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「激白」手記

「借金は地域の宝」と
公言する新しい
「県政改革」を危惧する


田中康夫

掲載日2006年8月11日



 投票所に足を運んだ長野県民の過半は、田中康夫とは異なる指揮者の下での“県政改革”を選択しました。

日本列島の背骨に位置し、数多の水源を擁する信州・長野県に、それは如何なる未来を齎すのでしょうか?

 小泉純一郎内閣が社会福祉を低下し、地方交付税を激減した5年間、信州・長野県は逆に社会福祉を充実させ、環境保全を促進してきました。

「未来の子供達へ借金の山を残さない信州・長野県」を目指して59ヶ月、破綻寸前の財政を再建すると共に、21世紀型労働集約的産業の福祉・医療、教育、環境の分野に傾注投資しました。

と同時に、「地域で出来る事は、地域の企業や人々と共に」を合い言葉に、地元密着型公共事業へと転換を図り、先週発表の有効求人倍率は1.20と、冬季五輪開催年の0.88を大きく上回る雇用を確保しています。

 “輝く81市町村”なるワンフレーズ以外に具体的なヴィジョンを、選挙戦を通じて相手方は殆ど語りませんでした。

が、その陣営に参画した顔触れと、「借金は地域の宝」と演説会で幾度も公言した点から忖度するに早晩、中止していたダム建設は再開され、個々人を重視する福祉や教育よりも、組織に立脚した人々の都合で、新しい「県政改革」が展開されていく、と思われます。

 とまれ、長野県民の過半は、田中康夫とは異なる指揮者の下での“県政改革”を選択したのです。福祉も教育も、更には公共事業も、同じ演目でも指揮者が代われば、オーケストラが奏でる音色も一変します。

 人に仕えられるよりも、人に仕える人生を。自身に課してきた矜持です。阪神・淡路大震災でのヴォランティア活動が評価され、6年前に請われて長野県知事へ就任した田中康夫は、今月31日迄、県民に奉仕する存在です。これからも、大きな組織とは無縁な個々人の為に奉仕する場が、人生の中で与えられるのであろう、と感じています。

「構造改革」なる御旗の下に、僅か5年で財政赤字は250兆円も拡大し、1時間に66億円もの速度で借金が増加しているニッポン。“砂上の楼閣”にも似た物質的豊かさの上に存在しているのです。

 森林整備同様に、きちんと大地に根を張った優しく・確かな未来のニッポンを形作るべく現場主義・直接対話で邁進した59ヶ月、お金や力の締め付けとは対極に位置する、志が反映される社会を願う、自主自律の精神に基づく一人ひとりの存在が、田中康夫の活力でした。

「ぐぐっと身近になった県政! あの頃に戻ったら“もったいない”」。田中康夫を応援してくれた「しなやかな信州をはぐくむ県民の会」が作成したチラシの惹句です。

 その思いを共有し、投票所に足を運んで下さった534229人の方々に、感謝申し上げます。