現地調査の概要報告 San Diego Fires

サンディエゴ


山林火災-現地報告B

〜サンディエゴの概要〜


青山貞一 武蔵工業大学環境情報学部
 
2007.12.5 転載禁

<青山貞一:サンディエゴ山林火災の現地報告 アーカイブ>
@:山林火災の爪痕
A:サンオノフレ原発との関係
B:サンディエゴの概要
C:火災の時間的経過


 2007年10月20日〜10月27日、米国カリフォルニア州サンディエゴ郡(San Diego)で起きた前代未聞の山林火災による被害の実態を一ヶ月後の11月22日〜11月26日に行った現地調査をもとに報告する。

 最初にサンディエゴの概要について示す。

 サンディエゴ市を含むサンディエゴ郡は、以下の表1にあるように、300万人以上の人口を擁している。とはいえ、サンディエゴ郡の東部は砂漠地域であり、人口の大部分はサンディエゴ市に居住している。サンディエゴ市の人口は約130万人である。

 その意味で、今回の山林火災で最終的な避難対象人口が90万人を超えたことは、いかに山林火災が大規模であったかを物語るものである。

■サンディエゴ郡の歴史

 サンディエゴ郡は1769年にw:Mission San Diego de Alcalaの創設で始まっている。

サンディエゴ郡の概況

 サンディエゴ郡 (San Diego County) はメキシコ境界沿いで、アメリカ合衆国カリフォルニア州内の太平洋岸に位置する郡である。ここは州内の人口で3番目に最大な郡である。2000年の人口は2,813,833人、2006年の人口は3,066,820人であり、州内で最も速い成長地域の1つである。郡の庁所在地はサンディエゴ市にある。なお、サンディエゴ郡最大の都市はサンディエゴ市である。

       
       カリフォルニア州におけるサンディエゴ郡の位置

■サンディエゴ郡の人口推移

 2006年現在の人口は3,066,820人が暮らしている。人口密度は259/km2 (670/mi2) である。この郡の人種的な構成は白人66.52%、アフリカン・アメリカン5.74%、先住民0.86%、アジア8.88%、太平洋諸島系0.48%、その他の人種12.82%、及び混血4.69%である。ここの人口の26.69%はヒスパニックまたはラテン系である。

 人口推移は、2000年に2,813,833人であったが2006年に3,066,820人と6年間に約9%も増加している。その主な理由は、南部の国境下のメキシコからの人口流入である。

     表1 サンディエゴ郡の人口・面積・人口密度

順位 人口
within
county limits
面積
sq. miles
人口
密度
per sq mi
最大都市
1 ロサンゼルス郡 10,245,572 4,061 2,344 ロサンゼルス
2 オレンジ郡 3,072,336 789 3,606 サンタアナ
3 サンディエゴ郡 3,066,820 4,200 670 サンディエゴ
4 サンバーナーディーノ郡 1,991,829 20,052 85 サンバーナーディーノ
5 リバーサイド郡 1,953,330 7,207 214 リバーサイド
6 サンタクララ郡 1,773,258 1,291 1,304 サンノゼ
7 アラメダ郡 1,510,303 738 732 オークランド
8 サクラメント郡 1,385,607 966 1,267 サクラメント
9 コントラコスタ郡 1,029,377 720 492 コンコード
10 フレズノ郡 899,514 5,963 134 フレズノ

      注釈:表は人口に2006年度カリフォルニア州概算及び地域並びに密度に2000年国勢調査を使用

サンディエゴ郡の人口構成

 以下のデータは、2000年度の国勢調査による。

 郡内の住民は25.70%が18歳未満の未成年、18歳以上24歳以下が11.30%、25歳以上44歳以下が32.00%、45歳以上64歳以下が19.80%、及び65歳以上が11.20%にわたっている。中央値年齢は33歳である。女性100人ごとに対して男性は101.20人である。18歳以上の女性100人ごとに対して男性は99.70人である。

