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ファルージャ惨殺の背景
「ファルージャで惨殺されたのは、ただの“民間人”ではない!」 
星川  淳

2004.4.4

ファルージャで惨殺されたのは、ただの“民間人”ではない!
 3月31日にイラクのファルージャでアメリカ人4人が殺され、その焼死体を住民が引きずまわしたり、鉄橋から逆さ吊りにしたりした悲痛な事件について、日本のマスコミは米国の「民間人」「ビジネスマン」「復興請負業者」などとボカした伝え方をしているようだ。けれども、新聞・テレビを含め海外ニュースでは、4人が占領軍暫定当局のブレマー行政官の身辺警護にも当たるブラックウォーター社という特殊警備会社の社員であることをはっきり報じている。4人を単なる「民間人」や「ビジネスマン」ととらえたのでは、問題の本質を見逃してしまう。被害者の冥福を祈るとともに、自衛隊派遣にも影響する事態をより正確に理解するために、いまわかる範囲で情報提供したい(星川淳)。

■ブラックウォーター社■
 「ブラックウォーター・セキュリティ・コンサルティング」という名称で、米国ノースカロライナ州に本部を置く広義の警備保障会社「ブラックウォーターUSA」の傘下5社の一つ。要人や重要施設の警護のほか、米軍や警察の特殊部隊、外国民兵組織などに武器と訓練を提供する。年収10〜20万ドル(1000〜2000万円)の高給により、現役・退役を問わず軍から引き抜かれた幹部・教官・社員が主力で、実態は民間軍事企業。米軍やFBIと連携した特殊任務も多く、イラクではブレマー行政官の警護も担当する。

[参考]
http://www.blackwatersecurity.com/
http://www.cnn.com/2004/US/South/03/31/civilian.deaths.ap/


■ファルージャ襲撃■
 公式発表では、襲撃されたときの任務は食料運搬の警護とされるが、車両に大量の武器が積まれていたとの報道もあって、真相は不明。現場で発見されたチラシには、イスラム過激派の名で、イスラエルによるパレスチナのハマス指導者ヤシン師暗殺に対する報復と書かれていたようだ。アメリカ側は海兵隊4000人を投入した強硬な平定作戦を検討中。イラク国民の占領への憎悪は、各地でいっきに高まる可能性がある。

[参考]
http://www.juancole.com/


■民間軍事企業――21世紀の傭兵?■
 この事件の背景には、米英が進める“軍事アウトソーシング”ないし“戦争民営化”とも呼ぶべき方針がある。正規軍に同行して兵站・給食・技術サービスなどを提供する民間企業社員は、湾岸戦争時の兵士100人に1人から、今回のイラク戦争では兵士10人に1人まで激増したといわれる。戦闘終了後の占領にともなう警護サービスも、この現代の傭兵ビジネスの一端で、米英のほか南アやチリからも相当数の私兵が参入している。

 最大の問題は、正規軍と違って国際条約やROE(交戦規則)に縛られないため、誤った行動などによる被害の責任を問われず、また死傷者が出ても“企業秘密”の名目で正式な犠牲者にカウントされないこと。自国兵士の被害が最大のダメージとなる政府としては、国民に犠牲の少ない戦争と見せかけることができる。もしこうした軍事企業関係者の被害を加えれば、イラクの米側死者数は現時点で600人をはるかに上回っているだろう。

 さらに、ブラックウォーター社員の高給が示すとおり、表向きの戦費支出が節約できるように見えて、じつは国庫や国際的な復興援助供出金から民間企業に莫大な資金が流れ、むしろ費用対効果が低下しかねない(燃料や給食で不正請求したハリバートンが好例)。軍からこれら民間軍事企業への人材流出も問題化しつつある。

[参考]
http://www.zmag.org/content/showarticle.cfm?SectionID=15&ItemID=5256
http://www.workingforchange.com/article.cfm?itemid=16701
http://www.findarticles.com/cf_0/m1181/1998_Fall/56021075/p1/article.jhtml?term=David+Shearer