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機密文書「地位協定の考え方」
第3条

琉球新報 2004年7月〜8月

 
掲載日:2004.10.18
改訂日:2009.11.16

初出:独立系メディア「今日のコラム」 


〔第三条〕

第三条は、施設・区域に対するいわゆる米側の管理権、施設・区域の近傍でとられる措置等について定める。

一、施設・区域の「管理権」(施設・区域の法的性格)
1 米側は、「施設及び区域内において、それらの設定、運営、警護及び管理のための必要なすべての措置を執ることができる。」(第三条1項第一文)これが通常施設・区域に対するいわゆる米側の「管理権」と称されるものであって、施設・区域について米側が排他的使用権を有していることを意味する。「排他的使用権とは、」米側がその意思に反して行なわれる米側以外の者の施設・区域への立入り(注27)及びその使用を禁止しうる権能並びに施設・区域の使用に必要なすべての措置をとりうる権能を意味するが、これは地位協定上の施設・区域の本質的な要素であると考えられる。

(注27)土地等の使用賃借契約における借主もその権原に基づいて他人の立入りを禁止することができるが、それは、私人に対するものであるのに反し、施設・区域に関する米側の立入り禁止権は、協定及び合同委員会合意上特に定める場合を除き、日本側公権力にも対抗しうる点に特色がある。なお施設・区域への立入り問題については別途触れる。

2 行政協定においては、「……管理のため必要な又は適当な権利、権力及び権能を有する。」と規定されていたが、かかる表現は、施設・区域があたかも治外法権的な性格を有しているかの如き印象を与え兼ねないので単に「必要なすべての措置を執ることができる」としたものであるが、「管理権」の実体的内容については新旧協約上差異はない。

「設定、運営、警護及び管理」は、「管理権」の要素を観念的に例示したものに過ぎず、これらの用語の一つ一つの意味を独立にとり上けて議論することは余り意味がなく、又、これら用語に必ずしも該当しない措置は米側としてとることができないと解することも適当ではない。米側が施設・区域でとりうる措置については、第三条に関する合意議事録に具体的事項が列挙されている(列挙事項には施設・区域外にかかるものもあるがこの点は別途論ずる。)が、これも例示的なものであることは、同議事録の頭書きから明らかであって、米側のとりうる措置はこれら事項に限られる訳ではない。(注28)

(注28)なお、右議事録第1項には米側のとりうるは措置として「……施設及び区域を構築(浚渫及び埋立てを含む。)し、」との表現があるが、これは、「施設及び区域を整備し、」位の意味と解すべきである。けだし、地位協定は、米側がたとえ自ら費用を負担しても、米側の措置として施設・区域を新たに設けたり、既存の施設・区域な拡張したりすることは全然予想していないと考えられるからである。

ちなみに、右の浚渫及び埋立ては、施設・区域たる水域における措置であって(このような埋立てに日本側は、協力する旨合同委員会で合意されている。)、このような措置がかかる水域外でとられることは予想されていない。

3 米軍に提供される施設・区域に右の如き法的地位が与えらるのは、第一に、米軍の使用に供される施設・区域内に右の如き法的、地位が与えられない限り米軍の有効な機能の発揮が妨げられるということによるが、第二に、他方において、米軍の活動には、後述の如く、原則としてわが国の法令の適用がなく、従って、米軍の軍隊としての活動が施設・区域外で行なわれればわが国の社会秩序に大きな影響が与えられることが予想されるので、米軍の軍隊としての活動は右の如き特別の法的地位を有する施設・区域内に限られるべきであるとの考え方を前提にしたものと解される。従って、米軍は、協定第五条で規定されるが如き国内での移動等の場合を別とすれば、通常の軍隊としての活動(例えば演習)を施設・区域外で行なうことは、協定の予想しないところであると考えられる。(注29)

(注29)一定の活動が軍隊としての活動に該当するか否かは明確でない場合もありうるが、個々の実体により判断せざるをえない。例えば、米軍人がグループで北海道の施設・区域外の雪山でスキー訓練をする例があり、これにつき政府は、説明の便宜上レクリエーションとして説明したことがあるが、米軍としてはかかる訓練を軍人としての公の訓練の一環と考えていることは明らかであり、協定上の妥当性には疑問がある。

