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平成18年2月県議会定例会における
田中康夫知事議案説明要旨

〜環境政策関連説明主旨〜

田中康夫

掲載日2006.2.23


 
以下は、平成18年2月県議会定例会における田中康夫知事議案説明要旨のうち、とくに環境政策に係わる部分です。

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 次に、川上から川下に亘(わた)るまで、持続可能な社会システムの基盤を創(つく)り、確かな信州を支える『環』です。

 地球温暖化防止のための世界的な枠組みを定めた京都議定書が発効となった平成17年2月16日、奇(く)しくも昨年2月定例会の初日、この議場において、数多(あまた)の水源を有する美しき我らが信州・長野県に課せられた使命=ミッションの一環として、全国の都道府県に先駆け、地球温暖化対策を具体的に進めるための条例の制定を目指すことをお誓い申し上げました。

 その後、平成17年5月9日には、長野県環境審議会に信州大学の高木直樹助教授を委員長とする9名のメンバーからなる「地球温暖化対策検討会」を設置し、10回を数える検討会や、県下14会場における県民への説明会、17団体との意見交換会など、大変な熱意と使命感を持って条例に盛り込む内容を検討していただきました。

 そして、平成18年1月13日、環境審議会の北條舒正(のぶまさ)会長から答申をいただき、今定例会に「長野県地球温暖化対策条例」案として提案 に至りました。地球温暖化対策に関する都道府県の単独条例では、昨年9月定例会で可決し大阪府、12月定例会で可決した京都府に次いで、全国で3番目となります。

 この条例には、「24時間営業者との営業時間等に関する協定の締結」や「事業者に対する従業員のマイカー通勤削減の努力義務」など、本県独自の項目が盛り込まれています。

 これはまさに、平成14年5月に市民、学識経験者、経済界、行政等、様々な主体からなる「信州・地球温暖化対策研究会」から頂戴(ちょうだい)した「地球温暖化対策『長野モデル』第一次提言」の中に込められた人々の想(おも)いが結実したものといえます。

 一方で京都議定書の発効を受け、他の都道府県でも、既存の環境関連条例に地球温暖化対策を組み込み始めています。本県の地球温暖化対策が全国に後(おく)れを取らぬためにも、また、地球温暖化防止を未来の子どもたちへの贈り物とするためにも、本定例会での可決を心から願います。

 併せて、この条例を県民、事業者、行政などすべての主体の参加と協働により推進するためにも、条例の制定趣旨、内容等をより多くの県民の皆様にご理解いただくよう周知定着を促進し、県のすべての機関において環境管理システム「エコアクション21」を導入し、県自らが率先して地球温暖化対策に取り組んでまいります。軽井沢、上高地等に引き続き、県警察本部と連携し、コモンズによる景観形成の先進地、小布施町のすべての交通信号機を、見やすく、消費電力を大幅に削減できる発光ダイオード式に交換いたします。

 続いて、廃棄物対策について申し上げます。

 豊かな自然に恵まれた信州・長野県は、これまでの大量生産、大量消費、大量廃棄の経済社会から脱却し、環境と経済の両面から、廃棄物による環境への負荷の軽減を目指しております。そのためには、廃棄物の発生を抑制するとともに資源化を推進し、「できるだけ燃やさない」、「できるだけ埋め立てない」方向へ政策を転換すること、また、現行の法令などでは解決できない廃棄物に係る課題に対応するため、県民の皆様との協働による施策を展開することが不可欠です。

 上智大学の北村喜宣(よしのぶ)教授、丹沢やまなみ法律事務所の梶山正三弁護士、武蔵工業大学の青山貞一教授の3名をアドバイザーとして迎え、2年半に亘(わた)り新たな条例の検討を行い、本定例会で「廃棄物の発生抑制等による良好な環境の確保に関する条例」として提案する運びとなりました。

 条例中、廃棄物処理施設の設置計画の早い段階から、排ガスや排水による環境影響のみならず、立地上の問題や自然災害に対する安全性、周辺住民に対する説明責任をも検討する、「廃棄物処理施設計画協議」制度に関し、市町村が設置する一般廃棄物処理施設も対象とするのは「市町村の権限を侵害する恐れがないか」と述べる向きもおられます。

