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定例会におけ
知事議案説明要

信州・長野県知事
田中康夫

 
掲載日2005.9.21



今9月県議会に提出いたしました議案の説明に先立ち、県政をとりまく最近の状況などに関し、しばしご説明申し上げたく存じます。

職員の熱い思いから始まり、国をも動かした本県独自の「ヤミ金融対策」に関し、こうした長野県の取組を勉強したい、との要望を金融庁から受け、去る7月に東京で開催の懇談会で発表しました。「長野県のヤミ金融対策を全国に広げたい」との意見が相次いで出され、出席した太田寛生活環境部長、当時の担当であった田野尻正松本地方事務所長ともども、県民の目線に立った前例に(とら)われぬ行政サーヴィスの重要性に関し、改めて意を強くしたところです。

「安心、安全、正直」な信州の温泉の認定でも、白骨温泉で初の認定が行われたほか、地域全体で認定を受けた青木村の田沢温泉や沓掛(くつかけ)温泉など、3月認定の10施設と合わせて34の施設が認定を受けました。今後も、“信州モデル”の一環として、お客様に積極的に温泉の情報を開示(インフォームド・コンセント)し、ご自身に相応(ふさわ)しい温泉選び(インフォームド・チョイス)をしていただけるよう、お迎えする側のサーヴィス意識の向上も含めて、努力を重ねてまいります。

「信州発・レス50野菜」に関してです。従来、使用していた農薬と化学肥料の分量の半分以下(レス・ザン50)に抑えて生産する、佐久地方や塩尻地区を始めとする意欲(あふ)れる農家の方々と協働し、すでに平成16年度から、レタス、セルリーで取組を推進しています。病害虫の発生状況を毎週、農政部からお届けする等の協力体制を敷き、自律的な農業生産者を支援することで、美味(おい)しくて「安全」、「安心」につながる環境保全農業への理解を深めてまいります。と同時に、こうした取組は、消費者にもご納得いただいた上で、生産者の利益率を高める、まさに量の拡大から質の充実をもたらすものだと考えます。

災害に備えた備蓄物品の配備に関してです。昨年の中越地震や台風23号の際、山間集落に続く道路が断絶し、孤立してしまった教訓を踏まえ、被災時の一時的孤立をコモンズに生きる皆さま、わけても乳幼児や高齢者の方々も沈着冷静に対応していただけるよう、他地域から救助が来るまでの間に必要な、食糧を始めとするさまざまな物品を、76市町村411か所の山間集落に、きめ細やかに配備いたしました。その後、長野県の取組を受けて、国も同様の計画を進めています。ここでも、“信州モデル”が全国へと広がっています。急峻(きゅうしゅん)な山あいで暮らす、自律心と生きる意欲に満ちた方たちこそ、まさに本県の活力であり財産であります。コモンズの輪は県内すべての地域とつながっています。

若手職員の積極的な発意により、小学生が社会見学で訪れる県本庁舎での時間の過ごし方が、この9月2日から全面的にリニューアルしました。建物の中を回るだけの受身の見学から、子どもたちが一日記者になって各課を訪れ、事前にホームページで選んだ、自分たちが知りたいテーマを、職員とじかにふれ合いながら学べる体験型へと生まれ変わりました。サポーターとして自分の出身校の子どもたちを案内する職員も含め、全庁・各課の多くの職員を巻き込んで、子どもたちのみならず、県庁全体が「ワクワク・ドキドキ」心躍らせて、新しい企画に取り組んでいます。子どもたちの興味や意欲にもっともっと(こた)えたいと願い行動する職員こそは、県民の喜びを原点に置く、新しい信州・長野県を担い得る「人財」なのです。

