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【カナダの廃棄物政策に学ぶ】
全国縦断講演会から


函館会場実行委委員長
鎌鹿 隆美

北海道新聞
2006年11月1日(水曜日)朝刊

掲載月日:2006年11月4日



 去る十月八日、カナダ東岸ノバ・スコシア州から二人の講師を迎え、ごみ問題を考える講演会を函館市中央図書館で開いた。行政、企業、住民が一体となった極めて先進的な取り組みが報告され、学ぶべき点が多かった。

 同州は人口九十四万人、州都ハリファクス地域(四自治体が広域行政府を形成)は人口三十五万人。美しい景観に恵まれ、観光と漁業が主産業など函館と共通点が多く、四自治体の一つハリファクス市は函館市の姉妹都市である。

 この美しい港町をはじめ、同州全域は、一九七〇年代から、ごみ問題に悩まされた。野焼きが横行し、ごみ処理場は悪臭や地下水汚染など環境問題の巣くつだった。

 危機に直面した行政や住民は九〇年代、新しい解決のアプローチを探った。

 端的に言えば、「脱・焼却、脱・埋め立て」。ごみの減量と、資源化を徹底的に進めて、ダイオキシンの発生源となる焼却場をなくし、埋め立て処分量も随時減らそうというのである。

 その結果を先に述べよう。同州で資源化されずに処分されたごみの量(産業廃棄物を含む)は九〇年度、住民一人当たり七百八十キロあったが、二〇〇〇年度は三百八十キロと半減した。九十五年に州政府が掲げた「二〇〇〇年までにごみ半減」という目標は見事に達成されたのである。

 今回、講師に迎えた同州政府職員のボブ・ケニー氏、元同市職員のレイ・ハルセイ氏の話によると、ポイントは@生ごみの堆肥化A政策決定のプロセスへの住民参加B官民連携による政策推進−−の三点である。

 一点目。生ごみをごみとして処理していては、ごみ処理総量は減らない。同州では家庭で生ごみを堆肥化するコンポストの利用を第一に置き、そこで処理し切れない量を回収、堆肥化している。

 二点目。同市では、住民や企業が参加する利害関係者委員会を設けて、ごみ対策の総合戦略を徹底的に議論した。住民ならだれでも参加可能なこの委員会の方針を受けて、十年間も宙に浮いていた新処理場の建設場所は、八ヵ月間で決まったという。

 そして三点目。同州では、市民や企業が加わる第三者機関の委員会がごみ対策の推進役を担った。「役所任せ」にしないことで「ごみ減量を進めよう」という意識が広く浸透し、しかも処理方法の多様化で雇用も増えたのである。

 さて、函館を見ると、道内最大規模の産廃不法投棄事件が起き、市の最終処分場の管理がずさんだとして住民が訴訟を起こした。最終処分場はまもなく満杯になる。処理費用の膨張、環境汚染のリスクという二つの側面から、抜本的対策が迫られている。

 ノバ・スコシア州とハリファクスの事例に照らし、求められるのは、ごみ減量の数値目標の明示を含む総合的戦略の立案、そして市民の力を引き出すことだ。

 市民、企業がごみ問題を「わが事」ととらえる意識を広く浸透させなくては、解決の道筋は見えないと強く感じるのである。

                ◇

 全国縦断講演会は十月七−十三日、「たたかう住民とともにゴミ問題の解決をめざす弁護士連絡会」と現地実行委が全国六カ所で開き、約千七百人が参加した。