長野県環境保全研究所 就任挨拶 青山貞一 掲載日:2004.4.9 |
青山所長着任あいさつ 昨年11月頃、田中知事から2つの研究所を統合し新しい研究所をつくるので、初代所長に就任をお願いしたいとの依頼があった。固辞したが、大学卒業後40年弱、
環境研究、環境問題の解決にかかわってきた者として、最後のご奉公と思い、受けた。
私のミッションは、環境分野で社会正義を実現すること。国際的視野をもちながら、同時に第三者的立場の研究者として環境問題の現場に積極的に関わることにある。
私は工学の出身だが、環境分野では科学、工学からはじめ、現在、大学では環境法や公共政策を教えている。ここ数年、国の議員提案の法律の策定や環境訴訟にも多くかかわってきた。これまで、国、自治体、事業者を相手にした訴訟では、20回ほど、証人として証言している。
環境研究は仮にひとつの専門分野から出発したとしても、それを越えて社会の他の分野にも関わっていかなければいけない。また、もとより「研究のための研究」であってはいけない。これは国立、公設、民間を問わず言えることだ。
自然保護問題と衛生公害問題を分けて考えるひとがいるが、これは明らかに間違っていると思う。自然は汚染の浄化や二酸化炭素の削減に深く関わっているし、湖沼や河川など水系の魚類はゴミ焼却や農薬によって生ずる有害化学物質によって汚染されている。その意味で、安茂里と飯綱の双方が共同で行う研究を立ち上げたい。里山、流域に係わる問題はその重要な柱だと思っている。
皆さんご存じのように、長野県は未曾有の財政危機にある。民間以上に、研究に際し費用対効果を意識して欲しい。私の経営している会社では、ダイオキシンや重金属などの検査をカナダの会社にサンプルを送ってやっているが、当初、市場価格の半分から3分の1、しかも他の機関がやっている検査よりも早く結果を出した。
研究員の皆さんは、やりたいことがあったらどんどん私に言って欲しい。所長特認研究という形で私と一緒に研究してもらうことも考えている。お金の面では制約があるかもしれないが、本当に必要なものについては予算的措置も考えたい。
さらに公務員という立場でやるとやりにくい研究もあったかもしれないが、これからは基礎的な研究、ルーチン分析だけでなく、社会的に問題提起ができるようなテーマを、自信を持ってやって欲しい。
「脱ダム」は重要な考え方。そのための具体化するための研究もやってみてはどうか、と思っている。
さらに、研究員はプレゼンテーション能力をつけて欲しい。県民の前で自分の言葉で説明できること。私は、これまで何度もテレビにも出演して社会に訴えかけてきたが、唯我独尊の研究では何にもならない。たえず社会との接点をもって欲しい。そのためにはマスコミともつきあえなければならない。
さらに衛生公害研究所では人の健康や食品に関することを検査・研究しているが、それだけではだめだ。社会的な活動に結びつくような研究を行っていかなければいけない。
自然保護研究所の「研究のための研究」しかしていないという評価については、「誤解だ」という意見も昨日もらったが、今後真実がどうなのか確かめたい。
田中知事とは、知事になる前に、愛知万博の「海上の森」の計画について、中村敦夫参議院議員と一緒に反対の意見書を出したときから付き合っている。
私は、田中知事は類稀な政治家だと思う。こういう知事のもとで仕事ができるということは、非常に貴重な経験だ。
私の環境保全研究所長への就任は、けっして名義貸しではない(名前だけの所長ではない)。環境保全研究所の所長としてしっかり職務を遂行する。
世界を舞台にした研究も歓迎だ。私は、過去2年くらいの間に、外国で行われる学会には毎年出席し、ダイオキシンの関係で発表も行っている。これから、可能なら所員にも一緒に出席してもらい、一緒に発表してもらってもよい。
私は、環境NPOも運営しており、会員には小学生から環境省の課長補佐まで様々な人がいる。夏に飯綱庁舎の方で、会員を集め、泊りがけで会議を開催し、研究所で行っている研究の発表が行なえればと考えている。
そのうちに、研究員の皆さんがどのような研究をしているのか、パワーポイントなどで10分程度、ひとり一人から発表をいただきたい。業務の中で行っている研究の内容でもよいし、個人的に行っていること、これからやってみたいことなどでもよい。
一緒に会社を経営している「池田こみち」さんにも、一緒に話を聞いてもらいたいと思う。
安茂里庁舎の施設が古い。飯綱庁舎と比べると特にそう感じる。建て替えも考えたいところだが、来ていきなりそういうことを言うと、青山はいきなり箱モノを造ると言ってはやし立てられるかもしれない。
わたくしは、このようにざっくばらんな人間なので、何でも相談して欲しい。
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