エントランスへはここをクリック!             

戦火イラクへの自衛隊派遣の大きなツケ

〜日本政府の主体的判断で救済は可能〜

青山 貞一

掲載日:2004.4.8、 4.10改訂

 2004年4月8日(日本時間)、アルジャジーラは日本人3人が人質になり、3日以内に自衛隊のイラクからの撤退がなされない場合、拘束した3人を殺害すると報じた(以下の各社記事参照)

 朝日新聞 毎日新聞 読売新聞 産経新聞

出典:ともにアルジャジーラTV

(毎日新聞)2004年4月8日
<イラク>日本人3人が人質に 自衛隊が撤退しなければ殺害
カタールのアラビア語衛星テレビ「アルジャジーラ」は8日、イラク国内で日本人3人が人質として身柄を拘束されたと放送した。拘束したイラク国内のグループは、自衛隊が撤退しなければ殺害するとしているという。同テレビは今夜中に3人の映ったビデオを放送するとしている。

 8日夜、日本政府や報道機関は、拉致したグループの「下手人探し」に右往左往、やっきとなっている。だが、言うまでもなく、現下のイラクは戦時下にある。

 3人拉致の前々日、シーア派サルド氏らがイラク各地で武装蜂起、前日にサマーワの自衛隊駐屯地近くに砲弾3発がうちこまれた。これに象徴されるように、現在のイラク全土は間違いなく「戦火」「戦時下」にある。私たち日本人は、まず現状を冷徹に把握し、状況を認識しなければならない。

 マスコミは誰が人質の犯人か、どうやって犯人にコンタクトするか、救出方法は、米軍とどう連携するかと言った日本政府の対応ばかりを論じている。マスコミが本来、論陣をはるべきは、自衛隊イラク派兵の大前提がここ数日の大きな出来事だけをとっても明らかに崩れている現実ではないか。

 その上で、マスコミは日本政府にいち早い自衛隊の撤退要請の論陣をはるべきである。3人を拉致した者を探し出すのは容易ではなく、仮に探し出せたとしても交渉は容易ではない。だが、自衛隊の撤退は日本政府自らの判断で可能であるからだ。

 今更言うまでもないそもそも、日本の自衛隊がイラクに派遣された大前提は、派遣地が「非戦闘地域」であることである。

  
◆イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法

 第二条 政府は、この法律に基づく人道復興支援活動又は安全確保支援活動(以下「対応措置」という。)を適切かつ迅速に実施することにより、前条に規定する国際社会の取組に我が国として主体的かつ積極的に寄与し、もってイラクの国家の再建を通じて我が国を含む国際社会の平和及び安全の確保に努めるものとする。

2 対応措置の実施は、武力による威嚇又は武力の行使に当たるものであってはならない。

3 
対応措置については、我が国領域及び現に戦闘行為(国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷し又は物を破壊する行為をいう。以下同じ。)が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる次に掲げる地域において実施するものとする。

一 外国の領域(当該対応措置が行われることについて当該外国の同意がある場合に限る。ただし、イラクにあっては、国際連合安全保障理事会決議第千四百八十三号その他の政令で定める国際連合の総会又は安全保障理事会の決議に従ってイラクにおいて施政を行う機関の同意によることができる。)

二 公海(海洋法に関する国際連合条約に規定する排他的経済水域を含む。第八条第五項及び第十四条第一項において同じ。)及びその上空


 今回の事件で最も恐れることは、奥大使射撃事件同様、完全に問題のすり替えが起きつつあることである日本人の拉致問題が起きたからと言って、大局的判断を見失ってはいけない。あくまで問題の本質は、「戦火」「戦時下」のイラクへの自衛隊派兵にある。

 日本政府はイラク特措法の主旨からして、戦火のイラクへの自衛隊からいち早く撤退すべきなのである。戦火であるイラクから自衛隊を撤退させず、人道支援の名の下にイラクに自衛隊を駐留させ続けることは、論理矛盾であり、日本国民の利益にも反するのではないか。

 すでにスペインのみならず、オランダ、ポーランド、ホンデュラスなどの国々がイラクからの軍隊の撤兵を検討している。これはテロに屈することではない。もともと、一方的に他国=イラクに侵略戦争を行ってきた米国のツケが、米国に追随する諸国に回ってきたことを意味する。

 私見では、今回の拉致は日本の自衛隊派兵に対する一大攻撃の端緒にすぎないと思う。もともと何ら正当性のない米国のイラク攻撃に追随し、「戦火」「戦時下」のイラクに自衛隊を派兵した日本政府の大きなツケがまわってくるはずである。
  
 日本政府が憲法はもとよりイラク特措法にも違反する自衛隊の早期撤退に応ずることなく、万一、日本の民間3人が殺害された場合、全面的に責任を負うべきは言うまでもなく日本政府である。奥大使問題でもそうだが、日本政府や大マスコミによる問題のすり替えは許されない。

 問題解決の本道、本筋は、間違いなく自衛隊のイラクからの撤退であり、それ以外にはありえないと考える。

 ここ1両日は、拉致された3人が、日本に台頭してきた新たな国家主義の犠牲になるかどうかの瀬戸際にある。

 与党、とくに公明党は、元来、非戦、福祉、環境を3大政策としているはずである。公明党支持者の多くは、もともと自衛隊のイラク派遣に反対していた。公明党は自分の意志で政府及び自民党に対し、イラクから自衛隊の撤退を要請すべきである。