 また、去る8月23日に県自治研修所で開催した、平成18年度事業構築に向けた部局長ディスカッションにおいて、来年度の予算編成において、現地機関の長からも予算に関して事業提案を行うとともに、職員の意欲を実現するため、既存の組織、事業に(とら)われず、職員個人、グループが企画から予算要求、実施まで責任を持って行う「事業提案制度」を創設することとしました。さらには、少子高齢社会に相応(ふさわ)しき、増税なき財政健全化を一層進めるため、旧大蔵省で主計官を務めた松谷明彦政策研究大学院大学教授の提案に基づき、いったん事業をすべて白紙に戻し、ゼロベースで必要性を検討する「ゼロベース予算」を実施していくこととしました。増税で財源を確保するという安易な発想ではなく、具体的な事業の実施により、県民の皆さまがどのようなサーヴィスを受け、どのような成果を得るのか、そしてそれがどのように税金に反映されてくるのか、との考え方に立ち戻って、予算編成を行っていく方針であります。その具体的実施に向け、9月25日、26日には県総合教育センターで部局長が集まって議論を行い、来年度の予算編成に向けて具体的な検討を進めてまいります。

 

アスベストに関する取組について申し上げます。

本県では、アスベストによる健康への被害や環境への影響に関する県民の皆さまの不安に対応すべく、7月8日からアスベストに関する「相談窓口」を各部署、各機関に設置し、健康に関すること、建材、建築物に関することなど各種相談に応じてまいりました。

8月9日には、これらの相談窓口を一元化した「アスベスト110番」を開設して、昼夜・週末を問わず24時間体制で相談に応じております。9月16日現在で2,187件の相談が寄せられております。

 また、7月11日及び12日に、大気汚染防止法に基づき、過去においてアスベストを取り扱った9社及び産業廃棄物処理施設2社に対し立入調査を実施し、その状況を公表するとともに、アスベストに係る疾患などの相談や診断が受けられる専門医療機関名も、広くお知らせしたところです。

 さらには本県独自の対策として、建物に使用されているアスベストが解体等の際に安全な方法で撤去、処分されるよう従来の国で定める基準に上乗せし、建築面積の多寡にかかわらず、解体または建物の補修の届出を受け、吹付けアスベストのすべての撤去現場等に県の職員が直接立ち会い、飛散防止策などの適正な除去作業が行われているか、除去されたアスベストが適正処理されているかなどの確認を行うことといたしました。

 7月13日に徳島県で開催された全国知事会議では、アスベストが原因とみられる疾病死が全国で多数報告されていることから、長野県と兵庫県の共同提案により、都道府県労働局が把握しているアスベスト製造、取扱事業所名などを速やかに開示することなどを決議し、「アスベストによる健康被害に関する緊急要望」を国へ提出したところです。その結果、アスベスト作業に係る労災認定の状況については、7月29日及び8月26日に厚生労働省から公表されております。

また、県内各地の施設、事業所等に対し、吹付けアスベスト等の使用状況の調査を行いました。あわせて、吹付け材の使用が確認された民間施設の管理者に対し、適正な処置をしていただくための講習会を県下10か所で開催してまいります。

県有施設については、既に昭和62年から吹付けアスベストの撤去等も行ってまいりましたが、除去が完了していない諏訪合同庁舎、公衆衛生専門学校など5施設と現在までの調査によりアスベストの含有が認められた県短期大学、駒ヶ根病院など4施設の計9施設について、予算を専決処分させていただき、速やかに対策工事に着手したところです。

現在、その他の県有施設で吹付け材の使用が確認された135施設においても、アスベストの浮遊調査及び建材の定量分析を行っております。その結果に基づき、必要な対策を迅速かつ適切に講じ、県民の皆さまの「安全」、「安心」な生活を確保してまいります。

 

下伊那郡阿智村における廃棄物処理施設の建設について申し上げます。

私の就任前から阿智村で計画されておりました廃棄物処理施設建設計画に関し、この計画自体を中止する、との本県の考え方を9月15日に発表させていただきました。

今後、この考え方を、地元の皆さま、この事業に関わっていただきました関係者の方々、また、事業主体である長野県廃棄物処理事業団にご説明申し上げ、ご理解を得てまいりたく存じます。

