六節 グローバリゼーションの意義
 第七節 カルチャー・トラフィックへ

キーワード・チャート
参照文献

付記 
本作品は2004年に執筆されたものです。古くなった記述や今の筆者と異なる考えなども含まれていますが、当時の感覚を残すためにそのままにしてあります。また、もともと階層性のない叙述であり、節で区切られていませんでしたので、見出しと内容が部分的に合致しない場合もあります。

"We also know there are known unknowns; that is to say we know there are some things we do not know. But there are also unknown unknowns ? the ones we don't know we don't know".
Donald Rumsfeld

 「できるなら、君はその職務から直ちに引退すべきだ。できないのなら、強引に身を引き剥がせ!もう十分すぎる程の時間を私たちは浪費してきた。老年を迎えた今こそ、いつでも旅立てる準備を始めようじゃないか」。

                          ルキウス・アンナエウス・セネカ


序文

 今日の「世界(Global)」を「コモンウェルス(Commonwealth)」という「雲(Clouds)」が覆っている。この数多くの雲は各地──最近だけでも、パレスチナやユーゴスラビア、アフガニスタン、イラク、スーダン──にさまざまな不幸と苦難をもたらしている。

 コモンウェルス雲が他のコモンウェルス雲とオーバーラップすると、強い引力が生じる。斥力によって反発することはない。結びつく。また、コモンウェルス雲には中心があるけれども、それは積極的ではない。ただコモンウェルス雲は中心にいくほど密度が濃く、離れると薄くなり、僅かな変化によって中心ならびに全体が大きく変動する。中心らしきものが複数同時に見られることもある。中心があるともないとも言えない。

 この観測結果から次の二点が顕在化している。

 コモンウェルス雲はすでに世界中のあらゆる権力から「キャンペーン(Campaign)」として認知され、体制を形成している。

 その体制はソフトであり、invisibleであって、初期値敏感性を持った複雑系的現象である。コモンウェルスはvisibleな暴力による強制はない。国民国家と帝国主義は暴力をvisibleに使っている。二〇世紀の暴力は、むしろ、invisibleになっているからこそ、メディア、特に電波メディアを通じて、visibleにする必要があり、それが可能になると、すぐさまカオス現象が生じる。

 このコモンウェルス、すなわち二〇世紀の体制を語るために、いくつかのキーワードを提起し、キーワードによる歴史を以下に公表する。「今を過ぎ去るこの時を生きよ。明日出来ることはそれに任せるがよい(carpe diem, quam minimum credula postero)」(クイントゥス・ホラティウス・フラックス)。

つづく