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長野県環境審議会
委員奮戦記


池田こみち

掲載日:2005.8.4


 環境コンサルタントとして20余年を過ごしてきたが、審議会の委員としての経験はまだ3年である。平成14年度から長野県環境審議会委員を拝命している。

 今まで、市町村レベルの自治体でコンサルタントとして行政担当者と同じ側(幹事側)に座り、政策や計画の説明をしたことは何回かあったものの、諮問された案件(政策・計画・事業等)を審議する立場というのは、やはり重責であり毎回それなりに時間をかけて資料に目を通し、短い審議時間の中で発言すべきことを用意するよう努めている。

 説明する側にいるときは、座長にさえ事前にしっかり説明しておけば、あとは儀式的なものだから、ということで「審議会」をどちらかというと軽視してきた嫌いがあったが、その役割や実態は外からではなかなかわからないということも次第にわかってきた。

 審議会とは知事や市長が実施したい政策について専門家や第三者、県民の代表などに諮問あるいは説明し、評価・判断をあおぐというものであり、条例により位置づけられている。

 そのメンバー構成は、多くの場合、地元国公立大学の名誉教授などを中心とした学識経験者、市町村長会の代表、産業界代表、NGO代表などが選ばれる。

 長野県の場合、田中知事になって大幅に委員会メンバーが刷新された。14年度は21名(大学教授など5名、民間5名(私も含め)、NGO4名、自治体の長2名、自営業等(弁護士・農業・作家など)4名)であり女性は3名、長野県外からは4名だった。民間の環境コンサルタントが委員となるというのは極めて希なケースだと思われる。

 審議会はあくまでも諮問されたことについて検討するのが主な役割なので、環境に関心があり、専門家だからと言って好きなテーマについて議論ができるわけではない。いかに行政が提示した政策、計画を的確にチェックしてよりよいものにできるかが問われている。もちろん、主要な議事の終了後にはいろいろな課題について議論する時間をとることは可能であるが。

 就任当初は、あまりにも専門家といわれる先生方の発言がないことに驚かされ、審議会委員の通信簿?をつけるに至った。
http://www.eforum.jp/nagano-pref-env1.html

 発言しなくても出席するだけで謝金も支払われるし、交通費もかかるのだ。会議では、大学関係者よりもそれ以外の委員の発言がいつも活発だった。

写真:左端が池田

 黙って出席することがいわゆる「審議会」というものを特徴づけていたように思う。通信簿の結果も参考にされたのか、次期委員会メンバーは大幅に削減され、全12名うち女性1名(一人辞退)となったが、5名は信州大学の先生方である。
http://www.pref.nagano.jp/seikan/chikyu/sinngi/meibo.htm

 私の審議会における心得は次の通りである。
 ・できるだけ日程調整を行って出席するようにする。
 ・事前に送付された資料に目を通す。
 ・疑問点や課題を整理しておく。
 ・長野県外からの委員としての視点を重視する。
 ・国際的な視点や新たな政策の流れを常に念頭に置く。

 審議会の開催時間は2時間〜3時間程度ではあるが、まじめに参加しようとすると結構な準備作業が必要になるのである。

 これまで審議会は行政の露払い的というかお墨付きを与えるという役割が大きく、提案された政策などにあまり本気で意見を言われては困る向きもあったのかも知れないが、そうした「形式」「儀式」「手続き」が重要であるなら、委員謝金も時間ももったいないので、そういう制度そのものを止めた方がよい。

 いままであまりにも審議会が形骸化していたせいか、市民の傍聴もほとんどなく、報道でも取り上げられることも少ない。ひたすら黙って出席する委員たちと行政のあうんの呼吸で粛々と手続きが進む、という「審議会」が全国で行われているのだろう。もっと身のある指摘や議論ができる本来の審議の場とすることが必要ではないだろうか。

 長野県では、長年県庁前のホテル会議室で行われてきた審議会を、委員の指摘により県庁内会議室に移し、会議中にはお茶も出ない、という質素ブリ。これまで用意されていた筆記用具類も最近は用意されていない。

 質素倹約は重要だが、議論の内容まで質素になっては意味がないので、せいぜい委員でいる間は、がんばって本来の役割を果たしたいと思っている。