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2000年4月、サン・マイクロシステムズ社の共同創業者でチーフサイエンティストのビル・ジョイが『ワイヤード』誌に「未来はわれわれを必要としているか(Why the future doesn’t need
us)」という衝撃的な論文を発表しました。 その彼が、同論文の中で、自らも寄与してきたコンピューター技術も含めた科学技術──中でも、遺伝子工学・ナノテクノロジー・ロボット工学──の秘めた危険性について警鐘を鳴らし、次のような五つの倫理規範を提唱しました。 医療の「ヒポクラテスの誓い」にならい、科学者・技術者が大量破壊兵器につながる研究開発への非従事を誓う。 2 新技術の危険や倫理問題を検討する国際的な場をつくる。 3 製造者責任の概念を広げ、民間企業も技術の結果責任を負う。 4 危険と判断された技術や知識を国際的に管理する。 5 危険な知識の探求や技術開発はしない。 これは掲載されると、賛否両論を巻き起こしましたが、その悲観的なヴィジョンのために、産業革命期に職が奪われるのを恐れた熟練労働者が機械を叩き壊して回った運動になぞらえ、「現代のラッダイト運動」と鼻であしらう者さえいます。けれども、彼の批判的考察を無視して、科学技術の将来はありえません。科学技術において、問われているのはその発展自身ではなく、人間の判断力なのです。 しかも、この「未来はわれわれを必要としているか」という問いは、科学技術の問題を超えて、政治全般にも投げかけられるものです。 と同時に、多くの狭量な原理主義が世界を苦しめていますが、人々はユーモアを愛していることでしょう。未来もユーモアは歓迎してくれているはずです。 |