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長野県 廃棄物条例骨子 意見交換会 議事概要速報
   
(長野県松本市合同庁舎講堂)

掲載日:2004.5.10

2004年5月9日、長野県が進めている信州廃棄物の発生抑制と良好な環境の確保に関する条例(仮称)骨子案について、条例制定アドバイザーである梶山正三(弁護士)、青山貞一(武蔵工業大学教授)、北村喜宣(上智大学教授)の3名と中信地区廃棄物施設検討委員会委員(委員長、原科幸彦東京工業大学ら25名の委員)との意見交換会が長野県松本市の合同庁舎講堂で開催された。

■意見交換会開催の告知(長野県)
信州廃棄物の発生抑制と良好な環境の確保に関する条例(仮称)骨子案による意見交換会を開催します(PDF形式:11KB/1ページ)

信州廃棄物の発生抑制と良好な環境の確保に関する条例(仮称)検討について

 以下は議事速報である。なお、以下、[ ]は検討委、( )はアドバイザー、{ }は県、「」は傍聴者うを示す。なお、司会は原科と北村の両氏が行った。


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[傘木] SEAを中断せねばならないほど「整合を図らねばならない」事項があったのか? 真鶴町では条例制定に2年かけているが、県は急ぎすぎでは? いきなり「信州」が冠に付く手法は民主的でないのでは?

{山川廃棄物対策課長} 整合を図らねばならない事項はあった。急ぎすぎと言われるが、この間に十分な各方面との意見交換の機会を設けてきた。「信州」に関しては、さまざまなご意見があることは承知している。

(青山) 県が言われるとおり。今までに15回ほど意見交換の機会を設けてきている。常に方針は知事初め三役の会議で決められてきており、県の方針。アドバイザーの我々がどうこうしているのではない。

(梶山) 政策的判断もあり、アドバイザーがどうこうすべきでない。スピードについて、私は、時間をかければいいとは思っていない。いくつかの条例起草に関わった経験から言えば、大きな転換、複雑な論点を含むこうした条例については、議論に時間をかけて最初から100%のモノを作ろうとせずに、まず作って、悪い所を直していく方がいい。「信州」については、県民の皆様が?と感じるなら知事に直接ぶつけ、変えていけば良いこと。

[関口] こうした条例が必要、と検討委でも当初から考えていた所。具体論に入りたい。

(青山) 計画策定委員会に関して、市町村や広域連合、民間からの申請に関する審査に当事者が加わるべきではない、との観点から「学識者」に絞ってきたが、検討委からの指摘もふまえ、もう少し柔軟に考えてもよいと感じている。

[原科] 「審査」と言われるが、許認可も行うのか?

(青山) 許認可は行わないが、それに近い所まで議論する委員会にはなる。

[原科] 許認可を行うとなると重みが変わってくる。

(梶山) 直接の利害関係者は「審査」からは外れるべき。もっとも利害関係者は県民全体ともいえる。

[原科] 策定委には「利害関係者」も加われると解釈してよいのか?

(青山) 直接の利害に関わらない範囲で加われる。策定委が対象とする「計画」とは絵に描いた餅であってはならず、その意味で具体に踏み込んでいくことがあり得る。

[原科] 「計画」と「審査」を一緒にすべきではないと思う。

(青山) 具体の「審査」は、「計画」に常に付いてくるものと思う。計画と具体のアセスが常にリンクする戦略的アセスは、私も原科さんも、ともに目指す所では。

[原科] かなり広範にわたって議論の対象とする委員会、と捉えてよいか?

(梶山) よい。

[傘木] 許認可まで握る、かなり権限の強い委員会になってしまうのでは?

(青山) 許認可ではない。事業者の届出に対する「承認」の段階の議論。

(梶山) 「計画」をより具体に議論するという意味合いに考えていただきたい。

[福島] 公共関与のあり方については、当初から検討委でもかなり議論されてきたが、現時点では県の関与もやむを得ない、との見解。アドバイザーの皆様の考えは多少違うように感じているが?