中止にいたった理由を改めて申し上げます。まずは1点目として、平成15年度の県内産業廃棄物実態調査では、リサイクルの普及などから最終処分量が減少し、県内の最終処分場の逼迫(ひっぱく)状況が緩和されていること。2点目として、こうした最終処分量の減少により、阿智村における最終処分場の受入見込量が計画を大きく下回り、その結果として処分料金収入が減少し、施設規模の縮小や埋立期間の延長を行っても収支の改善は見込めないことであります。

 本県の廃棄物施策に関して、産業廃棄物処理施設の建設計画から運営までかかわるとしておりました従来の公共関与のあり方を改め、今後は公共が関与し、事業者・地域住民・行政が協働する監視・苦情処理体制により優良な民間事業者の参入を促進するとともに、廃棄物の発生抑制のための企業支援を行ってまいりたいと考えております。

 

次に、行政改革について申し上げます。

 本年3月31日、長野県行政機構審議会から「長野県の組織再編に関する考え方について」答申を頂戴(ちょうだい)しました。以来、6月の県議会でご議論を頂くとともに、私も参加して5月から8月にかけて10の広域圏ごとに市町村長の皆さまと意見交換を行いました。さらに、8月下旬から9月にかけて地方事務所長と部課長が県下すべての市町村長のもとにお伺いし、改めて県の組織再編についてご説明申し上げ、ご意見を頂いてまいりました。また、県議会議員の皆さまに対しましても、地方事務所長がお訪ねし、ご説明申し上げ、ご理解を深めていただけるよう、努めております。

 こうした一連の取組の中で、市町村長や県民の皆さまからお寄せいただきましたご意見等を踏まえ、平成18年4月に実施する組織再編案を9月20日の部長会議で決定し、今回、組織再編に関係する条例案として提出いたしました。

 今回の組織再編は、信州・長野県が、21世紀型の豊かな社会を創り上げていくために、人と人の(きずな)を原点として、施策の流れを「地域発」に変え、自律的な市民とともにコモンズに軸足を置いた改革、「コモンズからはじまる、信州ルネッサンス革命」を、組織機構の面からも実践していくものです。

 問題解決型の意識を抱いた職員が、各地域のコモンズに軸足を置き、従来の縦割り行政の発想を超えて、そこに暮らす意欲(あふ)れる県民の方々とともに現場で議論し、発想し、問題解決すべく行動しながら、事業の仕組みを変えていく能動的な組織形態としました。

 こうした自律的、自発的な組織へとヴァージョンアップしていく過程では、職員一人ひとりにとりわけ、「総合愛情産業」を担う一員として、県民の皆さまのご要望に直ちに反応し、問題解決に向けて機敏に行動する公僕=パブリック・サーヴァントとしての的確な認識が求められております。こうした観点に立って去る8月17日、塩尻市の知事室分室が位置する県林業総合センターに隣接する県総合教育センターに部課長など350人の職員が一堂に会し、県行政機構審議会委員を務められた高橋俊介慶應義塾大学大学院教授から「自律組織とプロフェッショナル職員への改革」と題してご講演をいただき、自律的な複数の職員が行った事例発表を踏まえて、ディスカッションも開催しました。潜在能力の高さで従来から他の都道府県を凌駕(りょうが)していた本県職員は、お客さまである県民の目線に立って、体温の感じられる行政サーヴィスを、と繰り返し述べてきた私の期待を大きく上回る形で、この5年間に成長を遂げています。その事実を改めて実感し、感銘を受けた集いでした。

 あくまでも、利用される県民の皆さまの視点から、「機能的」で、「柔軟・スピーディー」な組織へと、まず、現地機関の再編から考えました。具体的には、県下10の広域圏ごとに地域の現地機関を統括する「地域本部」を設置し、私を始めとした本庁舎の各部署や他の地域、さらには各市町村長との「報・連・相」(すなわ)ち報告・連絡・相談を欠かさず行いながら、地域の重点施策の取りまとめや地域の課題解決に積極的に取り組みます。また、地方事務所は、幅広い機能を持つチームが地域の課題に柔軟・スピーディーに取り組む地域振興事務所に、保健所は、福祉事務所と統合して、福祉健康事務所へ再編し、福祉、保健、医療のサーヴィスをひとつにして住民の皆さまの利便性向上を図ります。その他、建設事務所は、10の基盤整備事務所と5の建設事務所へ、砂防事務所は、県境や山間地域にお住まいの皆さまに、家庭児童相談、消費者相談、交通事故相談等、生活に直結した相談機能などを加え、幅広いサーヴィスを提供する地域の「コモンズセンター」として再編することとしています。

