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報道機関とのタイアップ(湾岸戦争)    青山貞一

掲載日:2004年3月27日

 報道機関とのタイアップと言えば、環境総合研究所は設立以来、NHK、TBS、日本テレビ、テレビ東京、テレビ朝日など、在京の全国ネット局はじめ新聞社からの依頼により、絶えず第三者的立場でコメントや行った自主調査の結果を情報提供してきた。

 何と言っても一番大きな報道機関とのタイアップは、平成3年1月、湾岸戦争が起きたときのことだ。

 環境総研は油井炎上にともなう大気汚染、そしてペルシャ湾に流出した原油による水質汚濁をコンピュータシミュレーションにより予測、結果を国会、環境庁、各国大使館などに報告するとともにマスコミ各社にも情報提供した。このときのテレビの報道数は100本を超えた。新聞、雑誌などを含めると数100本となったはずである。

 調査報道だが、湾岸戦争の終結直後、現地取材に出る直前、テレビ朝日ニュースステーションの調査報道クルーに大気汚染のディフュージョン・サンプラー(試料採取容器)を持参してもらい、現地で試料を採取してもらった。ニュースステーションのクルーの帰国後、東京再度で現地の汚染濃度を分析、その結果を翌日のニュースステーションが速報し、さらに後日、調査報道の番組を放映した。分析は東京都立アイソトープ研究所が行ってくれた。

 ニュースステーションとは調査報道などで数多くタイアップしたが、湾岸戦争の現地調査報道は、そのなかで最も思い出深いものとなった。以下のビデオは実際に放映されたものの約1/3版である。

  ビデオ(テレビ朝日)クウェート大気汚染現地調査

 ペルシャ湾に展開予定の海上自衛隊の掃海艇に乗り込むテレビ東京のディレクターにも、サンプラーを持っていってもらうい、UAEのドバイで大気汚染のサンプリングを依頼した。テレビ朝日の場合同様、帰国後、汚染濃度を分析しテレビ東京の番組「週刊地球クラブ」で速報した。以下のビデオは実際に放映されたものの約半分版である。

  ビデオ(テレビ東京)ドバイ大気汚染現地調査

 1992年、ブラジルのリオデジャネイロで開催された国連環境開発会議(UNCED)用に調査報告を英文としリオの現地で配布した。湾岸戦争では、欧米諸国は官民を問わずまともな湾岸戦争による環境影響や汚染実態の調査をしておらず、また英国気象庁のように調査をしていても結果を軍事機密を理由に、一切公表していないこともあって、私たちの調査結果は世界中の研究者にとって有用なものとなったらしく、国際的に大きな反響を呼ぶことになった。1000部印刷した英文概要版も数ヶ月でなくなった。

 ペルシャ湾における潮流予測の経験は、日本海でナホトカ号座礁事故が起きたときも大いに役に立った。それは「油塊」の流れには、潮流、海流の応力とは別に移送風と言って海上を吹く風の影響が非常に大きいことである。環境総合研究所大阪代表の大西行雄さんは海洋物理が専門、京大大学院の博士課程時代、この研究をしていた。そんなこともあり、この種の問題では、まっさきに大西さんに相談することにしている。湾岸戦争のペルシャ湾原油流出では、大西さんもマッキントッシュのPCを使い私たち東京グループとは別にシミュレーションを試みていた。まったくの偶然である。

 福井県の沿岸で船首から長期にわたって流れ出る重油が「油隗」なり、それがどう海流、潮流と移送風によって日本海沿岸域を流れるか、大西さんと連絡を取りながら継続的に予測しつづけた。

 その結果を潮流地図として連日、研究所のホームページに掲載した。

 同時に新聞各社からの取材にも応じた。その後、東京湾でダイアモンドグレース号が座礁、原油が流出した時も朝日新聞社からの依頼により新聞社のセスナ機を使い東京湾上空から油の流れを視察し、新聞紙上で青山の意見を述べた。

 とかく独立した第三者調査機関や政策提言が少ないと内外から批判される日本の研究機関のなかにあって、、環境総合研究所は設立以来、自主調査を行い、その成果を社会化することを使命と認識し現在に至っている。

 ビデオ(関西テレビ)研究者の国際貢献

 以下は湾岸戦争時に出た記事のごく一部だが、それぞれに記者との思い出がつまっている。

◆湾岸戦争関連報告・記事(一部)
湾岸戦争の地球環境への影響 〜まえがき〜 (自主調査研究報告書)1991〜1992
「ひと」湾岸戦争による環境破壊報告書をまとめた青山貞一さん 朝日新聞 1998年8月1日朝刊
ペルシャ湾への流出原油の影響/流出原油の環境影響
湾岸戦争と環境影響 公害研究,WINTER 1992(岩波書店)掲載論文より
この人に聞く:湾岸戦争被害を的確に予測(環境にパソコン駆使) 公明新聞 1991.5.12
日本政府調査と桁違い クウェート湾湾岸戦争大気汚染 朝日新聞 1991.12.20
クウェート大気汚染調査 各国調査公表わずか 朝日新聞 1991.12.24
クウェート:平年より最高18度も気温低下 サンケイ新聞 1991.5.11
クウェート火災:気温低下を予測 年平均最大2度 サンケイ新聞 1991.3.22
地球環境破壊を加速 環境総合研が湾岸による影響を予想 環境公害新聞 1991.1.30
有害物質、1日110万トン、地球規模の環境破壊も、環境総研試算 日経新聞 1991.1.28
戦闘機などの環境汚染、NOx排出、東京と同量 毎日新聞 1991.1.26