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イラクからの最新撤兵状況

(詳細報告)

青山貞一

掲載日:2004.4.14〜 As of 2006.8.25
独立系メディア E−wave Tokyo 無断転載禁



関連ブログ
青山貞一:正当性なき米国のイラク攻撃(2003年1月執筆)
青山貞一:エネルギー権益から見たアフガン戦争(2002年9月執筆)


最新撤兵状況(表参照)

 2005年12月、東欧からイラクに派兵していた有力2カ国、すなわちウクライナとブルガリアが本格的な撤兵を開始した。

 まずブルガリアだが、ブルガリアは今まで400人規模の部隊をイラクに派兵していた。しかし、イラク国内の戦闘などで13人が死亡し、国内で派兵に対する反対世論が高まっていた。

 一方、イラクに1600人規模の部隊を出兵していたウクライナだが同国大統領が、イラク駐留のウクライナ軍について、段階的な撤兵を示唆した。ウクライナは、すでに200人の削減とを定めている。ちなみにウクライナ軍は、イラク南部で平和維持部隊など8人名が死んでいる。

 さらに、イタリアも昨年9月の300人規模の撤兵に続いて、今年1月に300人規模の部隊を撤兵させる。また韓国は、3260人をイラクに駐留させているが、2006年の前半から駐留数を削減する見込みである。

 米国のイラク侵攻の主たる理由が、イラクに豊富に存在する石油資源の権益確保にあるのではと、国際世論に揶揄され、もともと出兵させる大義名分、すなわち大量破壊兵器の存在が国内の要人、調査機関からことごとく否定され、米軍占領下でのイラク情勢が泥沼している。

 そんな中、イラクに派兵したいわゆる「有志連合」38カ国中、すでに11カ国が完全撤退し、残りの国も段階的に撤兵する状況にある。現在残りの派遣国は、18カ国、そのうちカザフスタン、韓国など数カ国は撤兵を考慮中であり、今年中に、当初派兵した38カ国の半数となる可能性も高い。

 Source:World Factbook

<参考>2005年8月までの派兵状況

 以下は2005年夏時点でイラクに軍隊を派兵している国及びその派兵数の概要である。
 
 当初軍を派兵していた東欧、アジア、欧州諸国のなかで、その後、国内世論との関連で撤退した国が増えている。さらに今なお軍の撤退を検討、考慮している国も多い。アフリカ及び南米の国は一国も派兵していない。またいわゆるアラブ、中東諸国からの派兵もない。

 今後、オランダ、ハンガリーが2005年3月末を目処に撤退することを決めている。また、イタリア、ポーランド、ノルウェー、ポルトガル、チェコ、モルドバ、ウクライナ、ブルガリアなど欧州からの主要派遣国や中央アジア諸国でも、国内世論との関連で05年内に撤退する国が増えるものと推定される。

 いずれにしても、イラクに派兵した国々は、最も多いときでも世界全体の1/5程度であり、ブッシュ大統領やラムズフェルド国防長官が強弁するほど国数が多いわけではない。さらに以下の表を見れば明らかなように、イラクに軍を派兵している国でも、派遣数が100名以下が多いのも特徴である。

 同時に、派遣している国の多くは東欧や中米等の小国が多く、いわばつきあいないし米国からの要請を受けイラクに軍を派兵することによって、米国からの経済、軍事援助を期待する向きも多かったと推察される。

 しかし、当初、米国からの援助を受けることを派遣の見返りと考えてきた東欧諸国も長引く派遣と、イラク国内での治安の極度の悪化、人質拉致など、リスクの大きさに見合う米国からの援助が期待できないこともある。

 多国籍軍とは言っても、数の上からの実態は、米英軍があくまでも中心であることに変わりはない。

 今後、イラク議会選挙との関連で、シーア派とスンニ派など派間での紛争が激化し、治安が一段と悪化する可能性も高い。05年内に派遣国数が10カ国以内となる可能性もないとはいえない。

 そして2005年8月、イタリア政府は、9月に開始する予定だったイラク駐留イタリア軍の一部の撤退を1カ月繰り上げ8月から始めると報じた。

 さらに、政権交代によりイタリアは2006年秋までに完全撤兵することになりそう!



●イラクからの最新撤兵状況
 2006年1月2日現在
国名 イラク戦争
不支持世論(%)
派兵・撤兵状況 派兵数
(1) (2) 軍派兵有無 撤兵可能性有無
欧州
ドイツ 87 52
ノルウェー     87 34 撤退
ギリシア      86 77
フランス      86 29
オーストリア    85 73
スイス       83 59
スウェーデン    81 53
オランダ  80 29 撤退
イタリア      79 33 秋までに撤退
フィンランド    78 66
ベルギー     78 40
スペイン      77 43 完全撤退
アイルランド    77 42
デンマーク     76 26 510
ポルトガル     72 36 撤退
ハンガリー     71 56 撤退
イギリス      68 15 2007年中に
半分撤退
8530
ポーランド     63 42 撤退予定 2500
チェコ      61 27 考慮中 100
ロシア
セルビア・モンテネグロ
ボスニア・ヘルツェゴビナ
ルクセンブルク
アンドラ
リヒテンシュタイン
モナコ
バチカン
マルタ
スロバキア 102
ルーマニア 730
ラトビア 133
リトアニア 120
エストニア 47
モルドバ 撤退
ウクライナ 撤退開始
ブルガリア 完全撤退
アルバニア 71
マケドニア 28
アジア州
トルコ
パキスタン
インド
スリランカ
インドネシア
東チモール
ネパール
モルディブ
バーレン
サウジアラビア
シリア
イスラエル
ブルネイ
アラブ首長国連邦
イラン
イエメン
クウェート
オマーン
キプロス
カタール
パレスチナ
ミャンマー
ラオス
ヨルダン
ブータン
マレーシア
ネパール
バングラデッシュ
中華人民共和国
中華民国(台湾)
タイ 完全撤退
フィリピン 完全撤退
韓国 撤退考慮中 3600
モンゴル 180
日本 陸上自衛隊撤退 ??
カザフスタン 考慮中 25
グルジア 160
アゼルバイジャン 150
シンガポール 削減中 33
北米州
カナダ
メキシコ
パナマ
ジャマイカ
ハイチ
バハマ
キューバ
トリニダードトバコ
セントルシア
コスタリカ
ガテマラ
バルバドス
グレナダ
セントクリストファー・ネイヴィース
セントビンセントおよびグレナディーン諸島
ドミニカ国
ドミニカ共和国 完全撤退
ホンジュラス 完全撤退
ニカラグア 完全撤退
エルサルバドル 考慮中 880
米国 138000
大洋州
キリバス
ソロモン諸島
ツバル
ナウル
サモア
バヌアツ
パプアニューギニア
パラオ
フィージー
マーシャル諸島
ミクロネシア連邦
ニュージーランド 完全撤退
オーストラリア 900
トンガ 44
アフリカ州
南米州
欧州各国の米国によるイラク戦争への世論調査結果
出典:梶村太一郎、イラクを見るヨーロッパの眼  週刊金曜日2003.2.7号

凡例

(1)国連安保理の承認なしの戦争に反対
(2)国連安保理の承認があっても戦争に反対
とする世論調査結果
数字がない国は政府の姿勢のみで同様の世論調査は不明
2003年2月3日現在