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オンズブズマンが問う
公共事業


その2 社会資本整備に衣替え


川田賢司

全国市民オンブズマン連絡会議 幹事
市民オンブズ・なら 代表委員

掲載日:2006.6.27

 ダム、空港、港湾そして高速道路についてオンブズマンが大々的に調査しありもしない過剰な需要予測をお手盛りで造り出し、それに合わせて過大で巨大な事業計画に基づく公共事業が行われてきたことを解明しました。                   
 政府が続けてきたこのような手法は、「大法螺吹聴事業推進方式」とも言えるもので、1988年に公共事業の推進原理のようなこの手法をオンブズマンが発表してから、政府の対応が変化してきています。

 それは、高速道路の建設主体であった道路公団のいきさつを見ればよく分かります。道路公団は40兆円の借金を抱え悪玉の権現にされてしまっていたのでした。

 構造改革と声高に叫ぶ小泉首相によって任命された道路公団民営化の猪瀬委員らがドタバタ劇を演じている間に、道路公団は民営会社となり、不要な路線の計画からの除外をすると思いきや計画廃止路線は一切なく、9342キロの当初整備計画は、第2名神の中心部分、大阪・京都・滋賀を通り山陽道、第2京阪、京奈和道とコネクトする大動脈部分の約35Kmだけを一時凍結してそれ以外全部建設することにしてしまっています。

 改革の実は全く上らず、結局国民の監視の目から遠ざける民営化だけは成立させていました。

 ダムも相当数の計画を中止していますが、事業計画そのものが何十年先か、いつになるか分からないようなものがほとんどです。不要だ、建設する理由が元々無かった、無駄だと具体的根拠を挙げて地域住民や研究者が証明しているのに、既に一部でも事業に着手したダムは、何が何でも建設してしまう姿勢が強固なのです。
とにかく「大法螺吹聴事業推進方式」は止めたものの、もともと持っていた長いスパンの公共事業計画の「やりたいもののための事業」をそう易々と政府自民党、自公政権が手放すはずがありません。

 それは豊富な政治献金の見返りを約束された巨額事業であるからです。

 政府、国土交通省はこれまで、第〇次××整備5箇年計画なる各種の計画を実施してきました。

 政府は、平成15年3月第156回通常国会で成立した社会資本整備重点計画法に基づき、9本の事業分野別計画(道路、交通安全、空港、港湾、都市公園、下水道、治水、急傾斜地、海岸)を一本化した社会資本整備重点計画(平成15年度以降の5箇年間を計画期間)を平成15年10月10日に閣議決定しました。

 つまり、分野別に9つあった5箇年計画や長期計画の16本を1つにしたのです。この重点計画の策定に当たり、それぞれ毎にあった審議会、9つあった審議会は総合的にまとめられて、社会資本整備審議会として既に新たな船出をしていたのでした。

 社会資本整備重点計画法の策定に向けて平成15年1月21に開催された社会資本整備審議会では、これまでの長期計画の問題点を整理しています。

 長期計画批判として、
1.予算獲得の手段になっている。
2.分野別配分の硬直性。
3.計画が縦割り。
4.緊急措置法は廃止すべき。

 公共事業批判として
1.必要性の低い事業が行われがち。
2.止める仕組みがない。
3.事業の重点化効率化がなされていない。
4.地方自治体や国民の声を十分聞いていない。

 以上の分析を元に今後のあり方として、新たな長期計画のあり方の基本方向を決めています。

新たな基本計画のあり方

 あり方1:計画策定の重点を「事業費」から「成果」へ
   a 達成される成果を国民にわかりやすく提示
   b 事業費総額は計画内容としない。(道路事業は明示)
   c 需要予測は、現行のフォローアップを踏まえて実施、
     情報公開
   d フォローアップと必要に応じた見直し実施

 あり方2:重点化・集中化の徹底
   a 横断的に設定したアウトカム目標での重点化
   b 目標の達成に必要な横断的取り組み、国家プロジェクト・
     主要プロジェクト等を明示
   c 各事業分野においても重点化、優先度を明確化

