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ホリエモン事件の
今後の行方

青山貞一

2006年1月24〜27日

 ところで、東京地検特捜部がホリエモンらを逮捕した容疑、理由は、まずは証取法違反、すなわち偽計取引や風説の流布であえる。偽計取引や風説の流布とは、相場の変動などを目的に、株などの売買で人をだましたり、株などに関して事実に基づかない情報を流したりすることである。

 これは今回のホリエモン事件同様、株価のつり上げを狙って行われることが多い。市場の健全性、信頼性を阻害するとして、証券取引法158条は暴行や脅迫などとともに、不公正な取引として禁じている。罰則は5年以下の懲役または500万円以下の罰金である。

 しかし、これはどうもホリエモン事件の犯罪理由のとばくちにすぎないようだ。

 本丸はと言えば、それはどうもライブドア本体による数々の粉飾決算ではないかと思われる。

 粉飾決算は、会社の業績を実態以上によく見せるため、経理内容に操作を加えた決算をさす。虚偽の決算を有価証券報告書に掲載すると、証券取引法違反の罪(5年以下の懲役または500万円以下の罰金)に問われる。

証券取引法全文
第八章 罰則 第百九十七条
次の各号のいずれかに該当する者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

 粉飾決算に基づき配当した場合は、商法の違法配当罪(同)にも該当する。信用維持や資金調達、経営陣の保身などが目的のケースが多く、架空の利益や過大評価した資産を計上したり、損失を少なくしたりする手口がよく使われる。

 昨年摘発されたカネボウ事件では、監査法人の公認会計士が共犯として起訴された。

 たとえばホリエモンは、ライブドアの前身、オン・ザ・エッジの全株式を掌握するため、詐欺まがいの方法で株を譲り受けていたらしいのだ。正規の役員会を経ずにライブドアの数々の衛星企業を増殖させてきた疑いもある。

 実際には黒字となっているライブドア衛星企業を帳簿上の操作によって赤字に見せかけ脱税してきたのではないかと言う容疑、さらに、上記の粉飾決算にからむ違法な配当は背任にあたるのではないかと言う容疑も浮上している。
 
 以上の具体的容疑内容については、以下の記事を参照のこと。

証券取引法違反容疑 出典:サンスポ060123

(1)関連会社「バリュークリックジャパン」(現ライブドアマーケティング)が平成16年10月、既にライブドアが出資する投資事業組合が現金買収していた出版社「マネーライフ」を、新たに株式交換により買収するように装って発表(偽計取引)

 (2)同年11月、バリュー社の売上高や利益を水増しした決算短信を発表(風説の流布)。これらによりバリュー社の株価をつり上げ、投資組合を通して株売却益をライブドア本体に還流させたとみられる

 (3)ライブドア本体の16年9月期決算で、実質的に傘下にあった消費者金融「ロイヤル信販」(現ライブドアクレジット)など2社との架空取引で利益が上がったように偽装。10億円の赤字を14億円の黒字に粉飾した疑い。13年以降に株式分割を繰り返して株価を高騰させ、その前後に実施した計18件の株式交換による企業買収で、数十億円の株売却益を本体に還流させたとされる


 いずれも、ライブドア関連企業の幹部であり公認会計士、税理士、さらに外部監査法人を巻き込んでの経済犯罪となる可能性が大だ。

 すでに逮捕されたホリエモンの容疑が証券取引法や商法などで立件され起訴たとすれば、すでに東証社長がいくどとなく言明しているように、ライブドアなどの東証の上場は廃止される。証券取引法違反はすでに述べたように5年の禁固刑もある。

 オウム事件同様、麻原がいくら黙秘したとしても、部下が本当のことをゲロすれば、膨大な証拠を含めホリエモンの有罪は免れない。否認を続ければ、執行猶予もつかず、実刑判決が下される可能性は大きい。

 すでに株バブルの様相を呈している日本社会である。

 一部の評論家は、今回の一件は、株式市場には限定的な影響しかないなどと言っている。果たしてそうであろうか?

 ライブドア株に象徴される昨今のITバブルは、何ら実体がないいわば株式資本主義、すなわちITと言いながら、その実は、悪質金融業らによる実質違法な「錬金術」的な側面が強い。

 前回のバブルが不動産バブルであるとすれば、今回の日本のバブルは、一方で破竹な勢いで経済成長を遂げるお隣の中国や米国の不動産バブルによるところもあるが、日本経済そのものがマネーゲーム、すなわち実体のない金儲けに狂奔しているところが大きい。

 ライブドアなどIT分野では一般投資家が多いのが特徴く、ライブドアの一件で、1週間のうちに億単位の大損した投資者も多いはだ。いずれにしても、泡沫のいんちきバブルに、ひとびとが目を覚まさねばならない。


 ライブドア事件と今後の株市場について、大前研一氏は米国を例に次のように述べている。

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 さらに株式市場は、今後どう変化していくのか。企業の不正で記憶に新しいのはエンロン事件です。企業買収や株価操作が絡み、トップ三名が逮捕されて世界有数の会計事務所、アーサー・アンダーセンが崩壊。

 記憶に新しいのはエンロン事件です。企業買収や株価操作が絡み、トップ三名が逮捕されて世界有数の会計事務所、アーサー・アンダーセンが崩壊。

 不正が次々に露呈して派手な終幕を迎えたエンロン事件以降、米企業は一様に大人しくなりました。イケイケで突き進めば内部告発を生む。誰もがしおらしくなり、元気を前面に出す人がいなくなる。

 現にエンロン事件以降、アメリカの株価はいっこうに上がっていません。なかにはgoogleのような成長企業もありますが、輪をかけて落ち込むところのほうが多い。ライブドアの一件も同じような状況を生むトリガーになる可能性はあります。

 そもそも、マスコミを含めた市場が能天気に舞い上がっていたことは確かです。今後は当たり前のことですが、良い会社は伸びて悪い会社は落ち込む、ということが顕著になり、市場内で再配置が行われていくと思います。


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 大前研一 『 ニュースの視点 』
                        2006/01/27#98