「華氏911」のムーア監督ほえる
ブッシュを追い出す 米大統領選 ケリー氏支援の政治宣伝?
ブッシュ米政権を痛烈に批判したマイケル・ムーア監督(五〇)の最新作「華氏911」が、大ヒットを記録している。六日、ニューヨークで本紙など海外メディアと記者会見した同監督は、今秋の米大統領選で「ブッシュをホワイトハウスから追い出す」と気炎を上げた。(ニューヨーク・寺本政司)
「華氏911」は六月二十五日、米国とカナダで一斉に封切られた。公開わずか三日間で、米ドキュメンタリー作品としての過去最高の興行収入を記録。先週から上映館数が倍の千七百二十五館に増え、同収入は六千万ドル(約六十五億四千万円)を突破した。ノースカロライナ州など米軍施設がある地方都市でも満員の盛況という。
映画の反響について「これまで投票に行かなかった多くの米国人が映画を見て、今回は投票しようという気になっている。非常にハッピーだ。彼らの多くは『なぜ、今までこんな事実を知らされなかったのか』と疑問を感じている」と述べ、返す刀で「米メディアはブッシュのチアリーダーとなり、真実を伝えるという自らの仕事を放棄した。イラクで既に八百六十人の若い兵士が命を落としている。メディアが役割を果たしていたら、こんなことにならなかった」とメディアの姿勢を批判した。
映画では、米軍の爆撃で血みどろになったイラクの子供や、イスラム過激派に引きずり回される米国人遺体の映像。その合問にブッシュ政権首脳の笑顔が入り「戦争で多くの犠牲者が出る一方、彼らは石油利権の確保に満足しています」とナレーショシが流れる。配給予定だったウォルト・ディズニーは「政治色が強すぎる」と配給を拒否したほどだ。
ブッシュ支持の保守派は、政治宣伝と批判している。ムーア氏はこれに対しこう反論した。 「この映画の使命は、ブッシュをホワイトハウスから追い出すことだ。貧困層の若者たちが国のために殺されていく姿を見るのはもううんざりだ。適切な人物が大統領選で勝利すれば、平和や経済的な公平性が実現され、テロも消滅するだろう。映画の中で私の意見や理論を盛り込んでいるのは確かだが、指摘した出来事はすべて事実だ」
今年の仏カンヌ映画祭で最高賞のパルムドールを受賞した同映画だけに、ブッシュ批判は映画をヒットさせるための話題づくりではないのかとの指摘がある。 「昨年の米アカデミー賞授賞式のスピーチで、私は(『ブッシュよ。恥を知れ』などの)政権批判をした。公の場であのような発言はリスクを負うことだったが、米国人はいつか真実に気づくと信じていた」と説明した。
ならば、民主党のケリー侯補を勝たせるためとの見方にも「ケリーとは会ったこともないし、話したこともない。大体、民主党のためにこの映画を作ったわけではない」と否定した。
宣伝スタッフにゴア氏の報道官
しかし、映画の宣伝スタッフには、二〇〇〇年にブッシュ氏と大統領選を戦ったゴア前副大統領の報道官の姿がある。ムーア氏は、ケリー候補がエドワーズ氏を副大統領候補に選んだことを「賢明な選択」と評価。前回選挙で応援した第三党のネーダー候補については、リベラル票が割れることから「今回は投票しないよう呼びかける」と話す。
その上で「外国の人に知ってもらいたいのは、米国人全員がブッシュ支持ではないことだ。米有権者の半分が投票するとしてブッシユ支持は40%で、残りの60%は反ブッシュのはずだ。
前回はフロリダ州(の集計作業)の票がブッシュに盗まれた。今回は不正がないよう、厳しく監視しなければならない」と強調した。 |