 けれども、産業廃棄物処理施設と一般廃棄物処理施設は、どちらもごみを処理する施設に変わりはなく、まさしく、これから生を受ける未来の信州の担い手のためにも、環境影響等に対する配慮は同等になされることが望ましいのです。行政の垣根を越えて、そこに暮らす人々の目線で、廃棄物処理施設の建設コスト及びその後の維持管理費が将来に亘って市町村の財政を圧迫しないためにも、県と市町村が水平補完、水平協力の形で、より良い施設建設計画を推進することは、これからの廃棄物行政が地域住民から信頼される上でも極めて肝要です。真に持続可能な社会を本県が目指す上で、喫緊の課題となっている廃棄物行政を大きく前進させるべく、議員諸姉諸兄の歴史に恥じぬ聡明なるご判断を伏してお願い申し上げます。

 私は以前より、21世紀を牽引する環境行政とIT行政が共に、その美名の下に、旧来と変わらぬ公共事業的利権を生み出すやも知れぬ新たなハコモノ行政として跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)したのでは、安全、安心、安定のアンサンブルに背くばかりか、国家的財政破綻(はたん)の奈落の底に陥るのみ、と繰り返し指摘してきました。

 「実は住基台帳ネットワークシステムというのは、壮大なむだの仕掛けですよね。住基台帳ネットワークシステムというのは目に見えませんけど、もし可視的な装置であったとしたらペンペン草が生えていますよ。なるほどなと思ったのは、南部町内で調べてみたら、1件当たりの利用が200万円以上になっているというんでしょう、単価で割り戻したら。そういうのは財政破綻(はたん)とか、むだなものを強いていることになっているんじゃないですかと(町長が)言っていましたよね。そのとおりなんです。壮大なむだですよ」。

 旧自治省出身の改革派として耳目を集める鳥取県の片山善博知事が、2月15日の知事会見で発言した科白です。時代遅れな重厚長大産業の代表格として捉えられていた製鉄や造船のメーカーが息を吹き返した理由の一つとして、溶融炉建設への参入を挙げられましょう。ゴミ1トン当たりの焼却炉建設費は、アメリカやイギリス、シンガポール、韓国等の国々では約1200万円から2000万円の範囲であるのに対して、日本のみが5000万円を上回る金額なのです。監督官庁の環境省ですら遅蒔(ま)きながらとは言え、廃棄物処理施設建設費の高止まりに関する研究会を設置する程なのです。

 岳北広域行政組合が計画している新しいごみ焼却施設は、人口の減少が本格的に進行する中、同地域における人口が今後もほぼ横ばいで推移するとした推計に基づき施設規模を設定していること。

 また、前述のように環境省においても検討が開始された現在、建設時及び今後の維持管理に係る財政負担等について、既存施設の活用も視野に入れ、十分な検討と住民への説明が必要ではないか等々、計画についての県としての懸念を申し上げたところです。

 実は南信州広域連合においては、平成14年12月から他地域に先駆け、ゴミ処理施設として、ガス化溶融炉の稼働を開始しています。が、高温での稼働を維持するため、灯油などの助燃剤が大量に必要であること、高度な運転管理技術を要するため特定の業者に高額な運転管理委託費を支払わざるを得ないことなど、市町村にとって想定外の重い負担が圧し掛かっています。

 また、焼却炉の24時間連続運転を維持するため、大量のゴミを投入しなくてはならず、減量化へのインセンティヴが働いていない地域も本県内に留(とど)まらず、全国に数多いと聞き及んでおります。

 なお、阿智村に計画していた廃棄物処理施設については、最終処分量の激減により、最終処分場の逼迫が緩和されたこと、事業を実施した場合の県の財政負担額が当初見込みの29億円を遥かに上回るものとなることから、将来に亘(わた)っての重い財政負担を回避するため、県として様々な試算を行う中で、Uターンする勇気を持って、計画の中止を決断したものです。