又、例えば、米軍の軍人等に対する公の医療行為には、医師法その他麻薬取締法等の適用はないと解されるが、他方、かかる行為が米軍の行為として施設・区域外で恒常的・組織的に行なわれることは認めらないと解される(かかる場合そのような行為が行なわれる場所は、必要があれば施設・区域にされるべきものである。)。

4 以上のとおり、米側は、施設・区域につき管理権を有するが、施設・区域は、租借地とは異なる。すなわち、租借地は租借国の領土と実質的に同じ法的性格を持ち、租貸国の施政は全面的に排除されるが、施設・区域には属地的にはわが国の法令が全面的に適用される。したがって、施設・区域内でたとえば日本人が犯罪を犯した場合にはわが国の法令が適用され、わが国により司法権が行使される。又、例えば米軍人が施設・区域内で犯罪を犯した場合でも、それが公務外に行なわれた時には、一定の場合を除きわが国が第一次的に裁判権を行使する(協定第十七条3項)。右の如き場合にわが国の公権力の行使の態様に一定の制約(例えば一定の場合を除き日本側官憲は、施設・区域内での逮捕権を行使しない。協定第十七条合意議事録)があるのは、軍隊という特殊な法的性格を有する外国々家機関の駐留を認めたことに起因するものであって、これを以て施設・区域にはわが国の施政が及ばないと考えるのは適当ではない。安保国会当時の「施設・区域には日本の施政権が及ばず、従って、施設・区域は、安保条約第五条にいう日本国の施政の下にある領域ではないから、施設・区域に対する武力攻撃に対してわが国が自衛権を行使するのは集団的自衛権の行使であり、安保条約は、相互防衛条約ではないか」との趣旨の議論が施設・区域に対する誤った認識によるものであることは明らかである。(注30)(注31)

(注30)参・安保特議事録三月二二日、衆・安保特議事録四月六日等参照。なお、施設・区域であれ、わが国の領海内の米軍艦船であれ、これらのものに対する武力攻撃は、とりもなおさずわが国に対する武力攻撃であり、これに対するわが国の自衛権の発動は、個別的自衛権の発動以外の何ものでもない。

(注31)なお、安保国会当時、施設・区域と基地との相違点が度々問題とされた(参・安保特議事録、三月二一日、衆・同三月二五日等参照)が、基地が租借地と同様のものを指しているのであれば、租借地について述べたと同じことが言える。ちなみに、事前協議に関する交換公文でいう「戦斗作戦行動…のための基地…としての…施設・区域の使用の」の基地とは、戦斗作戦行動をする際の本拠地としての使用の態様を述べたものであって、通常軍事基地という場合の基地とは自ずとその意味を異にすることは明らかである。

5 施設・区域に対してわが国の法令が属地的に適用があっても、法令の執行のために施設・区域内の米軍の活動が結果的に諸種の規制を受けることとなったのでは、軍隊としての機能を維持できず、任務を有効に遂行しえないこととなるので、その限りにおいては協定上明文の規定がある場合を除きわが国の法令の適用は、排除されることとなると考えられる。従って、例えば、施設・区域内における軍隊としての活動には騒音規制法の適用はなく、又、米軍の行なう弾薬庫の設置、建築、埋立て等にはそれぞれ火薬類取締法、建築基準法、公有水面埋立て法等の適用はないものと解せられている。

右は施設・区域内における米軍の活動が全く自由であるということでは決してなく、わが国の公共の安全等に関連ある限り米軍がわが国の法令を尊重することは一般国際法上米側の義務であると考えられる(この点については、第十六条の項参照)。協定第三条3項は、「合衆国軍隊が使用している施設及び区域における作業は、公共の安全に妥当な考慮を払って行なわれなければならない。」旨規定するが、これは、右のことを述べたものと解せられる。ここにいう「作業」(Operations)とは、広く米軍の活動すべてを含むものと解せられており(昭和三六年四月二四日、衆・内議事録三頁)、米軍の活動によりわが国の公共の安全と関連する問題が具体的に生じた場合(又はその可能性が予見される場合)には、米軍の当該活動の必要性とわが国の公共の安全との均衡の問題として合同委員会等において日米双方がしかるべき調整を行うこととなろう。

