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ホリエモン重用の
社会的責任

青山貞一

2006年1月22日〜27日

 1月23日夜、ホリエモンの逮捕とともにライブドア本体への東京地検特捜部による本格的捜査が始まった。

 その途端、昨年の衆院選挙などでホリエモンをさんざん利用そして重用してきた政治家、政党やマスメディアが、まるで手のひら返したようにホリエモンとの関係を否定しまくっている。 衆院広島第6選挙区に竹中平蔵、武部均ら自民党の”大幹部”がホリエモンの選挙応援で入ったのは、紛れもない事実である。

まさか、これをわすれたわけではあるまい!

 ホリエモンをもっとも重用したのは言うまでもなく、自民党の小泉首相とその側近である。小泉首相は選挙前にホリエモンのことを次のように語っていた。すなわち、「新しい時代の息吹を日本の経営に与えてくれる」人材などと。

 武部幹事長は、ホリエモンの似顔絵をホリエモンにプレゼント。ホリエモン自身が武部議員の記名入りで自分の年賀状の図柄に堂々と使っていたことも明らかになっている。しかも、武部幹事長は、衆院選挙でホリエモンを「自分の息子だ、弟だ」と持ち上げていたではないか。

 一方、竹中平蔵議員は、武部幹事長のような浪花節的な道義的責任論では到底すまない。

 この点について日刊ゲンダイの1月27日号一面は、いみじくも次のような批判を連射している。

日刊ゲンダイ 2006.1.27号 一面記事 

...........

  ライブドア事件に小泉政権は知らん顔を決め込んでいるが、今回の事件を引き起こした張本人は誰か。

 アメリカかぶれの市場原理主義を日本に持ち込んだ曲学阿世の徒、竹中平蔵その人だ。

 竹中は総選挙で散々、堀江を持ち上げた責任回避に必死だ。24日の会見では、「党の要請を受けて応援に赴いただけ。今回の問題と小泉構造改革を直接結びつけるのは誤り」と居直った。

 だが、選挙の公示日に堀江の選挙区に入り、「小泉・ホリエモン・竹中の3人で改革をやり遂げる」とアピールしたのは、どこの誰だったか。

 堀江も竹中とはウマが合ったとみえて、昨年暮れのTV番組で「ポスト小泉は誰?」と聞かれて、即座に「竹中さんでしょ。考え方がいちばんいい」と答えていた。2人は同じ穴のムジナも同然なのだ。

 もっとも、竹中の罪状の重さは、ホリエモン応援の道義的責任だけでは済まない。

 小渕・森・小泉と3代にわたり経済ブレーンとして内閣に潜り込み、経済はカラッキシの3バカ大将を口八丁手八丁で操ってきた。

 小渕内閣では「経済戦略会議」の一員として、70兆円の財政バラマキを正当化。森内閣では「IT戦略会議」を立ち上げ、ITバブルを引き起こした。その間、ライブドアのお家芸となった株式交換や株式分割の規制を次々と撤廃していったのだ。

 神奈川大名誉教授の清水嘉治氏(経済学)が言う。

 「竹中氏は緩和政策を求める米国の意のままにマーケットの法規制を次々と撤廃してきました。

 今回、ライブドアが悪用した投資事業組合の制限を04年に撤廃したのも小泉・竹中コンビです。ユルユルになった法の網の目をかいくぐり太ってきたのが堀江氏であり、巷に跋扈する怪しげなIT長者や株成り金たちです。

 竹中氏が唱えた『貯蓄から投資へ』のスローガンで、マネーゲームに引きずり出された多くの個人投資家は、彼らの“いいカモ”にされてきた。

 そうした政策のツケが今度の事件で一気に噴出した格好です」 竹中の責任の重大さは、堀江を担ぎ出したアホ幹事長の比ではない。即刻、辞めさせなければ、第2、第3の錬金術師を生み出すだけだ。 .........

 表現は辛らつだが、言っていることはその通りではないのか!

 現地応援にこそいかなかったものの、小泉首相は自民党本部でホリエモンと会っている。

 その小泉首相だが、東京地検特捜部がホリエモンの家宅捜索を行った直後の会見で何を言ったかこそ問題だ。小泉首相は、「採用した社員が不祥事を起こしたら、採用は間違っていたと言えるのか」と、いつものように意味不明なことではぐらかしている。

 もっぱら、採用した社員がホリエモン、そのホリエモンを採用したのが小泉首相であるとしたら、その採用されたホリエモンが不祥事を起こした場合の責任が採用者である小泉首相にあることは、誰の目にも明らかではないだろうか。そもそも、今回の一件は単なる不祥事ですまされるものではない。

 すなわち、大々的にホリエモンを重用し、選挙において客寄せパンダとして使ったのが自民党である。しかも、自民党が歴史的大勝をしたあの選挙から半年も経たない今、ホリエモンはといえば自民党がこの間進めてきた米国流の過度な規制緩和を悪用した錬金術により犯した重大な経済犯罪容疑者として逮捕されたのである。