 本庁舎につきましても、これらの現地機関の再編に併せ、地域主権をサポートする機関へと再編することといたしました。

 なお、平成18年度の組織再編に先立ち、地域の特殊性と皆さまのご要望に(こた)え、県のサーヴィスを身近にお届けするため、「南佐久ふるさと応援ステーション」(仮称)を小海町役場に設置し、町村行政に関する支援のほか、パスポートや納税証明書の発行業務、消費生活相談、地域の要望に応じた農作物の試験研究等を11月1日から行ってまいります。

また、架空請求、ヤミ金融等に関する相談に対応するため、JR岡谷駅前のララオカヤ1階に「松本消費生活センター岡谷支所」を11月中旬に設置し、午前10時から午後7時まで、土曜日、日曜日も業務を行い、諏訪地域及び上伊那北部の方々の利便性の向上を図ってまいります。以上ご説明申し上げました2施設の設置に要する経費を今回、計上したところであります。

 

続いて、美しく豊かな信州を実現するための景観施策について申し上げます。

景観とは、地域の方々が潤いの感じられる暮らしを続けていく上で、また、それぞれの地域を愛して訪れて滞在する、さらには移り住んで下さる方々にとって、かけがえのないコモンズとしての共有財産であります。現行の景観条例は、平成4年に自主条例として制定され、景観に影響を及ぼす大規模な行為に対して届出を義務付け、必要な指導を行う制度により、信州の美しく豊かな景観の保全、育成を図ってまいりました。全国的にも27都道府県で景観自主条例が制定され地域の景観育成への取組が進む中、昨年6月に景観行政分野で初めての総合的な法律であります景観法が制定されたことを踏まえ、現行の景観条例及び屋外広告物条例による景観施策をさらに充実させるべく、今回、「長野県景観条例等の一部を改正する条例案」を提出いたしました。

本条例案は、届出制度を景観法に基づく制度へ移行するとともに、より一層きめ細かく地域=コモンズの景観育成を図る上でも、地区制度や信州の優れた景観資産を指定し、保全する制度を新たに設けました。地域の景観育成には、そこに生活する皆さまの未来を見据えた哲学と気概の有無が重要となります。届出された内容の公表など住民への情報提供を拡充し、住民からの提案制度も設けるとともに、地域の景観に関する住民協定をより一層支援していくこととしました。

また、景観育成に重要な関わりをもつ屋外広告事業者について、登録制を導入し、広告物表示の適正化を更に進め、地域の良好な景観の維持を図ることとしました。

景観法の制定により、市町村が県と協議の上、「景観行政団体」として条例を制定し、独自の景観行政を進めることができることとなりました。本県では今後も、それぞれの地域=コモンズにお住まいの方々が、それらを愛する方々とともに(はぐく)んできた歴史、文化、風土を背景とした「信州の美しく豊かな景観」を、さらに次の世代へと引き継いでいくため、市町村や地域の皆さまと協働し取り組んでまいります。

 

最近の経済動向及び雇用情勢について申し上げます。

国内経済の状況については、企業収益は改善し、設備投資は緩やかに増加しておりますが、原油価格の動向が国内経済に与える影響等には引き続き留意する必要があります。県内経済は、足踏み状態から脱し切れていないものの、全体として回復に向けた動きを続けています。需要好調な自動車、産業機械向けの生産は、水準を引き上げたほか、IT関連財の生産は、在庫調整が進んでいる中で、持ち直しの動きが見られます。県内の有効求人倍率は、平成16年6月からこの4月まで11か月連続で1倍台の水準を保ち続け、5月から7月にかけても1倍前後で推移しております。

