非常ブレーキ直前減速せず
特集「 尼崎JR脱線事故 」
神戸新聞 2005/05/19
事故を起こした快速電車七両目に搭載されていたモニター制御装置(国土交通省航空・鉄道事故調査委員会提供)
尼崎JR脱線事故で、事故車両から回収された「モニター制御装置」の解析から、現場カーブ(緩和曲線)手前で非常ブレーキを作動させた際の快速電車の速度が、記録が残る五秒前からほとんど変わっていなかったことが十九日、兵庫県警尼崎東署捜査本部などの調べで分かった。同本部は高見隆二郎運転士(23)=死亡=が、常用ブレーキを作動させたが思うように減速せず、カーブ目前で一気に非常ブレーキをかけた可能性もあるとみて捜査を進めている。(1面参照)
モニター制御装置は通常、非常ブレーキ作動の前後各五秒間の速度などのデータを記録する。捜査本部などが、事故を起こした快速電車の五、七両目から回収した同装置を解析した結果、カーブ手前約三十メートルで非常ブレーキが作動、直前の速度は百八キロだったとするデータを主に五両目の装置から検出。さらに調べたところ、非常ブレーキ作動五秒前から作動時までほとんど減速していなかったことが新たに分かった。
同乗していた車掌(42)の供述などによると、電車はカーブ北側にある名神高速道路高架橋手前まで制限速度の百二十キロ程度で走行していたとみられる。捜査本部は、常用ブレーキをかけるポイントが遅れ、十分に減速できないままカーブに迫ったため、高見運転士が一気に非常ブレーキをかけたことも考えられるとして、分析を急いでいる。
一方、同装置には非常ブレーキ作動後五秒間の速度などのデータが残っていなかったことも判明。非常ブレーキは通常、一秒間に時速約三・五キロ減速するとされるが、電車が傾き片輪走行になっていたとすれば制動効果は不明という。
捜査本部などは、ブレーキ作動後五秒以内に電車が脱線、あるいはマンションに激突するなどした衝撃で、電気系統などに何らかのトラブルが発生、データが消えたとみて、メーカーなどに鑑定を依頼、詳細なデータの解析を進める。
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