6 施設・区域内での工事その他であっても、日本側がこれを行う場合には、わが国の法令が適用されると解せられている。従って、例えば、国が米側の要請により施設・区域内で建築、埋立て等の工事を行う場合には関係法令は、全面的に適用され、II―4―(a)共同使用の飛行場に民間航空会社が給油用施設を建設する場合は、消防法が全面的に適用され、又、米軍との請負で施設・区域内において、自動車分解作業を含む日本人事業者に対しては、道路運送車両法の適用がある。また、以上の如き場合、法令の執行のための日本側公務員の立入りについては、米側としては原則としてこれを拒むべきではないと考えられる(実際の例としてもかかる場合には容易に立入りを認めている。)。

7 施設・区域について日本政府(又は国会議員団、地方公共団体等)の立入り権(又は立入り調査権)が認められるかという問題が頻繁に提起されるが、外国の軍隊の駐留を認めている場合に、受入れ国としては、派遣国又は当該軍隊の同意がある場合は別として、かかる軍隊の施設に立ち入って調査することができないのは一般国際法上の原則である。(これは、一般国際法に、そのような具体的な規則が存在するということではなく、軍隊が第一義的には派遣国の主権の下にあることの当然の帰結であるという意味である。前述のいわゆる「管理権」も右のことを明文化したものに過ぎない。)施設・区域についても既に述べたとおりであって、地位協定及び合同委員会の合意に明文の規定がある場合(注32)を除き、米側の個別の同意を必要とする。地方公共団体等から施設・区域への立入りの要請がある際には、政府としては、右要請に合理的な理由がある限り、この要請を米側に伝達し、必要がある時はできる限り便宜をはかるとの態度をとってきている。(注33)(注34)

(注32)日本側が(公権力の行使との関係で又は国民が何らかの目的で)施設・区域への立入りを認められる場合としては、次のものがある。

(1) 演習場への立入り

米軍訓練に支障のない限り住民の生計目的のため一定の条件で演習場への立入りが許される。(合同委合意…演習場の立入りに関する事項)

(2) 港湾施設への立入り

米軍及び日本政府双方において承認及び同意を得た証明書を所有する日本側公務員は公務を遂行するために必要な場合は、提供施設に立ち入ることができる。(合同委合意…港湾施設使用の項)

(3) 施設・区域内での検証

日本国の民事裁判所は、施設・区域内で検証することができる。関係施設・区域の司令官は、裁判所の要求があるときは、これを許可し、かつ、護衛兵を付するものとする。(合同委合意…民事裁判管轄権に関する事項)(司令官は、この場合、一般的には許可しなければならないと考えられるが、安保条約・地位協定に基づく又は一般国際法上認められる軍隊の属性、機密保護という観点からある種の制限をつけることは排除されていないものと考えられ、この点は、この(1)から(6)までの事項に多かれ少なかれ全て妥当するという云うことができよう。)

(4)現行犯人等の逮捕

日本側は、米軍当局の同意ある場合又は重大な罪を犯した現行犯人を追跡している場合には施設・区域内で犯人を逮捕することができる。(地位協定第十七条10項(a)bに関する合意議事録。なお、本件については「地位協定の実施に伴う刑事特別法」第十条参照)

(5)施設・区域内での捜索等

日本側当局は、通常、施設・区域内のすべての者若しくは財産について捜索、差押又は検証を行う権利を行使しない。ただし、米側当局が日本側当局によるこれらの捜索、差押又は検証に同意した場合は、この限りでない。(地位協定第十七条10項(a)bに関する合意議事録。なお、本件については、刑事特別法第十三条参照)なお、以上の他、刑事裁判権に関する合同委合意には、日本側の裁判権のみに服する者に係る刑事事件につき捜索、差押又は検証を米側が施設・区域内で行なう場合、日本側官憲からする立合いの要請に対し、米側当局は相当の考慮を払う旨の規定がある。