[関口] その考え方は検討委でも一本化はされていない。従前の「あり方」には疑問がある。

(梶山) まず良好な環境を守ることが出発点。ゴミ問題より環境問題が重要で、待ったなしの状況である。私の15年間の活動の結論は、ゴミ処理施設を作ることに公共が積極関与すべきではなく、「川上」(排出者)の責任を明確にすることにこそ公共は関与すべき。「川上」の責任を曖昧にする手取り足取りの公共関与はすべきでない。

(青山) 製造者責任・排出者責任・汚染者負担を基とすべき。責任ある当事者が金を出すべきで、これを曖昧にする公共関与はすべきでない。「全ての公共関与はダメ」と梶山さんほど強く思ってはおらず、立地の余地がきわめて制約されるわが国では、立地を決める段階などで一定の公共関与は必要かも知れない。ただ、ドイツのように明確なモラルを確立するためには、なるべく公共は関与すべきでない。

[中林] 理念は良くわかった。むしろ、条例の中で排出者責任をどうするかという具体的な記述がなく、不明確。現実問題として溢れるゴミを、どう製造者、排出者に返していくか、どう踏み込むか?

(梶山) 現行の各リサイクル法は正にゴミを増やす法律。溢れたゴミを排出者に返そうとする時、これらの法律が逆に障壁になる。こうした法を乗り越える条例とするためにはどうするかが課題で、その「力」は条例に基く「合意形成」から生まれる。この条例はそうした手続きを定めるもの。具体的に条例の中に文言で書くのではなく、県民合意を経て制度化していくことが本当の「力」を生む。策定委員会が作る「計画」とはそうした主旨のもの。

(北村) この条例が一発ホームランでは決してない。

(青山) 今の国の法律の不備をどう補うか。その視点で条例を組み立ててきた。

[傘木] 策定委が「計画」と「審査」の双方に関わり、なお市町村事務である一廃にも入り込んでいくとなると、相当に大きな権限。「計画」は県民参加と言われるが、学識経験者に絞られているのは不透明。

[古村] 策定委はベースの計画のみを答申するものと思っていた。「審査」というのは骨子のどこにも書かれていないが?

[中村] 策定委と県民環境協議会の役割分担は?

(青山) 「審査」は許認可ではない。例えば市町村から上がってくる計画について、予測は不当に右肩上がりでないか、処理方法は本当にそれがベストか、と問い直す「審査」は必要。従前の形式的なアセスのように、一方的に報告書が作られ、縦覧されるだけ、という形を超えて、申請者と何度も議論できる、その中に県民も参加できるプロセスを設けるということ。これを先ほど「審査」と表現したまでで、知事権限の強化でも何でもない。往々にして処理施設は地域の周縁部に作られ、環境影響は広域連合の外まで及ぶ。こうした問題には「環境県」として関与していくということ。

(梶山) 策定委は審議会の位置付け。県土全体の良好な環境を守るための方向付けを行うもの。

(北村) 広域的な環境管理は県の自治権の範囲。現行の廃棄物処理法でも、市町村事務ではありながら県の承認を必要としており、決して県の権限が強まる訳ではない。

[関口] 知事権限あるが故に問題施設の操業を止められなかった今までの方が「権限集中」。逆にもっと住民の生活権、人格権に重きを置く文言が必要。

(梶山) 全くおっしゃる通り。ただ、文言で入れれば足りるのか、さらに検討させていただきたい。

[鶴見] 発生抑制には時間がかかるのでは・・・ モノを大切にしない戦後教育の歪み、分別すら住民は徹底できない。その隙間をどう埋めるのか?

(梶山) 私は視点が違うと思う。ゴミが増えるのは大量消費を促す製造者の問題。長持ちさせようとすると法が邪魔する現実こそ問題。リターナブルな製品を作らなければペイしない仕組みを作るよう、合意形成を行うこと。そのために県民パワーが働けば、決して時間はかからない。ゴミを出す「川下」ではなく、「川上」の問題と考えている。

(青山) 来月に長野へ見える上勝町長の実績もあるし、私の東京のマンションでも18種類のゴミ分別が実践されている。分別がうまくいっていないと言われるが、自治体が明確な方向をまず示し、動き出すことが必要。中信地区検討委でも、そうした具体的な取り組みを考えてほしい。既に南信の意欲ある自治体からは、アドバイスを求める要請がきている。やる気ある自治体をどんどん支援していきたい。

[傘木] 上勝町には私も行った。素晴らしい取り組み、正に市町村の自発性が大切と感じた。であればこそ、この条例は屋上屋と感じられて仕方ない。県が網をかぶせるなら現行のアセスで十分では?

