「黄色いバナナ」 日本人の中国観を糺す 田中康夫 掲載日2005.10.26 |
戦後の日本国民は、「黄色いバナナ」です。外見は紛れもなく黄色人種であるにも拘(かかわ)らず、中身は白色人種を気取ってきたのです。更には近時、「脱亜入欧」ならぬ「脱日入米」の如き“非国民”な輩が跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)しています。即(すなわ)ち、親米ならぬ従米一辺倒な何処(どこ)ぞの宰相を例に挙げる迄もなく。 とは言え、ソビエトとアメリカが東西両横綱として君臨していた20世紀の終焉に続いて、世界の警察官ならぬ保安官を任じるアメリカが全てを牛耳る一極社会が出現するかと思いきや、人口や面積に留まらず、隣国・中国の勃興は著しく、米中2大国の様相を呈しつつあるのです。 そんな話は認めたくない、と妙な優越感を抱く「黄色いバナナ」な日本国民は色を成すかも知れません。が、「メディア ソシオ―ポリティクス」と題してインターネット・サイトで連載の第45回で立花隆氏も述懐するが如く、「中国は先端技術の分野でも基礎科学の分野でも、世界のトップ集団の中に居る」のです。 「文化大革命の時代に教育システムと学術研究の分野が徹底的に破壊され」「十分な教育が受けられなかった」世代が「あらゆる分野の指導部から消え、特に科学技術の分野の指導部は一斉に若返り」、「中国の先端科学技術の研究は、殆(ほとん)どあらゆる分野で今、急速に世界のトップグループに追い付きつつある」。 その上で、氏は述べます。「抗日戦争(と、それに対する勝利)は中国という国家の原点(誕生する切っ掛け)」で、「そこが見えてこないと、日本と中国のあるべき関係の原点が判らなくなる」にも拘らず、「若い人は無教育故に、年輩の人は情報の欠落故に」「現代日本人の知識の中で殆ど欠落しているのが、あの日中戦争」「を始めた時、日本人は一体何を考えていたのか」「という最もベーシックな知識である」。「若い人の為に言っておけば、あの時代の日本は、あわよくば中国全土を征服して、中国に天皇制を押し付け、大日本帝国の一部にしようとしていた」。「『元』だって『清』だって異民族支配の帝国だったではないか。 今度は日本が中国を支配して新帝国を築いたって良いではないかと考えていた」。「大東亜戦争が目的とした『大東亜共栄圏を作り、八紘一宇(はっこういちう)の世界とする』というスローガンは」、「更にその上で、ヨーロッパに覇権を確立したドイツ、イタリアと組んで、世界を再分割する・新世界秩序を作るという発想だった」。「冗談と思うかも知れないが、本当なのである」。「この時代の大日本帝国指導者達の誇大妄想的グランドデザインを」「判らないと、日本人の歴史認識の欠如が何時(いつ)までも続く」と。 何時までも「名誉白人」を気取るのではなく日本は、中国やシンガポール、マレーシア、タイ等と共にアジア版EU結成を目指して奮闘すべきなのです。それは結果として中国の突出を防ぎ、中台紛争の勃発を防ぎ、更には米欧亜の3本の弓の叡智(えいち)を生み出す事へと繋(つな)がります。のみならず、トニー・ブレアが内外の反対を押し切ってEU加盟を決断したイギリスが、逆に独仏を始めとする大陸諸国とアメリカの同時通訳的立場を獲得したように日本も又、アメリカと中国の“仲介役”としての使命を帯びるのです。 だけどまぁ、「言語単純・意味空疎」な魔女顔宰相が人気を博する限り、ソフトパワーとしての日本の未来は期待出来ませんなぁ(苦笑)。 |