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世界が注目する六カ国協議
外交音痴の日本は
どこの国からも相手にされない!?


青山貞一

掲載日:2005.7.26

 世界中が注目する日、米、中、韓、ロシア、北朝鮮の間での六カ国協議が、2005年7月26日から中国北京で始まった。


出典:中国情報局ニュース

 今回で4回目になる六カ国協議だが、今回は開催の期限、すなわちいつ終わるかを設定しておらず長期開催となる可能性も大だ。

 今回の六カ国協議開催の最大のテーマは、「北朝鮮の核」である。おそらく核をめぐり米国はじめ参加国と北朝鮮(DPRK)との間で丁々発止の討議、交渉が進められるだろう。

 ここで問題となるのは、日本が六カ国協議で外交上の手柄が、すこしでもあげられるのかどうかだ。

 というのも、今回も日本政府がことのはじめから、北朝鮮(DPRK)はもとより他の国々にも相手にされていないと思われるからである。

 その理由はいとも簡単である。

 この種の外交で成果を上げるためには、いわゆるガチンコ勝負ではだめ、当然、会合前の協議やそれなりの根回しがなければならない。

 日本を除く5カ国は中国の北京で六者協議が始まるはるか以前から頻繁に北朝鮮と多面的に接触しているのだ。

●中国
 外務大臣に類する唐家セン・国務委員はこの7月13日に北朝鮮に行き、金正日総書記と会談している。しかも、北朝鮮に行く前に、米国国務省長官のライス女史とあっている。

●韓国
 鄭東泳・南北統一相は6月20日に北朝鮮の金総書記と会い対米要求を聞いている。それをもって南北統一相はすぐに訪米し、米国副大統領と協議している。おそらくその結果であろう、7月13日にj韓国は北朝鮮に対して電力供給を提案しているのだ。

●米国
 米国がこの会議に臨む最大の焦点は核問題である。さらにライス米国務長官は7月、日中韓の3国を訪問した際に、年末までに核問題の最終的な解決を目指す考えを示唆し、同時に「ブッシュ政権は成果のないマラソン協議に付き合うつもりはない。今回、北朝鮮を協議に引きずり出したら容易に解放しない決意だ。年末までにめどが立たなければ、六者協議に代わる強硬策をとるよう、関係国に同調を求めるだろう」と語ったと言う。

●ロシア
 ロシアも活発に動いている。たとえば北朝鮮が核廃棄に応じなかった場合、米国などは速やかな国連安保理での経済制裁決議を持ち出すだろうが、中国だけでなくロシアもこれには同意しないなど。

●日本
 では我が日本はどうだろうか。日本政府は、この間、それほど国民の関心も高くなく、政治課題としてプライオリティーも高いとは思えない郵政民営化に小泉首相がごちゅうしんとなり、北朝鮮はもとより、他の国ともほとんど水面下での協議、交渉、根回しはしていない。ひとことで言えば、様子眺めだけだ。

 さらに問題なのは、上記の北朝鮮はもとより中国、韓国、米国との外交ルートでろくな情報が日本にはいっていないことだ。また中国、韓国はご承知のように小泉首相に関しては靖国問題はじめ歴史教科書問題などでこの間、相当怒り心頭となっている。

 この間、日本では北朝鮮拉致被害者家族が日本政府に対し、六カ国協議のなかで拉致問題を優先しろとやいのやいのとあらゆるデモ活動をしてきたが、外交では一枚も二枚も上の北朝鮮は、根っから小泉外交を見下しているから、拉致問題で何らかの成果を上げることもほとんど期待薄だ。事実、宋旻淳の外交通商次官補(韓国)は「拉致問題は今回の六カ国協議のアジェンダにはならないだろう」と述べている。

 いずれにしても、北朝鮮問題を自分の首相在任中の手柄としようと、功を焦った小泉首相と外務省は、まさに四面楚歌、北朝鮮だけでなく、他の四カ国からもシカトされる始末だ。

 外交能力のなさに加え、日本政府は明らかな戦術ミス。おそらく今後一ヶ月続くと思われる北朝鮮との六者協議で、日本政府は惨めな姿を国際社会に露わにすることになるだろう。

 すべて身から出たさび、自業自得と言えばそれまだが.....。

 ところで、北朝鮮にしてみれば、世界一、そして最大、最強の大量破壊兵器保有国、とくに核兵器、核弾頭を保有している国家は、いうまでもなく米国であり、その米国を放置しておいて、とやかく言われる筋合いはないと言うところであろう。以下のグラフを見れば一目瞭然だ。

誰が大量破壊兵器を持っているか? 国別核兵器力比較

      Source:Kalla:Stop the War Coalition 

 しかし、日本と違い外交面でシタタカな北朝鮮は、核を世界最強の米国始め、ロシア、中国などの国連安保常任理事国と丁丁発止渡り合う上での外交カードとして使いつづけている。

 おそらく北朝鮮を良く思っていない国々でも、イラク戦争で見せた米国の居丈高で不遜な対応、態度、とくに大量破壊兵器保有に関する対応にはウンザリしているものと思える。

 閑話休題

 だがよくよく考えれば、北朝鮮問題は、核に集中しすぎている。人権問題、独裁問題など、核以外の問題、特に人権問題についても米国は本来、もっと関与してよいはずだ。国際世論にしても、おそらくそうだろう。

 にもかかわらず、米国が核問題にこだわるのは、日本の外交がまったく小泉政権の目先の点数稼ぎにこだわり、人権問題を中途半端にしか対応してこなかったからである。

 そこを米国にも北朝鮮にも見透かされているのだ。中国も日本に外交音痴を見透かしている。中国や韓国は小泉首相の靖国参拝や小泉政権の閣僚がことあるたびに歴史認識で刺激的発言、失言を繰り返すこととの関連でも、小泉政権のアシストはごめんと思っているのである。

 もっぱら、韓国の場合、北朝鮮に拉致されている数は、日本より最低2桁多いと推定されている。金大中政権以降、ノムヒョンに至る政権は、北朝鮮政権を武力で倒すことのリスクの方が、統一を実現するリスクの方がはるかに少ないと考えている。

 はっきりしていることは、小泉流のサプライズは、北朝鮮にも諸外国にも、そして国民にもすでに種が尽いていることを見透かされているのである。