 従来から本県では、「豊かさと雇用の創出を目指して、環境と調和し、自律的に持続可能な経済社会の実現を図る」ことを目標とし、環境に配慮した地域中核企業の設備投資を支援する「信州ものづくり産業投資応援事業」による助成金も、8月末までに既に4件の認定を行っております。また、ものづくり産業製品のブランド化・マーケティングの支援、さらには、製造現場を支える「ものづくり」技能者・技術者の人財育成を行う「信州ものづくりスキルアップ事業」の実施や若年者の就業を支援する「ジョブカフェ信州」の運営等、引き続き各種の施策を着実に実施してまいります。

 

 治水・利水対策についてです。

 長野県治水・利水ダム等検討委員会に諮問いたしました河川に関し、これまでに流域協議会から頂戴(ちょうだい)しております様々な意見も踏まえ、現在、河川整備計画策定方針の検討を進めております。今後は、河川整備計画の基本的な考え方を決定の上、再度地域にお住まいの皆さまにお示ししながら、河川整備計画の策定作業を進めてまいります。

なお、ご承知の通り、下諏訪ダム・蓼科ダムが計画されていた砥川・上川を含む諏訪圏域河川整備計画は、去る3月に、ダム計画を破棄した形で国土交通省の認可を受けたところです。

 浅川の治水対策に関しては、9月16日に「浅川総合治水対策連絡協議会」に説明を行いました。今後も地元説明会を開催し、更に住民の皆さまのご意見をお聞きしてまいります。また、先般、独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構と北陸新幹線長野・金沢車両基地間の開業を平成26年度末とするためには、長野市長沼地区の用地取得を平成18年度末には完了させる必要があることを再確認いたしました。北陸新幹線の建設スケジュールに影響を及ぼさないよう、浅川の治水対策について鋭意、住民の皆さまとの話合いを進めます。

 基本高水の検討、研究の場に関しても、7月に「高水協議会」を設置し、第1回高水協議会を9月13日に開催しました。引き続き、学識者のアドバイスを頂きながら、住民と行政が協働した検討、研究を進めてまいります。

 

今回提出いたしました一般会計補正予算案その他の案件につきまして、その概要を申し上げます。

補正予算案は、一般会計で29億5,217万3千円です。

まず、安全・安心なくらしの確保について申し上げます。近年、心疾患による死亡者は増加傾向にあり、今後も高齢化の進展とともに増加するものと予想されております。他方、ボールが当たったなどのスポーツ事故、いわゆる「心臓震盪(しんとう)」などによる若年者の突然死も大きな問題となっています。これら突然の心停止の原因の多くは、心臓のポンプ機能の停止であり、その病気の本態は「心臓の震え」です。この「心臓の震え」を取り除くためには、1分1秒を争う素早い救命措置として、誰でも簡単に扱うことができる「自動体外式除細動器(AED)」の使用が有効であるとされています。

わが国においては昨年7月に、一般市民によるAEDの使用が認められました。本県でも、県有施設へのAEDの配備を積極的に進めてまいります。平成17年度当初予算では、既に県本庁舎や信州まつもと空港等に配備しましたが、今回、新たに合同庁舎、信濃美術館、松本平広域公園など多くの皆さまが集まる施設のほか、すべての県立高等学校への配備を進めてまいります。

AEDの配備と並行して、AEDの使用方法と(よう)手法(しゅほう)による心肺(しんぱい)蘇生法(そせいほう)を習得するための講習も、県本庁舎と各保健所で実施しております。今後2年半の予定で、養護教員のみならず、小中高等学校・自律学校すべての教員と県職員全員がこれらを習得できるよう、講習を実施してまいります。

