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長過ぎる権力は必ず腐敗する
〜都知事はどうなのか〜

日刊ゲンダイ

掲載:2006年11月27日


─ Dailymail Businessより ───────────
■ 長過ぎる権力は必ず腐敗する
■ 続々逮捕の各県知事
■ 一体、潔白・身ぎれいな知事は全国に何人いるのだろうか
■ 問題の石原東京都知事はどうなのか
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都政私物化や差別発言でまるで王様気分の老人が、実現が疑問視されている五輪招致にまた巨額な税金投入を都民は諦観、ゼネコンは大歓迎の奇怪
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 「権腐10年」――権力の座に10年居続ければ必ず腐る、ということだが、このところ全国各地で起きている「知事の犯罪」は、まさしく多選による弊害である。 福島、和歌山、宮崎の談合利権、岐阜や長崎の裏金着服などだが、これは氷山の一角。当選回数を重ねる全国の知事の周辺には談合や利権のウワサが渦巻いている。

 「不正があっても予算を知事に握られている県警はなかなか動かない。マスコミが徹底追及するか、検察が動かない限り発覚しないが、検察は人数が少ないし、地元紙は県政と癒着しているから不正が表に出るケースは少ないのです」(事情通) それでも次々と逮捕される各県知事。身ぎれいな知事を探す方が難しいというのが実情だ。

▼ 石原だって立派な「疑惑知事」だ ▼

 「知事の疑惑」という点では石原慎太郎・東京都知事(74)も例外ではない。このところ一挙に噴き出してきた疑惑の数々は、どう見ても不正である。

(1)15回の海外視察にかけた費用は2億4355万円。飛行機はファーストクラス、超豪華ホテルに夫人同伴で宿泊。しかもいずれも目的がハッキリしない。01年に1400万円をかけたガラパゴス諸島視察では、1泊52万円の大型クルーザーを使っていたが、石原は「都議選の応援が面倒くさいからガラパゴスに行った」(新聞インタビュー)と言っている。

(2)石原の四男で画家の延啓(40)は、03年3月、都のアドバイザリー委員の肩書で「能オペラの日本公演の調査」のためにドイツ・フランスに海外出張。9日間で55万円の経費は東京都持ちだったが、能オペラの企画はボツ。委員も出張後に退任している。

(3)石原のトップダウンで決まった美術ギャラリー「ワンダーサイト」(都内3カ所)は、延啓が原画を描いたステンドグラスを300万円で買い上げていた。

 こうしたデタラメ出費には、都民から都庁に450件の批判が寄せられている。石原は公私混同にどう答えるのか。22日の会見ではキレ気味にこう反論した。

 「延啓を使うのに情実が絡んでいるというが、その前に彼には芸術家としての人格がある。余人をもって代えがたいのならどんどん使うのは当たり前だろう」「ワンダーサイトにステンドグラスを入れようと、何人かに原画を描いてもらって、結果的に延啓の描いたものになっただけだ」

 李下に冠を正さず、なんて奥ゆかしいことはハナっから考えていないらしい。

▼ まるで大東京帝国の王様気分 ▼

 石原ほど唯我独尊の政治家も珍しい。他人には平気で罵詈雑言を浴びせ、自分ほど偉い人間は世の中にいないとうぬぼれているのだ。それは、これまでの問題発言の数々にハッキリと表れている。

 都知事に就任した直後の99年、石原は重度の障害者を療育している東京・府中市の施設を訪れ、「ああいう人ってのは人格あるのかね」と吐き捨てた。

 「文明がもたらした最も悪しき有害な者はババア」と女性も蔑む。そのほか、「『三国人』の騒擾事件すら想定される」とか「フランス語は数を勘定できない言葉だから国際語として失格している」など。田中均外務審議官(当時)宅に爆発物が仕掛けられた事件では「あったり前の話だ」と言っていた。

 「意図的な話題づくりとしても、弱者や他者に対するおもりやりや配慮はゼロ。傍若無人でバランス感覚に欠けています(政治評論家・山口朝雄氏)」

 これが国際都市を標榜する東京のトップなのだから、開いた口がふさがらない。

◆東京五輪承知という大風呂敷

 この尊大な都知事が3選の目玉にしているのが2016年五輪招致だ。国内候補地を争った福岡市を「思いこみで書いた設計図は絵に描いた餅」と批判し、福岡の応援演説をしたかん尚中・東大教授を「怪しげな外国人」「生意気だ。あいつは」と罵倒した。

 五輪に入れ込んでいるのは、「日本をなめたらあかんぜよ、と(世界に)」悟らせる」ためと言う。要は国威発揚。そして北京五輪は「ヒットラーのやったベルリン・オリンピックに似ている」と猛反対だから、身勝手なもんだ。

 「東京の五輪招致に喜んでいるのは土建屋くらいです。今月22日には五輪招致委員会が発足したが、その前日には石原の呼びかけて都市景観の懇話会が開かれています。出席したのは大成、鹿島、清水、大林など大手ゼネコンやディベロッパーの社長たち、そこで石原は五輪招致に触れながら『しっかりとした街につくりかえたい』とぶっている。東京都の計画では、五輪の施設整備費はざっと5000億円。公共工事が削減されている中で、五輪ほどおいしい話はありません」(建設業界関係者)

 もっとも冷静に考えれば、東京の五輪招致は現実味ゼロ。北京で開かれた8年後にまたアジアの可能性はない。大半の都民も「ごろんなんて無理」と思っているが、こんな大風呂敷が土建業界ではまかり通っているだ。

◆唯我独尊知事を再選させる都民の民度

 それでも石原の人気は高く、来年の知事選でも再選される可能性が高い。石原がウケているのは、威勢のいい伝法な物言いや、指導力がありそうなパフォーマンスだが、知事としての”成果”はおどろくほど少ない。

 鳴り物入りだった「外形標準課税の導入」も、裁判で負けてポシャたし、中小企業向けの融資を行う触れ込みだった「新銀行東京」もこのところぱっとしない。

 最近の石原は五輪招致以外の関心は薄く、都庁に来るのは週に2〜3回。ところが石原ファミリーのこととなると熱心になる。

 「昨年春、石原の分身だった浜渦武生副知事が都議会自民党とガチンコになった際、長男の伸晃が『浜渦切り』を進言しました。『自民党を敵に回せば東京3区から出馬する三男・宏高が落選してしまう』と直談判したのです。そこで浜渦を更迭。以来、石原は自民党とも仲良くして宏高の選挙には頻繁に足を運ぶ親ばかぶりでした。今は、4人の子供のなかで一番パッとしない延啓の支援に必死。今回の公私混同もそんなファミリー第一主義が起こした不正なのです」(都政関係者)

 ただの親ばかならどこにでもいるが、石原は1264万都民の命と6兆5000億円の予算を預かる知事である。「日本のケネディ家」だか何だか知らないが、身内への情実や便宜を図るようでは公平な政治家とは言えない。政治評論家の本澤二郎氏が言う。

 「このところ発覚した石原疑惑は『自分と家族は別格』という体質で、独善的な政治家に見られるもの。他人にはデリカシーのない批判を浴びせるのに、身内を批判されるとヒステリックに反応する。時代が混沌となるほど大衆は石原のような非民主主義的で独善的な政治家を求めますが、これは危険なことです」

 唯我独尊、大風風呂敷。公私混同で大事なのは身内だけーーーー。そんな知事をありがたがっているようでは、東京都民の民度が疑われる。