村井県政の浅川の基本高水への方針

小松好人
浅川流域協議会会員
長野県高水協議会元会員

2008年3月30日



 以下は平成20年における「信州・フレッシュ目安箱」を通じてなされた、富竹水位観測所での流量の観測について長野県議会で同意された5年の期間が終了するので、その結果に基づいて治水安全度1/100における基本高水450m3/sの見直しをすべきであるとの意見と、それに対する回答です。

 村井県政下では、富竹水位観測所において基本高水
450m3/sに見合う計算ピーク流量を越える流量が観測されない限り、治水安全度1/100における基本高水450m3/sを見直すことはないとし、流出計算における飽和雨量の見直しもしないと明言しています。

流量の実測を5年間実行するとした県議会での同意からは、精々飽和雨量の見直しが可能となるだけで流量確率(洪水が何年に一度発生するかの確率)を求めるには最低20年の観測が必要なのです。

 どうも
5年間の実測結果を見て判断するとした当初の目論見では、10年間にするとその観測期間はダム建設に対してモラトリアムになる可能性があること、5年間の観測では精々飽和雨量の見直し程度しかできないことを県会議員に説明していなかったことが考えられます。今後10年以上も観測を続けるのなら、改めて県議会の同意が必要になるのではないかと思います。

いずれにしても、村井県政では治水安全度/100における基本高水450m3/sは金輪際見直さないとする、理屈抜きの姿勢が感じられます。技術的な議論が政治的な議論になってきましたので、技術的な判断は国交省河川局水政課の審査請求に対する裁定を待つことになります。

・ 浅川基本高水について

・ご意見(20年1月29日受付:Eメール)

 浅川の治水安全度1/100における基本高水450m3/sは、最新の国交省の諮問機関の河川整備基本方針検討小委員会でも採用されている「総合確率法」や「改定新版 建設省河川砂防技術基準(案) 同解説 調査編」に記述されている確率年の計算方法にしたがって計算すると極めて過大であり、基本高水450m3/sの治水安全度は1/1000以下になります。

 治水安全度1/100におけるピーク流量は270m3/s280m3/sになると予想されます。

知事は治水安全度1/100における基本高水450m3/sは与件であり見直すことはしないと、関東地方整備局の認可を受けた河川整備計画で穴あきダムの建設を強行しようとしていますが、その穴あきダムの建設は前提となる治水安全度1/100における基本高水450m3/sの算定に瑕疵が認められるならば、永源寺第二ダムの訴訟から予見されるような重大な問題に発展する可能性を残します。

 知事は浅川の整備計画を何度説明しても分からないダム反対派の存在を嘆いておられましたが、私としても折にふれ治水安全度1/100における基本高水450m3/sは過大であると述べていることを無視され続けたことに、嘆きを越して憤りすら覚えています。

 最近基本高水450m3/sなる言葉を敬遠して、洪水調整前流量450m3/sと言い直していますが実質は同じであり、治水安全度1/100は本来平均して100年に1回の洪水にかかわるものであるのに、平均して100年に1回の大雨にかかわる確率であるとごまかしてきたことを思い出させます。

 長野県土木部が説明してきた治水安全度1/100における基本高水450m3/sは、平均して100年に1回の大雨が降った際の最大ピーク流量が450m3/sであると言うことであり、その最大のピーク流量の発生年確率は分からないままです。私の総合確率法を利用した計算で1/1000以下であり、その結果によれば基本高水450m3/sの治水安全度1/1000以下になることになります。

 今まで治水安全度1/100における基本高水450m3/sは国の基準にしたがって実施し、全国共通の手法によるものであるから間違いないとの論法で、長野県民、長野市民、流域住民に真実を明らかにしてこなかった河川管理者としての知事および長野県土木部の不誠実さは責められるべきです。同じ手法で実施しても、ある種の偶然性から過大になることもありなりならないこともあるのです。最終的には検証が必要です。

 今回知事は浅川ダム上流の住民が穴あきダムが建設された際の不安を訴えた際に、そのような話は司で承ると公的な発言をされましたが、河川管理者としての知事は司が実施しようとする浅川の河川整備計画の全容、更にはその前提となる河川整備基本方針(基本高水)に関し、どの程度の説明を受け内容を理解しているのかはなはだ疑問を持ちます。

 たまたま同志の一人が「基本高水」についてA4紙 1毎程度に簡単にまとめて欲しいとの希望を寄せましたので、多少正確性を犠牲にして「穴あきダムが作られるのは基本高水を過大に計算したからである」をまとめました。一度ゆっくりお読みいただき、県庁関係者以外の浅川の河川整備計画に関する見解をご理解下さい。

 来る2月に約束の観測5年間を終了する富竹水位観測所での実測流量と降雨量を検討し、流出解析に使われる貯留関数法の飽和雨量を正しく求め、それに基づき治水安全度1/100における基本高水450m3/sの見直しを実施し、結果次第で浅川の河川整備計画の再検討もあり得るか、ご回答をいただきたいと思います。

