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トキに未来はあるか

池田こみち

掲載日:2005.3.31

 このごろトンとトキの話題が出なくなっている。一頃は、人工ふ化の成功やヒナの成長が頻繁に報道されていたのに。久しぶりにトキ保護センターのWebを除くと、驚くことに、16年度の繁殖計画が終了し、合計58羽ものトキがセンターの檻の中で飼育されているとのこと。学名ニッポニア・ニッポンの純粋日本のトキは金ちゃんを最後に絶滅したが、中国産トキが増え続けている。しかも檻の中で。さぞかし、窮屈な暮らしではなかろうか。

 複雑な思いである。そして、さらにWebを見ていくと、04年6月、環境省は、佐渡市内に施設規模20haの「トキの野生順化施設」を建設すると発表した。

−−−−−−以下 環境省の報道発表より
1順化施設の目的

 佐渡におけるトキの野生復帰を実現するため、飼育施設と管理施設の建設及び餌場、ねぐら、営巣木等の環境整備を実施し、飼育下のトキが自然状態で自立して生存できるよう、採餌、営巣、育雛、繁殖、飛行、天敵回避等の訓練を行います。
 
2順化施設の建設地

 建設地は、佐渡トキ保護センターから直線距離で南東3.5km、標高およそ150mのところにあります。餌場となる水田跡地、沢及び湿地、ねぐらとなるナラ、スギ、マツ林並びに冬場の餌の確保に必要な地下水がある山林です。
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 確かに、今後、何羽までトキを人工的にふ化し続けるのか知らないが、このままでは保護センターの檻には入り切らなくなることは明らか。早く外で生きていけるようにしなければ、と考えるのも無理はない。

 だが、考えてみれば、順化施設の環境を整えても、施設の外がそのままでは意味がない。なぜ、もっとはやく佐渡の自然、あるいは新潟県も含めてトキが自由に飛び交えるような自然の回復のための措置をとらなかったのか。野生順化施設は、一時的な訓練センターであり、ずっとそこで暮らすわけではない。いずれは、本来の野鳥として野山や里の農地などに飛来する姿が見られることこそ重要なのではないだろうか。

うがった見方をすれば、「トキ野生順化施設」も一種の公共事業。地元の経済発展に貢献するという一面の方が重要だったりして。

 「愛・地球薄」も結構だが、マンモスに血道を上げるより、もっと身近な野生生物や自然に目を向けるような方策を考える必要がありそうだ。この冬は熊も災難続き、下北半島の天然記念物である北限のニホンザルもついに捕獲され処分された。

http://www.env.go.jp/press/press.php3?serial=5121
http://www.env.go.jp/press/press.php3?serial=5043