(6)税関職員の立入り検査

軍当局の管理する施設・区域内から入国する場合には、税関職員はその入国場所での検査権を有する。(合同委合意…税関検査に関する項。なお、税関事務所は、施設・区域の外にある場合―例えば横田―と内にある場合―例えば岩国―とがある。)

(注33)なお、施設・区域の立入りについては、ボン協定の方が接受国(この場合は西独)に有利になっているのではないかとの議論がある。この点については、ボン協定第五十三条に関する議定書(第六項)は「施設への立入りを含む援助が派遣国軍隊からドイツ当局に与えられる」とあるが、同項は更に「但し、いかなる場合にも軍事上の安全を考慮することを条件とする。

」と規定されている他、個個の立入りは、わが国の場合と同様米軍の同意を必要とするしくみとなっているので日米地位協定の場合と特に異なるところはないと考えられる。

(注34)刑事特別法第二条は、「正当な理由がないのに、合衆国軍隊が使用する施設又は区域(協定第二条1項の施設又は区域をいう。)であって入ることを禁じた場所に入り、又は要求を受けてその場所から退去しない者は、一年以下の懲役又は二千円以下の罰金若しくは科料に処する」旨規定する。又、この点に関し、施設・区域で許可なき立入りが禁止されている地域の境界は、日英両国語でその旨記載された標識で明確にされるべき旨の合同委員会合委が存在する。

二 施設・区域の近傍における措置
1 第三条1項の第二文及び第三文は、施設・区域の近傍において日本側又は米側によってとられる措置について定める。すなわち、日本政府は、施設・区域への出入の便を図るため、米側の要請があった時は、合同委員会を通ずる両政府の協議の上で、当該施設・区域に隣接する又は近傍の土地、領水及び空間において、関係法令の範囲内で必要な措置をとる(第二文)。米側も、合同委員会を通ずる両政府間の協議の上で前記の目的のため必要な措置を取ることができる(第三文)。この点について行政協定は、日本側が措置をとることについては何ら触れず、単に米側が「出入の便を図るのに必要な権利、権限及び権能を有する」として、あたかも米側が日本領域内どこでも一方的に万能の権利を行使しうるかの如き規定をしており、規定振りとして適当でなかったこと、実際上も必要な措置は日本側がとっていたこと(行政協定は、日本側が措置をとることを排除していたものでなく、むしろ当然のこととして明文の規定をおかなかっただけのことと解される。)等から、地位協定作成の際、(第一義的には日本側がイ米軍の要請があった時、ロ合同委員会における協議の上で、ハ関係法令の範囲内で、必要な措置をとる(米側も協議の上措置をとりうる)と改めたものである。(なお、「出入」―access―とは、物理的な出入行為より広い概念で使用されている。)

2 第二文の「関係法令」とは、その際、日本側がとる必要な措置は当然のことながら、日本の「関係法令の範囲内で」とられるという意味であるが、現在のところ、この規定(第二文)の実施のみを直接目的とした総合的な特別立法はない。それでは、具体的にいかなる適用法規もないかといえば、そうではないのであって、「出入の便を図るため」施設・区域の近傍の私有地の用益権が必要であれば、当該土地に対する賃借権、地役権等を取得すれば足り、この場合には民法の相当規定が「関係法令」ということになり、国有地の使用が必要とされる場合には国有財産の管理に関する法律が「関係法令」となる。また、私有地の使用権を強制的に取得する必要がある場合には「地位協定の実施に伴う土地等の使用等に関する特別措置法」が「関係法令」となる。更に、施設・区域たる港湾近隣の水面において「一定の区域及び期間を定めて漁船の操業を制限し、又は禁止する」(漁業制限法第一条)ことが必要であって、かかる措置をとるのであれば漁業制限法が「関係法令」となる(かかる水域は、実際には施設・区域として提供されるのが普通。)。

