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シアンを使った熱帯魚捕獲
 青山 貞一

掲載日:2004.8.10

 「映画などで大人気となったカクレクマノミ。しかし、こうした熱帯魚は飼ってみると、すぐに死んでしまうことが多いと言います。その原因を調べていくうちに、捕獲地で行われていたこと、とんでもない実態が明らかになりました・・・。」TBS報道特集PRより

 カクレクナノミとは  カクレクマノミとは2

 2004年8月8日夕方のTBSの報道特集で日本で売られている人気熱帯魚、カクレクマノミをインドネシアの海で捕獲するため、猛毒のシアン化合物が使われている可能性が指摘されていた。

 これに関連し、現地取材した日本電波ニュースの幹部が日本各地の民間、公設を問わず分析機関に死んだ熱帯魚中のシアン化合物の分析を依頼したところ、どこからも断られたそうだ。

 たまたま私に、どこかで分析してくれるところがないかとの問い合わせが来た。そこで現在、私が所長をしている長野県環境保全研究所の研究員らに相談した。この研究所は松本サリンを分析するなど、技術力に関しては日本各地にある公設研究機関のなかでもかなり高い。しかし、魚類中のシアン化合物の分析はしたことがなく、断る寸前まで行った。

 あきらめかけていたが、日本電波ニュースの担当者の執拗な依頼と熱心さにほだされ、再度、研究員等に分析の可能性を打診した。研究員等は、さまざまな分析方法を検討、2週間かかったが、熱帯魚中のシアン化合物の定量に見事成功した。それも放映日直前に。サンプルには現地から届いたカクレクマノミとともに、養殖の熱帯魚をコントロールとして含めた。

 8月6日、日本電波ニュースの取締役が長野県環境保全研究所にこられ、私が結果を報告した。その2日後、TBSの報道特集(キャスター田丸美須々さん)で放映された。ひさびさのリアリティある報道特集だった。

 シアン(CN)は、生物の生体に含まれる元素からできているので、分析が容易でなく、実際、前処理にいろいろと工夫を要した。以下は今日の報道特集のトランススクリプトの概要である。

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2004年8月8日
TBS報道特集
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 飼育している熱帯魚の突然死が問題。
 調べたところ飼い方の問題だけではないことが分かってきた。

 都内の輸入業者、不可解な大量死・突然死が起こる。
 成田空港貨物ターミナル。
 東南アジアから熱帯魚到着。既に大量に死んでいる。半分くらい死んでいる。 アメリカで養殖されたクマノミは突然死することはない。東南アジア産の熱帯魚のみ。

 長野県環境保全研究所に検査を依頼。検査には2週間を要した。突然死した1匹から0.07ppmという高濃度シアンが検出された。シアンは青酸とも呼ばれる猛毒。熱帯魚の体内になぜそんなものが? (建物の外観、分析の様子の一部の映像)

CM

 インドネシアバリ島を訪れた。世界有数の熱帯魚の供給地。輸出業者の水槽。
 最大の輸出先は日本。バリ島西部。おどろくような豪華な家。いわば「熱帯魚御殿」

 おびただしい数のビニール袋、中身は熱帯魚、2万匹は下らない。昔は食べる魚を捕っていたが儲からないので熱帯魚の仕事を始めた。収入は10倍以上になった。月25万円くらい。漁船が戻ってきた。小舟に積み替えて戻ってくる。おびただしい数のビニール袋。死んだ熱帯魚が大量に捨てられている。

 地元の環境NGOを尋ねた。遠洋に出る漁師のほとんどがシアン系の薬品を使っているはず。

 遠洋漁業の業者に取材申し込み。取材は拒否された。沿岸の業者に。シアンの使用は20年前から禁止されているが、沿岸では事実上、見逃されている。

 金をメッキする時に使う薬=青酸ソーダ(シアン化ナトリウム) 珊瑚礁の中など捕まえにくいところの魚を捕る時に使う。1000匹くらい捕れる。

 船に乗せて貰うことになった。村のすぐ沖合に船を泊め、浅瀬のポイントを見て回る。 シアンのためサンゴがかなり痛んでいる。イソギンチャクの姿もない。 サンゴが痛んだのは薬品を使ったせいだと思う。(漁業者)

 さらに沖のスポットを目指す。固形物を海水に溶かした。 イソギンチャクを探す。かくれクマノミの群れを発見した。液体をイソギンチャクに吹きかけ始めた。動きの鈍くなったクマノミを網ですくう。

 警察に見つかって1晩泊められたことがある。薬を使わないように警告された。警察も生活が苦しいことが分かっている。薬を使わなければ生活が成り立たないことを。

(NGO)
 どんな魚もシアンを使わずにとれるはず。それでも使うのは経済的な理由。 水揚げされるまでに半数以上が死ぬ。生き残った魚も半数が流通の過程で死ぬ。この漁法が熱帯魚だけでなく環境に与える深刻な打撃を心配する声。

(総合地球 環境研究所 秋道 教授) とんでもない領域にとんでもない生態破壊が及ぶ。 熱帯魚人気の陰で猛毒シアンがまかれ続けている。