 自民党流の過渡な規制緩和がまたたくまに、弱肉強食と拝金主義的経済社会を作り出したとすれば、その申し子がホリエモンであることは間違いない。

 これは、ホリエモンのライブドアを入れた経団連についても同じだ。今回の事件で経団連奥田会長の歯切れもすごくわるくなっている。

 
一方、テレビ、新聞等の大マスメディアも同罪である。マスメディアは小泉政権とともに、無過失連帯責任を追うべき立場にある。

 大メディアは昨年の衆院選挙の前後で、まんまと小泉首相がくりだす「刺客」戦略に乗せられた。連日連夜、ただ郵政民営化に賛成すると言うだけで、ホリエモン対.古い利権誘導タイプの政治家、亀井静香議員と言うシナリオを演出した。

 ホリエモンをヨイショする映像をこれでもかと流したのは、記憶に新しい。大メディアは当時自分たちが流した映像や記事を見て欲しい。テレビ各局のバラエティー番組や情報番組に節操を求めること自体、無理なことだろうが、よくもまぁ、イケシャーシャー.....と、手のひらを返したように、ホリエモンを批判できるものだ。そもそも、今回東京地検が行っていることは、マスメディアが先陣を切って調査し、報道すべきことではなかったのか。

 各テレビ局はバラエティー番組などで選挙の前後、ホリエモンを単なる視聴率稼ぎで追いまくっていたが、逮捕後はそのとき撮影した映像フィルムを、犯罪者の生い立ちや実像などと言って、使いまくっている。いずれにしても、小泉政権と大メディアの責任は免れない。

 いずれにしても選挙でホリエモンを重用した自民党と「郵政民営化」と「改革」と言うワンフレーズで、自民党の広報機関と化してきた多くのテレビやメディアの責任は計り知れない。

 ホリエモンなどITバブルをつくっている大きな拠点、象徴として六本木ヒルズが毎日映し出されているが、その六本木ヒルズや赤坂、シオサイト、有明地区には、まさに大メディアの拠点が軒を並べている。

 選挙で多くの得票を得れば何をしても良いという政党の考えと、視聴率さえ稼げれば何をしても良いというテレビ局の考えは、無節操と言う意味で同罪である。

 上記について、最近のフランスの新聞、ルモンドに興味深い記事が掲載された。以下は、日刊ゲンダイ新聞からの転載。

日刊ゲンダイ 2006.1.26号

 逮捕されたライブドアの堀江について、「英米流の手法で業績を拡大したのは、小泉改革の進展と軌を一にしている」と分析、小泉ペテン改革が怪しげな錬金術師をのさばらせたと批判しているのである。

 これは小泉改革の正体をズバリ、暴露するものだ。

 金儲け至上主義の小泉改革が、モラルハザードを拡大させ、マネーゲームに走る堀江のような錬金モンスターを生み出したというわけだ。

 「『稼ぐが勝ち』と豪語するホリエモンはまさに小泉改革の申し子です。小泉政治の体現者と言ってもいい。昨年の総選挙では首相自らホリエモンの生き方に“お墨付き”を与えています。堀江と面談した小泉首相は、『君のような若者が政治に入ってくるのは素晴らしい』とホメちぎり、腰巾着の竹中総務相は『小泉首相、ホリエモン、私がスクラムを組みます』と持ち上げた。小泉改革とホリエモンはコインの裏表です」(政界関係者)

 評論家の内橋克人氏は朝日新聞(21日付)で〈堀江貴文氏と小泉政治はウリ二つの「合わせ鏡」だ。「努力したものが報われる社会を」と叫び続けた怪しげな政治スローガンの真意が、一獲千金の成り金や富裕層優遇を正当化するレトリックに過ぎなかったことが、ケタ違いの「報われ方」を享受したホリエモン錬金術によって暴露された〉と書いている。まさしくその通りだろう。 今回のホリエモン逮捕ほど小泉改革の本質を見せつけたものはないのじゃないか。



<参考:ITメディアバブルの発祥地!? 六本木ヒルズ>


元テレビ朝日所有跡地に立つITバブルの牙城六本木ヒルズ。
左がビジネス棟、右が住宅棟。ホリエモンは、右の住宅等に住み、左のビジネス棟にあるライブドア本社に出勤していた。
ライブドア概要
会社名 株式会社ライブドア(英文社名:livedoor Co., Ltd.)
本社所在地 東京都港区六本木6-10-1
主な事業所 東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー38階



出典:ライブドアマップ

六本木ヒルズが立地するこの場所は、その昔、港区材木町と言い、江戸時代材木問屋が集中した。テレビ朝日は、もともとこの材木町を拠点にテレビ事業を始め、後に六本木のアークヒルズにニュースステーションで有名なスタジオなどを諸施設を設置し、その間、材木町の土地をもとに森ビルと組んで再開発を計画、実施し、現在の六本木ヒルズが誕生した。

現在、テレビ朝日のスタジオや本社もこの六本木ヒルズの一角にある。六本木ヒルズは、日本のITメディア・コングロマリットと株バブル資本主義の象徴的存在となっていると言ってもよいだろう。