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死因の12%は喫煙
米博士ら地域、病名別推定


東京新聞夕刊(2004.12.25)一面


●死因の12%は喫煙−−−米博士ら地域、病名別推定

 喫煙が原因で二〇〇〇年の一年間に死亡したと考えられる三十歳以上の人は、全世界で四百八十三万人に達し、死因の12%を占めるとの調査結果を、米ハーバード大のマジド・エザッチ博士らの研究グループが二十五日までにまとめた。

 先進国と発展途上国の死者はほぼ同数だが、途上国ではアジアや西太平洋地域に集中。死因となったのはいずれも心臓血管系の病気が一位、途上国では慢性閉塞(へいそく)性肺疾患(COPD)など呼吸器系疾患の割合が高い傾向が見られた。

 喫煙による死亡数は従来約五百万人とされてきたが、地域や死因別に詳細に推定したのは初めて。研究グループは「地域ごとの喫煙傾向の特徴も踏まえ、途上国などでの対策を強化しなければ、健康被害はさらに深刻になる」と警告している。

 研究グループは、世界保健機関(WHO)が分けている世界六地域を、先進国と発展途上国、子どもの死亡率などで、さらに計十四ブロックに細分。喫煙と肺がんに関する研究データなどから、地域ごとに喫煙による死者数を推定した。

 合計四百八十三万人の死者のうち、女性は二割。途上国では死者の集中地域があり、インドやバングラデシュなど七カ国のブロックと、中国やカンボジアなど二十二カ国のブロックで、死者がそれぞれ約八十万人に達した。

 先進国での死因は心臓血管の病気が一番多く約百万人。次いで肺がん(約五十万人)、COPD(約三十万人)の順だった。

 一方、途上国のCOPDの比率は先進国の二倍以上で、他の呼吸器疾患も含め全体の四割を占めた。研究グループは、石炭や動植物由来の燃料で家の中の空気が汚れていると、たばこにより体への影響がより強められる可能性を指摘している。

■メモ 喫煙による健康影響

 厚生労働省などによると、さまざまな疫学研究などから、喫煙者は各種のがんや心臓病、脳卒中、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、ぜんそく、歯周病などの危険性が高まることが知られている。日本人では、喫煙者は非喫煙者に比べ男性で1.6倍、女性で1.9倍、死亡率が高まるとの大規模調査もある。近年、本人だけでなく、周囲の人に及ぼす受動喫煙の影響も研究が進んでいる。