続いて、交番相談員の増員による交番機能の強化についてです。日本モデルとも呼ぶべき交番は、警ら、巡回連絡、事件・事故等への対応など地域=コモンズに密着した活動を通じて、住民にとっての安全と安心の()り所として機能してまいりました。しかしながら近年、交番勤務員は事件・事故の対応に追われているほか、治安情勢の悪化に対応してパトロールを強化していることとも相俟(あいま)って、交番での警察官不在が常態化し、住民の不安を増幅させる要因にもなっています。こうした状況下で、コモンズに生きる住民の不安を払拭(ふっしょく)し、治安を回復させるためにも、空き交番状態を早期に解消し、交番の機能強化を図ることが不可欠です。このため、県職員の派遣による警察安全相談員10名を交番相談員に振り替えることも含め、計40名の交番相談員を確保し、不在時間が多くなっている市街地等の交番を重点に配置いたします。今や世界用語ともなった交番を核とした地域防犯活動を一層強化するとともに、安心できる地域社会の実現を目指してまいります。

県民生活に密接に関連する社会資本の整備についてです。県産間伐材を活用した「信州型木製ガードレール」は、森林県として相応(ふさわ)しき実効性の伴う景観形成事業であると同時に、地域住民のみならず県内外からの来訪者に心の安らぎを与える、正に全国各地で熱い注目を集める“信州モデル”であります。また、間伐材を用いて県内の土木建設関連企業が製品化する「信州型木製ガードレール」は、他の都道府県で製作される従来の金属製ガードレールとは異なり、本県内に新たな雇用ももたらす「循環型」公共事業とも呼ぶべき“信州モデル”でもあります。既に昨年度から、県内の観光地や景観に配慮すべき地域に設置を始めており、複数の都道府県等の議会議員の視察に(とど)まらず、首長からも我が地でも導入を検討したい、との反応をいただいています。県内市町村長の皆さまからも、コモンズ支援金を活用して、地元で生じた切捨て間伐材を活用して「信州型木製ガードレール」を設置したいとのご提案をいただき、採択したところです。今回の補正予算では、林野庁の森林(もり)づくり交付金を活用して、軽井沢や上高地など本県が誇る世界的保養地で重点的に「信州型木製ガードレール」を設置し、間伐材の利用促進や環境立県、観光立県「信州・長野県」のイメージアップを図るとともに、“信州モデル”として全国に発信してまいります。

道路、河川、砂防施設など県民生活に身近な社会基盤の整備につきましては、安心で快適な県土づくりを推進するべく、既存施設の修繕や機能再生などによる維持管理の充実を図るとともに、落石事故や集中豪雨による水害・土砂災害などに対する緊急的、重点的な対策を実施してまいります。

経年による路面の損傷が激しく緊急に対応が必要な箇所については、舗装補修を積極的に行うとともに、通学路等における安全で安心な歩行空間を確保するため、歩道整備や交差点改良等を実施いたします。

本年5月に落石死亡事故が発生した主要地方道松川インター大鹿線は、自律の道を歩む大鹿村民にとって生命線とも呼ぶべきコモンズの生活道路であります。その安全性を確保するため、トンネル新設に向けた調査設計を実施いたします。また、県内各地で相次いで発生した落石事故を受け、15建設事務所では202路線、約2,500か所の道路法面(のりめん)の緊急点検パトロールを行いました。その結果を踏まえ、とりわけ緊急性が高く、恒久的対策が必要な箇所について、防災対策工事を実施してまいります。

このほか、本年の梅雨前線豪雨の影響を受けて、次期出水による災害危険度が高く、緊急の対応が必要となっている河川のしゅんせつを行うとともに、砂防関係施設について修繕等を行ってまいります。

また、国際親善文化観光都市である軽井沢につきましては、その都市の名に相応(ふさわ)しい、魅力ある景観形成・都市空間の創出のために必要な調査・研究を、国土交通省の支援の下に実施してまいります。

次に、コミュニティ活動の支援についてです。宝くじ助成金を活用しての「コモンズ支援車」の整備に関しては、先の6月県議会での議論を踏まえ、車両マーキングや装備品等についての見直しを行い、また、きめ細かい対応を目指して県下10か所の地方事務所に一斉配備することとしました。従来、県民の皆さまに地方事務所等へと足を伸ばしていただいていた各種相談を、こちらから出向いてお受けする窓口の開設に加えて、住民との協働事業を行ってまいります。また、衛星携帯電話を搭載し、災害発生時には災害現場での情報収集等の拠点として活用するなど、市町村や地域住民と連携・協働し、サーヴィス向上に努めてまいります。