(青山) ひとつの考え方とは思うが、現実には広域連合レベルで情報開示は全くなされておらず、第三者的に連合、市町村をチェックすることが必要になっている。現行のアセスは全くの現状追認。屋上屋ではなくクロスチェックとして重要。

[関口] 今日は珍しく青山さんと意見が一致しそう。リサイクルが本当にベストか、という問題も追及していく必要がある。

(梶山) 「屋上屋」は完全な誤解。広域的な環境影響に関して市町村や連合の単位では解決できない。リサイクルにも良いリサイクルと悪いリサイクルがある。厨芥ゴミはともかく、下水汚泥を堆肥にすれば土壌汚染しか生まない。山形のレインボープランは素晴らしいが、堺市の堆肥化計画はメチャクチャ。同じ施策でも県民パワーの機能如何で良い施策にも悪い施策にもなる。良いパワーを作り出すための合意形成こそ、この条例のキーワード。

(青山) 行政はこれまで「住民が持ち込んだデータは信用できない」としてきた。このことが多くの訴訟を生んだ。環境協議会は、住民がモニタリングを要請でき、これを受けて環境保全研究所を中心に公正なデータを得ることができる仕組み。

「Aさん」 上田で「長野県ゴミ行政を考える会」を作っている。講演会を企画したりした経験から、県民は、県の努力、委員会の努力がはっきりわかればすぐに味方になれる。質の高い情報を、わかりやすく117市町村に伝える努力を。

{山川} しっかり受け止め、県でなければ出来ない情報提供をきちんと行いたい。

[原科] プレスリリース、Aさんのような各団体への直接のアプローチなど、複数の方法を並行して、どんどんと行ってほしい。

「Aさん」 上勝町長が来長すると青山さんが言われたが、いつか? 県民参加も可能か?

{山川} まだ公表はしていなかったが、6月4日。市町村の総会だが、一般参加も可能となるようにしたい。

[田中夏子] 策定委は今までの「住民同意」のまずさを補うような、丁寧なプロセスを踏んでもらえると理解してよいか?

(梶山) 大事なご指摘。今までの「住民同意」には大きな問題があった。同意した覚えがないのに「同意」、「同意」しないと恫喝、一度「同意」してしまうと撤回できない、また、大気はつながっているのに対岸は地区が違うからと「同意」対象にならない、etc. こうした点は改めるべき。一方、「反対」の理由も合理的に見極めていくことも必要。

(青山) 策定委においてこそ、常に情報を公開しつつ、本当の議論が出来ると考えている。

[原山] 公開の下での本当の議論、正に大切なこと。

[関口] その意味でも「住民同意」のプロセスは残してほしい。

(北村) 県が知らぬふりを決め込み、住民の負担になる「同意」は改めるべきと考えてきた。

[関口] 経験から言えば、「同意」のプロセスがあることは住民にとって決して「負
担」ではなく、「覚醒」の契機。ぜひ残してほしい。

(梶山) 正に重要なご指摘。ただ、施設の必要性を本当に議論しなくとも、同意は「買える」。そうした「形式としての同意」ではなく、「本質的な同意」を研究した
い。

[中村] いくつかの市町村の現場職員の話を聞いて回ったが、彼らは切実。この条例は彼らにとって待望の条例。デポジットも長く議論されてきたが、市町村単位では無理でも、県レベルなら可能。製造者責任を確立する、今は正に転換期。

「Bさん」 この条例をすぐに作ってほしい。埋める・燃やすには反対。今日の話を聞いて、条例の方向はベストと感じることができた。中信検討委でも今後、一廃についての議論を始めてほしい。


 以下は、信濃毎日の記事

信濃毎日2004.5.10朝刊
県の廃棄物条例策定へ 松本で公開討論会
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 県は九日、廃棄物に関する条例案策定に向けた公開討論会を松本市で開いた。県の条例アドバイザー三人と中信地区廃棄物検討委員約二十人が意見交換した。

 公表された条例骨子案では、市町村が一般廃棄物処理施設を新設する際、知事任命の学識者らで構成した「計画策定委員会」の審査を受け、知事の承認を得る必要がある。この方法に、市町村長から「市町村の自治事務に踏み込むものだ」と異論が出ている。

 これについて条例アドバイザーの青山貞一・県環境保全研究所長は「(条例で定めるのは)県全体の環境、自然保護といった観点で議論し、施設計画の必要性や妥当性などを審査する仕組み。知事の権限拡大や市町村事務に踏み込むものではない」と強調した。

 原科幸彦・中信地区廃棄物検討委員長らは、計画策定委に学識者以外の委員も幅広く入れるようあらためて要望。これに対し青山所長は、施設計画の提出者など直接の当事者は審査から外れることを前提に「原科さんの言う方向でいいと思う」と述べ、学識者以外の委員も加える方向で検討していく考えを示した。

 公開討論会は十六日にも長野市内で開く。