松林局長の「記録提出」経緯を独自検証 〜事実が隠蔽され弁明機会さえない百条委!?〜 青山貞一 掲載日2005年12月29日 |
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長野県議会の百条委は、調査項目に関する資料として2003年10月と2005年2月から3月分につき松林憲治・経営戦略局長に手帳の提出を要請していた。 2005年12月26日、百条委員会は、松林局長が該当するページに紙を張り付け、内容が見えないようにして提出したとして、地方自治法が禁じる記録の提出拒否にあたると認定した。松林局長は、前回、百条委への出頭拒否を百条委から認定されている。 以下はそれを伝える地元新聞、信濃毎日新聞の記事である。
上記の記事を読んだ大部分の読者は、松林局長は地方自治法が禁じた記録の提出拒否に当たると思うに違いない。 しかし、この間の経過を追って見ると、どうも信濃毎日が記事にしている内容とはかなり実態が違うことが分かる。逆に百条委と地元メディアが連携し、あるいは地元メディアが「提出拒否」に関連し、松林局長をことさら刑事告発の対象となるように誘導しているようにさえ見える。 本件に関連し、田中康夫長野県知事は、2005年12月28日の定例知事会見で次のように述べている。 「....私たちの経営戦略局長の松林憲治に関してですね、手帳のコピーの問題を今になって、問題をなさっているようなんですけれどもね、まあある信濃毎日新聞かな、では松林局長は取材に対し、『どこを紙で覆うかはこちらの判断だ、弁明の機会も与えられず提出拒否と言われるのは不可解だと話した』というふうに書いてあるんですけれども、これは短い紙幅の中でお書きになったのかもしれないけれども、8月3日に手帳のコピーを松林局長は出している訳です。 8月10日にはそのコピーが原本と間違いがないか議員公舎に出向いて正副委員長立会いのもとで手帳を持参し、マスキングをした内容に関してもですね逐次説明をしている訳ですね。プライバシーの部分に関してもですね、何時に残業でタクシーに乗って帰って、料金がいくらであったということがここに記載してあるとかですね、そうした百条委員会に直接関係のない内容に関して全て述べている訳ですね。 コピーを実際に出してまた正副委員長が原本とコピーを確認をしているのにもかかわらず、提出拒否に当たるというのがですね、これが正に逆にじゃあ一体何が提出拒否に当たらないのかっていうことになる訳ですよ。 で、またこれ8月の段階の話が4箇月後の今になってですね、提出拒否に当たるというのもですね、何か正に百条委員会の混迷を物語るような話ですし、またその間に局長は計4回、6時間20分にわたって百条委員会に出てですね、きちんとご説明している訳ですから、その場においても4か月の間に何らかのその部分に関してご疑問があればですね、当然ご質問は行いえた訳ですよね。 にもかかわらずですね、今回のその部分に関しては、彼の弁明の機会というものが与えられずですね、当日いきなり採決をされているということは裁判所でもこのようなことはなかろうというふうに思います。 非常に不可解なことでして、強制力を持つ司法官憲でもですねこのようなことはあり得ないんじゃないかと。やはり逆にこれは重大なプライバシー侵犯の疑義が生まれてきてしまうということじゃないかと思います」 知事会見を要約すると、以下のようになる。 @今年の8月3日に手帳のコピーを提出しており、また8月10日には、そのコピーが原本と相違ないかについて、議員公舎に出向き正副委員長立ち会いの下、持参した手帳のマスキングした内容に関して説明をしている。 A例えば、プライバシーの部分に関し、この日は残業で何時にタクシーに乗って帰宅、料金は幾らであったと記載してある。 B公務の部分に関しても、百条委に直接関係の無い総務委員会の開催時刻が記載されていると正副委員長に説明している。 C松林局長が実際にコピーを提出し、また正副委員長が原本とコピーとを確認している。 Dにもかかわらず、議会が「提出拒否」に当たるとしている。 E今年8月の段階での話が突如、4ヶ月後の今になり、提出拒否に当たるというのもおかしい。 Fまた、それ以後、松林局長が計4回、時間にして約6時間20分にわり百条委に出頭し証言している。 Gしたがって、委員側が納得がいかなければ、その場で松林局長に説明を求めなかったのかも理解しずらいと思える。 Hでは、百条委は、一体どうすれば提出拒否に当たらないというのか。 ところで、12月26日に開かれた本件に関する百条委の採決では、正副委員長は採決には加わっていない。これは、上記@にあるように、議員公舎に出向き正副議長立ち会いの下、持参した手帳のマスキングした部分について局長が説明しているからではないかと推察される。 また松林局長は、百条委における記録提出拒否の認定が、局長当人に弁明の機会が与えられないまま、いきなり12月26日に採決されたことも、裁判所に準ずるとされる強力な権限を持つ百条委のやり方として、到底理解できないと述べているようだが、まさにその通りではなかろうか。 さて、冒頭に掲げた信濃毎日の記事は、知事会見における松林局長の一連の言動の経緯、事実経過、すなわち実態と大きくかけ離れていると思える。 具体的に言えば、信濃毎日は、知事会見の内容をメディアとして知りながら、あえて上記のように松林局長をいわば悪者とし、刑事告発の対象となっても仕方がないと言う記事を書いているのではないかと思われるのである。 もし、信濃毎日が知事会見で述べた内容を知らないと言うなら、地元最大のメディア、しかもこの百条委員会設置のきっかけをつくった記事を「スクープ」した新聞社が、会見に示される一連の内容を知らないことになり、それ自体きわめて不可解である。不作為と言われても仕方があるまい。 結論的に言えば、議会や地元メディアは、県民にタメにする議論、報道をしていると言われても仕方がないのではないか? これは地元メディアや反田中会派が価値判断を優先し、事実認識、いや事実そのものをないがしろにしていることに原因がある。 このことは同時に、メディアは肝心な事実を報道せず、特定部分を切り出して記事にすることで、松林局長の人権を意図的に侵害することになりかねないことを、強く認識すべきである。 |