サンディエゴ市の人口

 サンディエゴ郡最大の自治体は、サンディエゴ市である。サンディエゴ市には2006年時点で1,305,736人が居住しており、カリフォルニア州ではロサンゼルス市に次いで第二番目の人口規模となっている。一方、人口密度は、カリフォルニア州主要都市で最も低い。

      表2 サンディエゴ市の人口・面積・人口密度

順位 都市 人口
within
city limits
面積
sq. miles
人口
密度
per sq mi
1 ロサンゼルス 3,976,071 469.1 7,876.8 ロサンゼルス郡
2 サンディエゴ 1,305,736 324.3 3,771.9 サンディエゴ郡
3 サンノゼ 945,000 174.9 5,117.9 サンタクララ郡
4 サンフランシスコ 799,263 46.7 16,634.4 サンフランシスコ郡
5 ロングビーチ 491,564 50.5 9,149.8 ロサンゼルス郡
6 フレズノ 464,727 104.4 4,097.7 フレズノ郡
7 サクラメント 452,959 97.2 4,189.2 サクラメント郡
8 オークランド 412,318 56.1 7,126.6 アラメダ郡
9 サンタアナ 351,697 27.1 12,451.9 オレンジ郡
10 アナハイム 345,317 48.9 6,702.0 オレンジ郡
      注釈:表は人口に2006年度カリフォルニア州概算及び地域並びに密度に2000年国勢調査を使用


サンディエゴ市の臨海部の超高層コンドミニアム群  撮影:青山貞一 CoolPix S10

■サンディエゴ郡の所得状況

 以下のデータも2000年度の国勢調査による。

 サンディエゴ郡の世帯ごとの平均的な収入は47,067米ドルであり、家族ごとの平均的な収入は53,438米ドルである。男性は36,952米ドルに対して女性は30,356米ドルの平均的な収入がある。この郡の一人当たりの収入 (per capita income) は22,926米ドルである。人口の12.40%及び家族の8.90%は貧困線以下である。全人口のうち18歳未満の16.50%及び65歳以上の6.80%は貧困線以下の生活を送っている。

サンディエゴ郡の地理

  アメリカ合衆国統計局によると、サンディエゴ郡は総面積11,721 km2 (4,526 mi2) である。このうち10,878 km2 (4,200 mi2) が陸地で843 km2 (326 mi2) が水地域である。総面積の7.20%は水地域となっている。  


サンディエゴはメキシコとの国境の町である。

カリフォルニア州内の平均所得の高い場所ランキング

 以下の表3は、1人あたりの平均収入によるカリフォルニア州内の場所のランキングである。

 リストを見ると、2位のランチョサンタフェ(年収平均1240万円)、10位のFairbanks Ranch(年収平均1034万円)の2地域がサンディエゴ郡に位置しているが、今回の山林火災の最大被害地は、これらカリフォルニア州だけでなく全米を大表する高額所得層が集まるサンディエゴの<ランチョ(Rancho)>と名が付く地域であった。

 ちなみに、以下のランキングにあるカリフォルニア州第1位のBelvedere(マリン郡)は全米でも平均所得第一位となっている。

 今回の山林火災との関連で言うと、ロサンゼルス郡のマリブ地域も大きな被害を受けているが、そのマリブも17位に位置している。同地はハリウッドスターが多く居住する地域として知られている。