本県の森林整備について申し上げます。本年6月に策定しました「信州の森林(もり)づくりアクションプラン」では、平成27年度までの10年間に約25万ヘクタールの手入れを必要とする森林について、すべて間伐を実施することを明記しました。これは、高性能林業機械による二残一伐列状間伐を推進しながら、健全な森林づくりを目指すものであります。森林整備の増進を実現するべく、580ヘクタールの間伐を追加するための所要額を計上いたしました。

また、その間伐材等の有効活用として、本県ではペレットストーブ・ボイラーの導入促進を図ってきました。より一層の森林資源の有効活用を推進するとともに、脱地球温暖化、地域産業の活性化を図る観点からも、NPO法人、市町村などが設置する信州型ペレットストーブの導入に対する助成を追加いたします。

災害への対応についてです。近年、梅雨前線や台風等による局地的豪雨で全国各地において甚大な水害が発生し、多くの人命や財産が失われております。これを踏まえて、中小河川での予警報体制の充実など近年の降雨・出水特性に対応した水害対策が求められ、本年7月に水防法が改正されました。これに伴い、洪水による災害発生を特に警戒すべき水位として新たに定められた「特別警戒水位」を設定するための調査を、県内の22河川において実施いたします。

そのほか、交通信号機の増設、ダムに替わる水道水源の確保や干害応急対策事業への助成、震度情報ネットワークシステムの改修などに要する経費を計上いたしました。

 以上申し上げました一般会計補正予算案の財源として、地方交付税12億7,277万1千円、繰越金10億3,021万6千円、国庫支出金2億3,250万6千円、その他諸収入など4億1,668万円を見込み、計上いたしました。

 本年度の一般会計予算は、今回の補正を加えますと、8,579億3,707万2千円となります。

特別会計補正予算案は、平成18年度流域下水道終末処理場の維持管理業務について、新たな方式による発注を円滑に進めるため、債務負担行為を設定するものです。

 

次に、条例案は新設条例案4件、一部改正条例案11件です。先程申し上げました平成18年度組織再編関係では、県下10広域の地域本部、地域振興事務所及び福祉健康事務所を設置するための条例を新たに設けるとともに、これら現地機関の再編に伴って本庁舎内の事務部局も10局に再編する上で、所要の改正を行うものです。

 

事件案は本年5月に主要地方道松川インター大鹿線で発生した落石死亡事故に係る損害賠償など4件であります。

 

専決処分の報告は、先程申し上げました県有施設のアスベスト対策事業に係る平成17年度一般会計補正予算の専決処分報告など14件です。

 

先週の14日から18日まで、香港と広東省の広州で、信州・長野県観光プロモーションを開催しました。説明会・商談会・懇親会と3時間半に及ぶ長丁場にもかかわらず、香港では約80人、広州では約70人の地元旅行関係企業の責任者、担当者が全員、最後まで熱心にご参加下さり、こんな熱気は初めてだ、と他の都道府県、政令市の催しにも熟知した国土交通省の外郭団体である国際観光振興機構の現地所長からも賞賛いただきました。県内各地からご参加下さった23人の旅館等の観光関係者の皆さまにも、具体的商談の成果が得られた、と(うれ)しい言葉を頂戴(ちょうだい)しました。

広東省の黄華華(こうかか)省長とも会談し、また、信州まつもと空港へのチャーター便に関し、中国第2位の航空会社である中国南方航空でも劉紹勇(りゅうしょうゆう)総裁から積極的な取組を行いたい、との返答をいただきました。ご存じのように、香港に本社を置くドラゴン航空は今春に運航した4便に続いて、この秋にも信州まつもと空港へのチャーター便を複数回、計画しています。なお、今回のプロモーションにより、新たなチャーター便の要望が複数の旅行社からあり、インバウンドと信州まつもと空港の利用促進に大きな成果がありました。今後は、富山、新潟等への韓国からの定期便を活用して、信州の温泉やスキー場、ゴルフ場へとお越しいただくツアーの策定にも努力してまいります。

