やらせ質問と熟議民主主義 佐藤清文 Seibun Satow 2006年11月7日 無断転載禁 本連載の著作者人格権及び著作権(財産権)は すべて執筆者である佐藤清文氏にあります。 |
ジョセフ・ジューベール 9月に政府が開いた教育基本法改正に関するタウンミーティングにおいて、改正賛成の質問をするよう参加者に依頼していた疑惑に対し、内閣府は、11月7日、いわゆるやらせ質問への関与を認め、衆議院教育基本法特別委員会の理事会で陳謝しました。 タウンミーティングは、本体、間接民主主義を補完する直接民主主義の制度です。ところが、政府は人々との議論の場を儀式化させてしまったのです。 アメリカで、従来の「投票民主主義(Election
Democracy)」に加えて、「熟議民主主義(Deliberation
Democracy)」を導入すべきだという動きがあります。十分な情報を有権者が知らされないまま、思い込みや思いつき、思考停止の状態で投票してしまっていることが多いものです。 イェール大学のブルース・アッカーマン教授のように、思い切って、「熟議の日(‘Deliberation Day)」の制定を主張する人もいますが、現実的なプロジェクトとして「デリバレイティブ・ポール(Deliberative Polling)」が行われています。 しかし、官僚や政治家が圧力をかける現状では、「熟議の日」を日本で開いたら、それは「儀式の日(Celebration Day)」となってしまうことでしょう。 議論において重要なのはその過程です。結果ではありません。議論を通じて人々の認識が深まっていくものです。政治がそれを妨げているのは、結局、人々を小バカにしているからにほかならないのです。 〈了〉 |