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またクールビズ?
 環境省は税金の無駄使いをやめ
本筋で勝負すべき!



池田こみち

掲載日:2006年6月1日


 今日、6月1日は更衣(ころもがえ)の日、クールビズ解禁日ということで、前日の5月31日には、表参道ヒルズで環境省主催による盛大なファッションショーが開催された。

 新聞各紙やテレビのニュース番組でも取り上げられ、閣僚やアジア6カ国の駐日大使らがモデルになってステージを歩くシーンなどが紙面を飾った。

 特に今年は、「クールアジア」と銘打って、より国際的なキャンペーンとなったことで一層注目を集めたようだ。また、ルイ・ヴィトンやダンヒルなどの有名ブランドのファッションも登場したというが、どこか現実から「浮いている」感は否めない。

 環境省は、昨年のクールビズによる電力消費の節約で削減された二酸化炭素(CO2)の排出量を46万トンと推計、これは約100万世帯が1ヶ月に排出するCO2排出量に匹敵すると自画自賛している。

 しかし、実際のところ、日本の温室効果ガス排出量は増加し続けている。先日発表されたデータによると、「平成16年度の温室効果ガス総排出量は、二酸化炭素に換算して約13億5,500万トンとなり、京都議定書の規定による基準年(原則として1990年)の総排出量(約12億5,500万トン)と比較すると、約8.0%上回る値」となっている。

2004年度(平成16年度)の温室効果ガス排出量について(概要)
http://www.env.go.jp/press/file_view.php?serial=8083&hou_id=7148

 さて、問題は温室効果ガスの削減に向けて国民的な取組を進めていかなければ成らないことは間違いないが、このキャンペーンについては、どうしても指摘しておかなければならない点がある。マスコミ各社も、課題は指摘しているが肝心な点に触れていない。

 温暖化防止のためのキャンペーンには年間、環境省が最も力を入れている事業のひとつであり、1件の委託事業で27億円という環境省最大の委託事業である点に注目してほしい。詳細は「データでみる環境省随意契約の不透明な実態」http://eritokyo.jp/independent/nagano-pref/takatori-col0113.htmlを参照していただきたい。

 「地球温暖化防止大規模「国民運動」推進事業」として平成17年度にスタートしたキャンペーン事業は、今年で2年目。2年連続して、博報堂が27億円で受注しているのである。2年間で54億円となる。ちなみに、18年度に博報堂がコンペで受注した提案書はhttp://www.env.go.jp/earth/info/kokumin18/kikaku/full.pdfにある。

 どれだけ巨額を投じても、所詮キャンペーンは人頼み、その効果も自ずと知れているというものだ。

 博報堂といえば、電通につぐ大手広告代理店、新聞・テレビとも日頃からお世話になっているとはいえ、まったくこの点に触れないのはなぜだろうか。カラー写真でファッションショーを伝えるだけでなく、もっと本質をついた記事があってもよいはずだ。

<指摘されている主な課題>

・CO2の排出量が減ったと言っても貢献度は、オフィスなど業務部門における必要削減量のわずか1.5%にしかならない。

・クールビズについての知名度は96%と高いが、実際に冷房温度を28℃に設定した企業の割合は33%に過ぎない。

・アパレル、ファッション業界への経済効果は拡大しているが、一方で、ネクタイ業界のダメージが続いている。

・ファッションばかりが注目されて、肝心な温暖化防止や排出抑制への意識が不足している。

・イベントとして関心をもたれただけで、最も排出量の削減が難しい家庭部門や運輸部門への対策は立ち後れているのではないか。

 ファッションショーも話題性は有るかも知れない、環境省が主催する意味がどこにあるのだろうか。

 ポスト小泉と目される面々のアピールの場になったり、小池大臣が直接中国大使などに連絡して参加にこぎ着けたとかで、外交手腕を見せつける場にはなったかもしれないが、肝心な一般への「温暖化防止」のアピール度はどの程度だったのだろう。27億円の委託費の内、いくらこのショーに使われたのだろうか。

 小さな政府、民間にできることは民間に、無駄を支出を節約して財政赤字を減らさなければという一方で、このような無駄が堂々とまかり通って良いのだろうか。

 原発頼みの日本の温暖化対策、もっと根幹的な政策の立案や施策の導入に予算を投ずるべきである。ただでさえ弱小官庁と言われ続けている、環境省。ファッションショーや風呂敷普及キャンペーンもよいが、本来もっと力を入れるべきところは、長年先送りになっている環境税、炭素税などの導入に向けた他省庁との折衝や産業界との調整などではないだろうか。

 「政府においては、昨年4月28日に閣議決定した京都議定書目標成計画(http://www.env.go.jp/earth/ondanka/domestic.html#3)に掲げた温室効果ガスの排出抑制対策、吸収源対策、京都メカニズムの活用等を、官民挙げて確実に実施することにより、京都議定書の6%削減約束を確実に達成していきます。」とは言うだけで、国として取り組むべき施策が結局後回しになっているのは間違いない。