3 右の如き措置は、原則として日本側によってとられるべきであるが、合同委員会の協議において日本側が同意する限り、米側によってもとられうる。米側によってとられうるこのような措置は、第三条に関する合意議事録に例示的に列挙されている(施設・区域外の措置にかかる事項)。米側が措置をとる点について、第三条1項第三文は、「関係法令の範囲内で」という限定を付していないが、この場合も「関係法令」によるべきことは当然であって、かかる「関係法令」がない場合又はそれにより得ない場合には、日本側は、合同委員会における協議で米側がかかる措置をとることを拒否すべきものと考えられる。なお、米側がかつてとった措置の例としては、協定第六条1項に基づく「航空交通管制に関する合同委員会の合意」によって米軍が行なっている進入管制業が挙げられている(岩間議員の質問主意書に対する政府答弁書、昭和四三年十二月二十一日官報号外)。この場合には、協定第六条1項そのものが右の「関係法令」に該当するものと観念される。

4 協定第三条1項の措置と第二十四条2項の「路線権」との関係如何が頻繁に問題とされる。「路線権」とは、この場合、第三条1項第二文によって日本側が措置をとった結果として米軍が享有する利益の実体を経費の観点からとらえて観念したものであって、特に「路線権」なる特定概念による国内法上の権利の設定を予想したものではない。(注35)

(注35)地位協定の運用に関連する日米間の費用の分担問題一般については、協定第二十四条の項で改めて詳述する。第三条1項の措置は、第二文により日本側がとる場合は、日本側がその費用を負担し、第三文により米側がとる場合は米側が負担することが当然であると解されている。他方、協定第二十四条2項は、施設・区域及び路線権の提供にかかる費用は日本側が負担すべき旨定めているので、米側が負担すべき米側の措置は第二文による日本側措置とたまたま同じものであっても、協定上は「路線権」には該当しないと考えざるをえない。この点、昭和四五年十二月七日、衆・内における政府答弁(議事録十頁)は、米側措置も路線権と観念される余地を残しているので今後は修正の要がある。なお、岩間質問書に対する政府答弁書には、「路線権は、他人の土地を通過し若しくは通行することを内容とする地役権の一種であると解される。」とあるが、右の意味は、前述の利益の実体を米側に供与する手段としては、地役権的なものがその典型的なものの一つであろう、ということである。

第三条1項第二文の施設・区域の出入の便のためにとられる措置としては、単に地役権的な権利を米側に与えることの外、当該既存の施設・区域の近傍に追加的に施設・区域を追加提供することも含まれる。これを路線権の提供と称するか単に施設・区域の提供と称するかは、言葉の問題であって、議論の実益はない。

三 電気通信関係に関する措置
1 米側は第三条1項の措置を、わが国に関する航海、航空、通信又は陸上交通を不必要に妨げるような方法によってはとってはならない(第三条2項第一文)。ここでいう措置は、施設・区域外でとる米側措置を主として念頭においていることは明らかである(けだし、施設・区域外で米側が措置をとる場合には、いずれにしろ日本側の同意が必要であるからである。)。

2 米軍の使用する周波数、電力等に関する事項は、両政府の当局間の取極による(2項第二文)。この取極に該当するものとしては、電気・通信関係の合同委員会合意があり、周波数、電波障害、電気通信の利用、航行援助通信等に関し技術的事項が詳細に定められている。なお、特別法としては「地位協定の実施に伴う公衆電気通信法等の特例に関する法律」及び「地位協定の実施に伴う電波法の特例に関する法律」が制定されている。

3 日本側は、米軍の電気通信に対する妨害を防止又は除去するためすべての合理的な措置を関係法令の範囲内でとるべきものとされている(2項第三文)。ここでの問題は、米側から電波障害除去のため、米軍通信施設周辺の私人の建築制限を求められた場合日本側としていかなる措置がとれるかという点であるが、電波法は、米軍の使用する通信施設については全面的に排除されている(特例法参照)ため、電波法に定める電波障害除去措置はとりえないことである。現在のところ、この措置のための特別立法はないので、民法により個々の関係私人に当り問題を解決(高層建築をしないという不作為義務の設定、買収等)するより方法はない。このために要する費用は、すべて日本側により負担されているが、これは、第二十四条の経費負担との関係では、前述の意味での路線権として観念されることとなろう(尤も、これは、「路線権の問題では必ずしもない」との答弁がある。昭和三六年二月二二日、衆・予議事録八頁)。

つづく