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連載: 顧客がソニーから離れるわけ!

第一回 「殿様商売」の高額デジタル家電
ビデオ・プロジェクター


青山貞一

掲載日:2005.7.29

 私は現在、(1)教授をしている武蔵工業大学の青山研究室、(2)代表取締役をしている環境総合研究所それに(3)代表幹事をしているNPO、環境行政改革フォーラムの3箇所で、それぞれ別のビデオプロジェクターを導入し利用している。ただし、いずれもソニーのものである。

 それぞれ1台当たり、30万円〜40万円もするデジタル家電製品である。

 購入した順は、(2)→(3)→(1)である。それぞれ使用目的が異なり、購入主体が異なることもあり、結果的に3台購入した。

 ソニーから3台もビデオプロジェクターを購入したのは理由あってのことだが、ソニーはその都度、大幅なモデルチェンジをしていた。実物を以下に写真で紹介する。短期間にこれだけモデルチェンジすること自体、信じられないことである。デザイン変更より前に、基本的な機能をしっかりさせることが先決だ。


(2) VPL-CX3 後面から (2) VPL-CX3 前面から
(3) VPD−MX10 後面から (3) VPD−MX10 前面から
(1) VPL-CX5 後面から (1) VPL-CX5 前面から

 先日、ある会合で環境行政改革フォーラムのビデオプロジェクター、すなわち(3)の機器を使いだし10分もたたないうちに、ビデオプロジェクターの光源のランプが消えた。プロジェクター機器の本体に触ると部屋に冷房を入れていたがかなり熱くなっている。冷やしてから再度、電源を入れるとカリカリと変な音がしている。

 最初は冷却、送風ファンが何らの理由で停止したか壊れたかと思った。次に考えたのは、光源のランプが切れたのかだった。

これはCX3用ランプ、(2)用。構造は非常にシンプルだ。



これが今回切れたプロジェクターのランプ、
(3)用。非常に複雑な構造となっており、
排熱もしにくそうだ。



 しかし、上記(1)、(2)、(3)のうち不具合が起きたプロジェクタ(3)は、購入して、まだ年数が経っていない。(2)もあるので利用回数も少ない。

 さらに(3)は、最初に買った(2)の古いプロジェクターの1/3も使っていない。一方、その(2)は一番最初に購入したものだが、いまだ一度も光源のランプをとり代えたことがない。すなわちタマが切れたことがないのである。

 そこで、環境総合研究所のT調査部長に依頼し、研究所から歩いていける東京都品川区東五反田のソニーに修理に言ってもらうこととした。

 機種は、ソニービデオプロジェクタ(VPD-MX10)である。

 以下はT調査部長の修理の対応経過のメモである。

2005年7月28日(木)夕方

修理対応窓口の問い合わせ
・修理受付窓口(03-3762-0511)に電話したところ、業務用製品窓口に電話
を転送されました。

・業務用製品窓口に状況を説明すると、この窓口は故障かどうかを判断するところなので、修理は各地域の修理センターに連絡して欲しいと言われ、修理センター(ソニーブロードバンドソリューション・東京修理センター)を紹介された。修理センターの受付時間は平日の9:00〜18:00とのこと。

修理センターへ連絡
・ソニーブロードバンドソリューション(株)東京修理センター
〒141-0022 品川区東五反田1-22-1 ANビル7F, TEL 050-5518-1670
上記に電話して故障の状況を説明したところ、郵送でも持ち込みでも修理を受け付けますとのこと。

修理センターに持ち込み(16:30頃)
・窓口で故障状況を説明しました。受付用紙はこちらの名刺を渡したところ先方が作成。預かり品(本体、バッグ、電源ケーブル等)リストも先方が作成。
・修理実施前に見積を3営業日以内にファックスします。修理は7〜10営業日かかりますと説明された。

見積受領(17:14FAX受領)
・ERIにもどって早い時間にファックスで見積が届きました。内訳は以下のとおりである。

・ランプ代  49,800
・予備費    3,000
・技術料   13,000
------------------
 計 65,800(税別)

・先方から故障の内容の説明がなかったので、電話しいろいろと質問したところ、
以下のことが分かった。

 これは先方から丁寧に教えてくれたというより、こちらから聞き出したものです。

・修理の内容はランプの交換のみ。
・異音がしていたのだが、それは切れているランプをつけに行っているためであり、ランプを交換すれば直るとのこと。

 簡単にランプの予想寿命よりはるかに早く切れてしまったということになる
のだが、ソニー側ではその原因までは調べても分からないとのこと。

 環境総合研究所で使っているプロジェター(上記の(2))の方が、かなり以前から使っている。そして使用頻度も大幅に高い。しかも、交換なしで今でも使えていることを伝え、ランプ交換しても再度同じことが起こったら困ると言いましたが、そこまでは調べようがないとのこと。

 そこでランプを当方で購入し交換する場合は、技術料等はかからないで無償返却とのことだった。

 環境総合研究所に戻ってから確認したところ、ソニーのビデオプロジェクターは、本体のモデルチェンジ毎にランプも変更しており、以前に購入した古い方のプロジェクタ用のランプは使えないことが分かった!