 また、飯山市の有限会社飯山堆肥センターは、登録済の汚泥発酵肥料と称して、異物が混入した粗悪な肥料を製造し、センターの役員や関連会社に対してその肥料を無償譲渡する形態を取って、農作物が作付けされていない農地に、大量の肥料を投入し続け、著しい土壌汚染を招くとともに、まさに「マネーロンダリング」ならぬ「汚泥ロンダリング」により、不当な利益を生み出していたと推察されます。

 巨額の税金が投入されながら、まともに汗をかくことなく、浮利を得ようとするものを許すことはできません。今後も不退転の覚悟を持って、この問題の根本的な解決に向けて取り組んでまいります。

 また、廃棄物の不適正処理・不法投棄を防止するべく、県警察本部のご協力もいただき、全国トップクラスの監視・指導体制を敷いている本県は、今回の条例の精神に則(のっと)り、来年度は不法投棄監視連絡員を増員し、また、大量に廃棄物が放置された箇所については、住民の皆様の不安を解消するため、廃棄物の排出元等の徹底調査を行い、原因者、関係者等に対する撤去指導を推進するとともに、周辺環境への影響調査や放置廃棄物の保全対策を実施してまいります。

 とまれ、今回の条例は、およそ信州人の民度とは掛け離れた一部の面々によって、東洋のスイスが有害物質の山に包まれる事態を未然に防ごうとするものです。それは、必ずや、基礎自治体を運営する首長や議員に対しても、福音をもたらすに違いありません。聡明なる県議諸姉諸兄におかれましては、是非とも後世に範を示す冷静なる判断を求めます。

 次に、本県の美しく豊かな自然や景観を大切にし、誇りを持ち続けられるよう、景観の維持、育成、地域づくりを進める『美』です。

 社会的共通資本としての地域ごとの景観を守り育(はぐく)むため、有機的に機能する制度的な基盤を確立し、実効ある運用を行うとともに、県民や市町村の自律的な取組を支援してまいります。

 民間の研究機関「ミツカン水の文化センター」の「水にかかわる生活意識調査」によると、「もっともおいしい水が飲めると思う都道府県」は、調査を始めて以来、11年連続で長野県がトップとなっています。まさに名実ともに、本県は数多(あまた)の清らかな水源を有する水源県といえます。

 しかし一方で、その源流域に存在する県内181箇所の山小屋のうち、61箇所については、未(いま)だし尿処理施設が整備されていない状況がございます。

 そこで、「長野県から汚れた水を一滴も流しません!」を合言葉に、日本の最上流部に位置する信州・長野県の山岳地域の水環境を浄化すべく、自身も数々の山へ登り、山を愛する副知事の澤田祐介をキャップとして立ち上げた、「信州の水浄化プロジェクト」により、県下の山岳地域に環境に優しいトイレの導入を積極的に進めてまいります。

 来年度は民間企業と山小屋の皆さんの協力の下、再生可能エネルギーを利用した信州モデルとも言える最先端のし尿処理システムの実証実験を行い、可及的速やかな整備に繋(つな)げてまいります。

 また、信州が誇る山岳環境に憧(あこが)れて訪れる多くの登山者に安全・快適を提供するため、登山者からの協力金を活用し、山小屋関係者がヴォランティアで行っている、管理者が不明確な登山道の日常的維持・補修に必要な資材の購入に対して支援してまいります。

 信州型木製ガードレールを始めとする、県産材を活用した数々の道路用製品が、公共空間において、我が県の進める主要施策、即(すなわ)ち、森林整備の推進、良好な景観の保全・創出、地球温暖化防止の促進等々を複合的に象徴する存在として広く認知されていることを、大変嬉(うれ)しく感じています。

 一昨年、県も支援して開発、認証に至った木製ガードレールの中には、長野県内のみならず県外からも高い評価を受け、多くの自治体へ国内「輸出」された製品もございます。

 ガードレールの設置に関しましては、危険箇所等緊急的に鋼製ガードレールの設置や修繕を必要とする区間について滞りなく実施した上で、さらに各種の道路用木製品の利用を普及促進すべく、「信州の木でつくる信州みちづくり事業」を予算案に計上しております。

 世論調査等においても過半数の方々が促進を望まれている信州型木製ガードレールに関し、議会の皆様の良識ある判断を願うところです。

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