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社会の階層化を斥け、多様性の確保のため、社会法的観点に立脚しなければなりません。 3 教育 近代日本における教育の最大の問題点は、政治的課題が教育政策に還元され続けたことです。 確かに、子供は大人の鏡だとも言えます。自分自身の関心事についてのアンケートをとっても、科学を一番に挙げず、それがどれだけ影響を及ぼしているかを省みず、景気や経済的繁栄に興味があると答える人が少なくありません。 従来の教育は、「詰め込み」と冷笑された通り、量的な学力を重視してきました。けれども、ソフト・パワー時代では、質的学力が求められます。 二〇〇四年末、OECDの国際的な学習到達度調査(Programme for International
Student Assessment: PISA)で最高の成績を挙げたのはフィンランドです。それは、学力向上として提案されている日本の政策とは全く異なっています。 また、佐藤学東京大学教授は、『教育の方法』において、PISA調査とフィンランドの学習方法について次のように述べています。 PISA調査によってフィンランドの優秀性に世界の教育関係者の関心が集中しています。フィンランドは、平均点でトップであっただけでなく、優秀な学力の生徒の比率がもっとも高く、学力格差と学校間格差と地域格差の少ないことにおいてもトップでした。 一般に「平等」を追及すると教育の「質」は低下し、教育の「質」を追及すると「平等」は壊されると考えられてきました。しかし、PISA調査の結果は「平等」と「質」が対立しないことを示しています。事実、第1位から第8位までは、すべて15歳までの差別や選別を行っていない国々です。 PISA調査において、フィンランドだけでなく、カナダやオーストラリアなど上位の国では、複式教室が採用されています。複式教室では同じ内容を2年に亘って二度学習することになります。日本の学校現場では、二度同じことを学ぶのは非効率だとして使われていません。 また、フィンランドでは、プロジェクト学習を積極的に行っています。例えば、中学校一年生の世界地理の授業で、「中南米の国々は貧困に苦しみ、経済が不安定なのか」というテーマを与えたとします。生徒数人でグループを組織し、中南米のどれか一つの国を選び、自然環境・歴史・産業を調べます。 研究所にしろ、起業にしろ、官公庁にしろ、実社会では、プロジェクトで活動を行います。こうしたフィンランドの教育方法は極めて実践的です。 フィンランドのケースを見ると、教育基本法改定を含め、日本の教育論議がいかに見当違いであるかはっきりするでしょう。 多くのジレンマに囲まれ、顔の見えないコミュニケーションを含むネット社会では従来の道徳をそのまま適応できません。時代に即応できない道徳教育に代わって、モラル・ジレンマ方式をより活用し、相互の関連性を理解するミニマ・モラリアの教育が必要です。 また、大学進学率がより上がると同時に、目まぐるしいスピードで情報・知識・技術が更新されていきますから、生涯教育並びに大学院教育の拡充が必須です。学校社会から学習社会へと移行しつつあるのです。 近代教育は文字を媒介にし、学校が教育を独占していました。しかし、情報革命による電子メディアの発達は活字メディア中心の教育を根本から覆しつつあります。それが学習社会です。でも、江戸時代も学習社会だったのです。
教育はよりよい社会への投資と考え、教育費の個人負担は大幅に軽減するべきです。能力がありながらも、経済的な理由で、勉強を諦めなければならないとしたら、大変な人材の喪失です。少子化の一因に高すぎる教育費の問題があるのは自明ですけれども、それは未だ見ぬ可能性の誕生を社会が阻害していることでもあるのです。 |