また、昨日、長野県監査委員の皆さまから、平成16年度長野県歳入歳出決算審査意見書の提出を受けました。その中で「財政改革推進プログラム」は「着実にその成果を上げている」と過分な言葉を頂戴(ちょうだい)しました。

起債による過去の投資に関する償還は、(いま)だ胸突き八丁ではあります。しかしながら、多くの職員や県民のご理解とご協力を得て、本県は全国の都道府県で唯一、4年連続で普通会計の県債残高を減少させ、その額は547億円に上っています。「財政改革推進プログラム」の手綱を緩めることなく、他方で「真に県民生活に必要な事業へ積極的な財源配分を行い、ますます多様化する県民ニーズにきめ細やかに対応し、県民サーヴィスの水準を向上させるべく」努力を重ねてまいります。

「信じられる日本」を取り戻すべく、増税無き財政再建、年金通帳の導入、霞が関官僚政治の打破を掲げて「新党日本」を私が立ち上げるに至ったのも、閉塞感(へいそくかん)に覆われた日本を地方の現場から変革していく上での行動発信機能として、必ずや信州・長野県の県民益へと還元し得る、と確信したればこそです。

全国11ブロックの5ブロックに限って比例代表候補を擁立したにもかかわらず、結党から(わず)か3週間の活動で長野県内の総有権者数とも拮抗(きっこう)する164万3,506人もの方々にご支持いただいた新党日本の代表として出演した、投票日翌日のNHKスペシャル「徹底討論 有権者の審判にどうこたえるか」で、政権与党を構成する公明党の神崎武法氏も自由民主党の武部勤氏も、長野県における入札改革、財政再建を国レヴェルでも取り入れていくべきだ、と有り難くもご発言下さいました。

それは、220万県民や給与カットを甘受し続けてくれる県職員、さらには今回の組織再編に深い理解を寄せて下さる多くの市町村長の方々にとっても、励みであり誇りであろうと、手前味噌ながらも感じ入った次第です。

 

私は就任以来、県民の目線、税金を納める者の立場に立った県政を、そして、当たり前のことを当たり前に語り合え、行い得る開かれた県政の実現を目指し、奮闘してまいりました。

「行政とは、220万県民の命を守り、真の県民益をもたらすべく、継ぎ目のない(シームレス)サーヴィスを提供する機関である」との基本理念に基づき、日々の仕事や議論を通じて、こうした姿勢=アティテュードを職員と共有し合える職場環境と県政運営を、及ばずながらも心掛けてきました。

医療・福祉、教育、環境、観光など、信州・長野県は、あらゆる分野においてよろず承り係の精神で「人」が「人」として「人」のために温かさや優しさ、確かさ、美しさを発揮できる、いわば「総合愛情産業」「総合奉仕産業」とも言うべき行政サーヴィスの向上を目指してまいります。

中国と日本の、更には韓国でも広く知られたことわざに「井の中の(かわず)大海を知らず」があります。英国では、「He that stays in the valley shall never get over the hill.」と表現されるそうです。直訳すれば、「谷の中に住み続ける者は決して、山の向こうの事が(わか)らない」。けれども、古くから十州と険しい山で境連なってきた信州・長野県の取組に、多くの方々が注目し、期待して下さっています。「海こそなけれ物さわに」と「信濃の国」に(うた)われる素晴らしき郷土に生きる私たちは、日本を愛すればこそ日本を憂う全国の皆さまにお(こた)えするべく、まさに信州・長野県から信じられる日本へと変えて行く心意気で、ともに走りながら、ともに語りながら、比類なき改革の道程を築き上げてまいりたく存じます。どうぞよろしくお願いいたします。

 

以上、今回提出いたしました議案に関するご説明を申し上げました。ご審議の上、ご議決を賜りますよう、ご理解とご協力の程、お願い申し上げます。