 とはいえ、そのマリブ地域と比べはるかに平均所得が多いランチョ地域が今回、山林火災で圧倒的な住宅全焼被害を受けていた。

表3  カリフォルニア州内の25の豊かな場所ランキング   

  1. w:Belvedere, California - マリン郡 - $113,595
  2. ランチョサンタフェ (カリフォルニア州) - サンディエゴ郡 - $113,132
  3. w:Atherton, California - サンマテオ郡 - $112,408
  4. ローリングヒルズ (カリフォルニア州) - ロサンゼルス郡 - $111,031
  5. ウッドサイド (カリフォルニア州) - サンマテオ郡 - $104,667
  6. w:Portola Valley, California - サンマテオ郡 - $99,621
  7. ニューポートコースト (カリフォルニア州) - オレンジ郡 - $98,770
  8. w:Hillsborough, California - サンマテオ郡 - $98,643
  9. w:Diablo, California - コントラコスタ郡 - $95,419
  10. w:Fairbanks Ranch, California - サンディエゴ郡 - $94,150
  11. ヒドゥンヒルズ (カリフォルニア州) - ロサンゼルス郡 - $94,096
  12. ロスアルトスヒルズ (カリフォルニア州) - サンタクララ郡 - $92,840
  13. w:Tiburon, California - マリン郡 - $85,966
  14. サウサリート - マリン郡 - $81,040
  15. w:Monte Sereno, California - サンタクララ郡 - $76,577
  16. w:Indian Wells, California - リバーサイド郡 $76,187
  17. マリブ (カリフォルニア州) - ロサンゼルス郡 - $74,336
  18. デルモンテフォレスト (カリフォルニア州) - モントレー郡 - $70,609
  19. ピードモント (カリフォルニア州) - アラメダ郡 - $70,539
  20. w:Montecito, California - サンタバーバラ郡 - $70,077
  21. w:Palos Verdes Estates, California - ロサンゼルス郡 - $69,040
  22. w:Emerald Lake Hills, California - サンマテオ郡 - $68,966
  23. w:Loyola, California - サンタクララ郡 - $68,730
  24. w:Blackhawk-Camino Tassajara, California - コントラコスタ郡 - $66,972
  25. ロスアルトス (カリフォルニア州) - サンタクララ郡 - $66,776
  ※上記は2000年の調査

サンディエゴ市のランチョ地区(住宅地)
撮影:青山貞一 CoolPix S10
サンディエゴ市のランチョ地区(高台)で
地元で「マンション」と呼ばれている地域

撮影:青山貞一 CoolPix S10

サンディエゴ市のランチョベルナードの住宅地  撮影:青山貞一 CoolPix S10


サンディエゴ市のランチョベルナードの住宅地にて。筆者 撮影:青山貞一 CoolPix S10

 以下は全米の郡レベルの平均所得ランキングである。マリン郡はカリフォルニア州第1位だけでなく、全米でも第1位であることがわかる。一方、最高高額所得地となっているランチョ地域を含むサンディエゴはカリフォルニア州内で第18位、全米では第253位である。これは、サンディエゴ郡全体では所得の格差が大きいことを意味している。

 実際、サンディゴ郡では、米国最高クラスの高額所得者による高級住宅地であるランチョ地域がある一方、メキシコから流入した最低所得層の住民が郡南部に多く居住している。

表4  郡単位のカリフォルニア州及び全米の平均所得ランキング
Rank National
Rank
County Per Capita
Income
Median House-
hold Income
1 1 Marin County $44,962 $71,306
2 14 San Mateo County $36,045 $70,819
3 19 San Francisco County $34,556 $55,221
4 25 Santa Clara County $32,795 $74,335
5 45 Contra Costa County $30,615 $63,675
6 49 Ventura County $29,634 $75,157
7 77 Placer County $27,963 $57,535
8 96 Alameda County $26,860 $55,946
9 106 Santa Cruz County $26,396 $53,998
10 107 Napa County $26,395 $51,738
11 119 Orange County $25,826 $58,820
12 121 Sonoma County $25,724 $53,076
13 123 El Dorado County $25,560 $51,484
14 171 Alpine County $24,431 $41,875
15 188 Nevada County $24,007 $45,864
16 217 Mono County $23,422 $44,992
17 241 Santa Barbara County $23,059 $46,677
18 253 San Diego County $22,926 $47,067

つづく