 長沼地区の新幹線用地買収に関する確認書で、知事のパートナーの長野市長は「行政の継続性」は守らなければならないと、自らのホームページで公表しています。富竹水位観測所での観測データで、治水安全度
1/100における基本高水450m3/sを見直すことは田中前知事の県民に対する約束であります。この約束は県政担当者が交代しても守るべきであり、それこそが「行政の継続性」であります。

 知事からのご回答を期待しますが、土木部長からでも真摯なご回答がいただけるのならそれで結構です。
                                   以上

(添付資料)
                                2008.01.24

  穴あきダムが作られるのは浅川の基本高水を過大に計算したからである

 現在浅川の治水対策については、関東地方整備局により認可された河川整備計画にしたがって、穴あきダム建設の準備が進められていますが、種々なる観点から建設反対の声が依然として後を絶ちません。穴あきダムが必要とされる最大の理由は、浅川流域に平均して100年に1回の大雨が降った際に、千曲川との合流点で毎秒450トンの最大流量があると計算をしているからです。この最大流量を基本高水と呼んでいます。

 この基本高水は雨量、雨の降りかた、地表の状態などを考慮して計算されます。100年に1回の大雨が降った際に、主として雨の降りかたにより様々な最大流量が生じます。同じ雨量でも梅雨のようなだらだらした降り方をすると小さくなり、雨台風のような集中的な降りかたをすると大きくなります。

 
100年に1回の大雨が降った際に毎秒450トンの基本高水が発生することについて、長野県土木部は国交省の基準にしたがい全国的に同じやりかたで計算しているので間違いないと説明していますが、これは100年に1回の大雨が最高に集中的な降りかたをするとの前提で計算した結果なのです。このような組み合わせが発生する可能性は極めて低いと予想されます。

 浅川については100年に1回の大雨の際の最大流量は、最小値毎秒226トン、最大値毎秒440トン、平均値毎秒320トンのように分布していると発表されています。長野県治水・利水ダム等検討委員会においてはこの分布について科学的に検討されることはありませんでした。一見バラツキとも思われるこの分布は、雨の降りかたを考えると当然だとするのが科学的な考え方です。

 科学的に考えることは統計的な検討を加えることであり、品質管理、実験計画法など至極ありふれた手法なのですが、河川工学ではほとんど採用されていない手法です。しかし最近国交省でも統計的な検討を加える必要を認めはじめ、「改定新版 河川砂防技術基準(案)同解説 調査編」においては、最大流量の起こりやすさについての計算式を解説していますし、諮問機関の河川整備基本方針検討委員会でも基本高水の計算で、総合確率法と言われる統計的な手法を採用しています。


 総合確率法と同じ手法で浅川について計算すると、100年に1回の大雨が降った際に、100年に1回発生する最大流量は毎秒270トンから毎秒280トンであります。基本高水に決定した最大流量が1001回発生する場合に、治水安全度は1/100と表現します。治水安全度1/100とは100年に1回の大雨にかかわる定義ではありません。100年に1回の大雨にかかわる定義は雨量確率と呼ばれています。

 100年に1回の大雨が降った際に、100年に1回に発生する最大流量の毎秒270トンから毎秒280トンを基本高水に決定すればその治水安全度は1/100となります。そして浅川の外水災害対策としては河川改修だけで十分に対応できるのです。毎秒450トンを基本高水に決定するとその治水安全度は1/1000以下になります。過大であると言う所以です。        
                                    以上


・回答(20年2月5日回答)

前回、○○様からいただいたご意見に対して123日にお返事を申し上げた中でも記載いたしましたが、私ども長野県は、治水安全度1/1004503/sを目標とし、治水専用ダムと河川改修により対応することを県の方針として決定し、河川整備計画に関する国との協議を行った上で、認可申請を行い、計画上妥当であるとの判断から、昨年822日に認可を受けました。

 流量観測に関しては、将来、治水対策の効果検証等に用いる必要があることから、長期間のデータ蓄積を行うべく、継続して実施してまいる所存ですが、平成15年から平成19年度までの5ヶ年間の降雨、出水の状況を見る中では、現在目標としている治水安全度や洪水調節前流量を上回る目標を設定する必要性は認められないこと、また、過去の実績流量が計画の洪水調節前流量を下回っていることや実績降雨時の飽和雨量を根拠に、目標流量を下方修正することは技術的な観点から適切ではないことなどから、○○様のご質問のように、平成15年から平成19年まで5ヶ年間のデータを元に流量の見直しを行い、これを元に河川整備計画の再検討を行う必要はないものと判断しております。

 浅川の治水対策につきましては、これまでに様々な検討を行った経過がございますが、河川整備の目標は、行政としての継続性を保つべきとの観点から、一貫して治水安全度1/1004503/sとして検討を行ってまいりました。その結果として、治水専用ダムと河川改修により対応するとの方針に関して、計画上、また事業上の妥当性、合理性の観点から、流域住民の皆様、県民の皆様に対し、河川管理者として責任を負うとの判断から、河川整備計画を策定し、認可申請を行ったものでございます。○○様におかれましてもご理解をいただきたいと存じます。

 【問い合わせ先:土木部 河川課 計画調査係 電話026-235-7309 メールkasen@pref.nagano.jp