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経世済民の覚悟がまるでない小泉ポチの亡国的計算
田中 康夫
日刊ゲンダイ 2004年6月24日
「奇っ怪ニッポン」に収録


掲載日:2004.6.27

 田中康夫氏は、日刊ゲンダイの水曜日版に毎週コラムを寄せている。奇っ怪ニッポンだ。毎号、作家、田中康夫ならではの論考を書いているが、なかでも2004年6月24日号に日本の将来を占う上できわめて重要な論考を書いている。ぜひ、ご一読頂きたい。 

 出典・原典は→ http://gendai.net/contents.asp?c=025&id=15060
 
「日本の政治指導者に最も欠けているのは、国家国民の為に『命を捨てる覚悟』が無い、という点」「国を救うのは洋の東西を問わず『気骨ある異端』で、英国は常に斯(か)くなるリーダーの出現で救われてきた」――こう語ると、政治家・小泉純一郎の表情は俄(にわか)に紅潮した。

 それを3年前の3月の小料理屋での逸話として、「日本経済新聞」の田勢康弘氏は会員制月刊誌「フォーサイト」に記しています。

「政界では異端であっても、『本気っぽくて、自分を曲げない人』こそが国民の支持を集める」と「毎日新聞」の与良正男氏も、石原慎太郎や田中康夫しかり、と記した後に、「『自民党をぶっ壊す』と叫んで政権に就いた小泉純一郎首相が当初、爆発的人気を得たのも言動が確信犯的だったからでは」と分析します。

 が、米国追従確信犯として多国籍軍参加→集団的自衛権→平成の盧溝橋事件→徴兵制ベクトルの下、「(自身ならぬ国民に)命を捨てさせる欲望」を行使する小泉ワンワンに今、人々は愛想を尽かしているのです。即(すなわ)ち、世を治め民の苦しみを救う“経世済民”の覚悟など、これっぽっちも持ち合わせず、「人生いろいろ」だと嘯(うそぶ)く政事屋・小泉純一郎に。
 シーア派の首相に、スンニ派の大統領。閣僚にはクルド族も配した「主権移譲」なんぞ、早い話が満州国の皇帝に祭り上げられた愛新覚羅溥儀の傀儡(かいらい)政権と同じです。これで平和が訪れるなら、疾(と)うの昔に実現している筈(はず)。単純思考な熱血漢の米国が考えそうな筋書きです。

 それに追従している小泉ワンワンは恐らく参院選の最中、公務員の「3階建て」共済年金を、大企業の「2階建て」厚生年金並みに格下げしようと発表し、未だ親方日の丸意識な自治労も加わる連合を斬り捨てられぬ民主党が手をこまねく中、「1階建て」国民年金層の付和雷同支持を得る魂胆です。

 而(しこう)して、早く自民党を脱出した方が大成するのに、と僕が期待している渡辺喜美、演技力向上が妻に期待される後藤田正純なんぞを、些(いささ)か錆び付いてきたサプライズ人事で大臣に登用し、支持率の再浮上を画策するのでしょう。

 で、万が一にも議席数が伸び悩んだ際には、それこそ自民党を自ら飛び出して、大臣就任願望症候群の枝野幸男や前原誠司、野田佳彦に代表される民主党の反小沢一郎勢力を巻き込んで、新党ワンワンを結成するやも知れませんなぁ。

 それは、チャーチルやサッチャーに象徴される英国の異端とは似ても似付かぬ亡国の利己的政事屋に他なりません。そんなハーメルンの笛吹に嬌声を上げる善男善女は、少し冷静に考えた方が良いんじゃないの?