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訪朝同行記者団から日テレ排除

掲載日:2004.5.19

 小泉首相の飯島秘書官が日本テレビが首相訪朝に際し、北朝鮮への人道支援の内容として「25万トンのコメ支援で最終調整」と16日に放送したことについて、日本テレビを訪朝同行記者団から排除したとされる。さらに、誰が情報を漏らしたかそのニュースソースを明かせば同行を認めると、恫喝とも思える発言をしていたことを日本テレビが暴露した。

 これはひとつは、憲法に認められている報道の自由を侵すものであり、もうひとつは独裁国家なみの報道管制を首相の秘書官が隠れたところで行っている可能性を示唆するものであり、到底看過できない大問題であると言える。

 日本テレビが経過を公開した後、政府は一転して同行を認めることとなった

 今回の一件は、政府が報道機関のニュース内容によって、訪朝同行記者団を恣意的に取捨選択する、それも首相秘書官がテレビ局に直接電話し、報道内容に圧力をかけたことを意味する。 

首相官邸:
小泉訪朝の同行記者団から日テレ排除

 小泉純一郎首相の22日の北朝鮮訪問にあたり、首相官邸が日本テレビを同行記者団から排除していることが18日、わかった。日本テレビ側は北朝鮮への人道支援の内容として「25万トンのコメ支援で最終調整」と16日に放送したことが直接の原因と主張している。大手メディアが報道内容を理由に首脳外交での同行取材を拒否されるのは異例だ。

 日本テレビが内閣記者会に行った説明によると、飯島勲首相秘書官から放送当日の16日、「訪朝を妨害するために報道したのか。取り消さなければ同行を認めない」と同社に電話で抗議があり、首相官邸からは外務省にも同社を排除するよう指示があったという。同社によると、飯島秘書官は「ニュースの情報源を明かせば同行を許可する」とニュースソースの開示を要求、さらに「(同社の)代わりに雑誌社を同行させる」と伝えたという。18日段階で同行記者団リストに同社は含まれておらず、同社は「(言論の自由にかかわる)報道全体の問題」として経過を公表、首相官邸側の対応を批判している。

 首相が外国を訪問する場合、同行記者団が結成される。北朝鮮の場合、首脳会談のような取材では同行以外は入国できない。

 これに関し首相官邸報道室は18日夜「まだコメントできない」としている。

毎日新聞 2004年5月18日 22時53分

首相官邸:
日テレ同行取材拒否 識者からは批判の声

 「ニュースの情報源を明かせば同行を許可する」−−。小泉純一郎首相の訪朝をめぐり、飯島勲首相秘書官がそんな言葉を用いて日本テレビを同行記者団から排除していた。首相官邸の露骨なマスコミ管理のあり方に、識者からは「独裁的な権力行使」「報道の自由への認識が全くない」などと批判の声が上がった。

 政治評論家の森田実さんは「訪朝に際し、飯島秘書官がどこのメディアを同行させるか選別する動きがあると聞いていたが、今回の対応は極めて強権的、独裁的な権力行使だ。報道に異議があるなら、内閣のスポークスマンである官房長官が記者会見で堂々と否定すればいいし、判断は国民に任せるべきだ」と憤る。

 岡野加穂留・元明治大学長(臨床政治学)は「小泉政権は参院選を控え、マイナス面を一掃するために今、勝負をかけている。そうした異常な緊張感の中での対応だろう。長期政権のおごりが出た」と分析する。

 一方、服部孝章・立教大教授(メディア法)は「小泉内閣の情報統制体質がはっきりした。同行取材をちらつかせながら報道内容の取り消しや取材源の開示を要求したことによって、他のメディアへの見せしめとしての効果は大きい」と危惧(きぐ)する。

 田島泰彦・上智大教授(メディア法)も「報道内容が政府にとって気に入らないからと言って、取材の機会を奪うのは明らかに不当だ。政府を監視するのがメディアの役割であり、他社も一致して戦わなくてはならない」と指摘する。

 大石泰彦・東洋大教授(メディア倫理)は「政府に都合の悪い報道をするメディアが存在することが健全な民主主義社会だ。政府が政治目的追求のために特定のメディアを排除することは民主主義国ではあり得ない」と断じる。

 ジャーナリストの桜井よしこさんは「小泉政権は憲法が保障する自由な言論や報道に対する認識が全くないのではないか。取材源の秘匿は、これまでの政権も尊重してきた報道・取材ルールで、今回の日テレ外しはこれを大きく逸脱するものだ」と批判している。

毎日新聞 2004年5月18日 23時38分

官房長官 一転、認める方向

日テレ訪朝同行取材拒否

 細田博之官房長官は十九日午前の記者会見で、二十二日の小泉純一郎首相の北朝鮮訪問をめぐり、日本テレビが同行記者団から排除された問題について「北朝鮮は日本の報道機関に開放されておらず、(政府の)特別機での同行報道しか道がないことを勘案し、善処したい」と述べ、最終的に同社の同行を認める方向で調整していることを明らかにした。

 この問題では、日本テレビが内閣記者会に行った説明によると、同社が十六日に放映した「二十五万トンのコメ支援で最終調整」との報道に対し、飯島勲・首相秘書官が「取り消さなければ同行を認めない」と要求。情報源開示も求めたが、同社はいずれも拒否した。

 細田長官は記者会見で、同行拒否が首相の指示だったかどうかについて「そういうことはない」と否定した。

 同行を拒否した理由については、「非常に重要な首脳会談を前に、(北朝鮮から)『ここまではいただき。もう一歩』ということになりかねず、強く言ったのではないか」と指摘。情報源開示を求めたとされることについても「確定的なニュースだったから、『だれがそんな確定的なことを言ったのか』というやりとりになりがちだ」と釈明した。

東京新聞 2004年5月19日