 あり方3:事業間連携のさらなる強化
    a 異なる分野・異なる主体による事業間連携を強化

 あり方4:公共事業改革の取り組みの強化
   a 公共事業改革の取り組みの考え方を明示
     コスト縮減目標
     事業評価の厳格な実施
     事業のスピードアップ
   b 国と地方の役割分担の明確化、
      地方の主体的取り組みの促進等を明示

 あり方5:国と地方の連携の下、国民に開かれた計画策定プロセスの実現
    a ブロック別地方懇談会等やPIを実施、社会資本整備の方向性を国、地方、国民が共有

 この方向性でこれまでの反省点として上げられているものは、オンブズマンが全面的に批判したものをすべて上げており、オンブズマンの公共事業の解明は非常に効果があったことを証明しています。

 そしてこれらの反省点を教訓として社会資本整備重点計画法は策定されたのですが、平成17年6月27日に行われた交通政策審議会第4回総会及び社会資本整備審議会第6回総会合同会において了承された今後の計画作成のスケジュールでは、平成19年度末頃重点計画案の審議、平成20年度中頃時期重点計画閣議決定をすることにしていて、それまで平成14年から平成19年の間は、次の社会資本整備事業の概要にあるように、目標は定めるものの、事業費の総額、個別事業カ所、事業内容などはそれぞれ事業ごとに決定されるので、当該関係自治体は計画に参与し、住民は自身の居住する地域の公報や報道を通じて承知できるが、関係住民でない場合パブリックコメントの募集等にでも注視していなければ、総合的には把握できないようになってしまったと思われるのです。

 バラマキ行政といわれ全国にムダなものを数多く造ってきた公共事業。新方式の社会資本整備重点計画では重点投資と情報公開を謳ってはいますが透明性が高まり、国民の理解が深まり、不要で無駄のない公共事業に生まれ変わることになったのか、はなはだ不透明な感じが強くなったと思わざるを得ないのです。

 社会資本整備事業の実施に関する重点目標及びその達成のため効果的かつ効率的に実施すべき社会資本整備事業の概要(第2章)

【(H14→H19 )までの目標、指標は例示】

<暮らし>

・ 横断的に事業を実施し、自宅から交通機関、まちなかまで
 連続したバリアフリー環境を実現。
  【旅客施設の段差解消 39%→7割強】
  【バリアフリー化された歩道等 17%→約5割】
  【バリアフリー化された住宅 約1割】

・ 民間の緑地(屋上緑化等)も活用し、都市域において水と
 緑の空間を確保
  【都市域における水と緑の公的空間確保量 約1割増】

・ 市街地の幹線道路の無電柱化 【7%→15%】

・ 3省庁が連携、地域特性を踏まえ、下水道、集落排水施設、
 浄化槽の汚水処理施設を整備
 【汚水処理人口普及率 76%→86%】

<安全>

・ 河川と下水道が連携し、床上浸水被害を受ける家屋を解消
 【約9万戸→約6万戸】

・ 津波・高潮による災害から一定の水準の安全性が確保されて
 いない地域の面積
 【約15万ha→約10万ha】

・ 交通安全施設等の整備により安全な道路交通環境を実現
 【道路交通における死傷事故率 118件/億台キロ→
  約1割削減】

<環境>

・ 沿道環境対策により道路周辺の騒音を低減
 【夜間騒音要請限度達成率 61%→72%】

・ 失われた自然の水辺を再生 【約2割再生】

<活力>

・ 拠点空港や空港アクセス交通の整備を推進

・ 国際競争力の強化を目指し、国際海上コンテナターミナル
 の整備等により輸出入貨物の輸送コストを低減 
 【5%減】

・ 環状道路の整備や路上工事の縮減等により交通渋滞・
 混雑を緩和
 【道路渋滞による損失時間 38.1億人時間→約1割削減】

(出典;国土交通省社会資本整備重点計画について)