 もともとプロジャクターの光源ランプは異常に高価だが、いくらなんでも49,800円はないと思う。

 そこでまずはソニー関連のショップで光源(タマ)の値段を調べたところ、47,040円である事が分かった。上記のソニーの修理センターより若干安いものの、どう見ても、高い。そこで、ホームページで光源(タマ)の市場価格を調べてみた。以下はその結果である。

<参考:ランプ市場価格>
SonyStyle      \47,040
NTT-X Store    \42,630
パソQ        \41,160
ナニワ電機     \37,751

 信じられないことだが、ソニーより1万2千円、ソニー関連ショップより約1万円も安く売っている店があった。納期1週間とのことで頼むことにした。

 以上がT研究員のメモである。

 T研究員は、翌日、ソニーにあづけていたプロジェクターを取りに行った。

 上記に関連し、ソニーの「殿様商売」にいくつもの課題がある。

 @まず5万円もする光源ランプが、別の古いソニー製プロジェクターの
  光源ランプの半分以下の使用頻度(使用時間)で簡単に切れたことだ。
  理由、原因も不明とのこと。

 ソニー修理センターは、後から購入し、それほど使用頻度がない(3)のプロジェクターのランプがなぜ切れたか、その理由、原因、あるいは遠因をまったくユーザーに説明していない。もっぱら、たまたま、最初から附属していたランプの寿命が短かったなどという説明を受けても納得できないが。

 最も危惧することは、(3)のプロジェクターでランプが切れた原因が、構造、設計上の問題であったとしたら、大枚4万円出しランプを交換しても、またしてもランプが早く切れる可能性が否定できない。一番古い(2)のプロジェクターと比べ、見かけの著しくデザインが異なっているだけでなく、ランプを冷却したり、空気を吸引するスケールファンの種類や能力が異なったり、冷却、送風のための物理的な構造が異なるために、ランプの寿命が短くなっているとしたら、まさに構造・設計上の欠陥であり、高額のランプを交換する事自体大きなリスクを負うことになる。

 この点についてソニー側は一切説明をしていないが、そもそも修理部門がその手の質問に答えないのは説明責任、結果責任上も問題だ。

 また、なぜ、かくも光源ランプが高額なのか、10年前ならいざしらず、これだけ世間で使われ出したにもかかわらず、いっこうに安くならない。大阪のナニワ電機のものは確かにソニーやソニー関連ショップより廉価だが、それにしてもかくも高額なのは、同業者間で価格談合をしているのではないかと勘ぐる。事実、他のメーカーのランプも3−4万円と高額である。それがいとも簡単に、まったく通常の使用環境、条件で切れるのでは、ユーザーはたまったものではない。

 ※ソニーのプロジェクター用ランプ一覧。ランプが7万円台のものもある。

 日本のメーカー独特の本体は安く、消耗品が高額というのはよくあるが、ことプロジェクターについては、本体も消耗品も高額である。

 A次に、修理でもなく、単なる光源ランプの交換に16,000円もソニーの
  修理センターがとることだ!! もちろん、プロジェクターはT研究員が
  ソニーにもちこんでいるので運搬料が含まれない。しかも、ソニーの技術
  者が来たわけでない。ユーザーの持ち込みでこの値段はないだろう!

 光源ランプが簡単に切れたこと、それの光源ランプを交換するだけで、ランプを含め65,800円もかかることは、ユーザーにとって理解しがたい。もちろん、ランプ交換なら自分でやれるが、全部の工程で30分とかからないランプ交換に、ソニー修理センターが16,000円もとるのか、信じられないことだ。

 Bさらなる問題は、最初に購入した(2)のプロジェクターのスペアーとして
  購入しておいた光源ランプが、次のモデルで使えないことだ。おそらく(1)
  の大学の研究室で使っているプロジェクターはさらに新しいモデルだから
 使えないないだろう。

 そもそも、ソニーから購入した(1)、(2)、(3)は、その都度モデルチェンジしているが、一番古いモデルの(2)で機能は十分だし、光量も通常の会合、会議なら十分だ。おそらく(2)→(3)→(1)と光量が増えるなり、消費電力対比の光量が向上しているのかもしれない。

 しかし、その場合でも、最低限、光源ランプのソケットを共通のものとするなり、最悪でも何らかの袴をはかせるなりして、共有化をはかるべきだ。他社とならまだしも、自社で物理的差別化をして何になると言いたい。

 現在、プロジェクターは、私たちが(2)、(3)、(1)をソニーから購入していた頃より、ソニー以外のメーカーでは遙かに廉価で売っている。もちろん基本機能が同じで。

 今回の一件を通じて分かったことは、ソニーのデジタル家電製品の開発ポリシーの一貫性のなさ、いつになっても安くならない主要部品、とくにランプの異常な高額さ、さらに修理でもない簡単な部品交換で16000円もとるユーザー無視の対応のひどさである。

 今まで何でこんなメーカーから3台も高価なプロジェクターを購入してしまったのかと思うと情けなくなる。

 .......

 しかし、私のソニーのプロジェクターとの闘いは、今回が最初ではない。

 実は、ソニーのビデオプロジェクターを最初に購入し、数ヶ月使用した際、ソニーのプロジェクターにしかない機能に大きな不具合、バグがあることが判明したのである。

 これはまさに欠陥商品そのものであったので、ソニー本社に連絡し、浜松にあるプロジェクターを製造している部門から担当者が2度、私の研究所にこられ、議論したものの、最終的にその不具合、バグをかのコンピュータメーカーのせいにする始末。

 これについては次号で詳しく報告したい。。