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オンズブズマンが問う
公共事業


その1 港湾事業(3)


川田賢司

全国市民オンブズマン連絡会議 幹事
市民オンブズ・なら 代表委員

掲載日:2006.6.23


 平成14年で終了した第9次港湾整備7箇年計画のその後の計画はどうなっているのだ?と皆さんは疑問に思うことはありませんか。

 その前に、「巨大な釣堀」福井港を作ったこれまでの整備計画と、第9次計画によってどれだけの港湾整備が達成されたのか、第9次港湾整備7箇年計画の終了した平成14年、それまでの総投資で計画事業とされた港湾が現実化した年に、わが国の全港湾の貨物の総取扱量は、前後10年間の最低の取扱量28億4千6百万トン(港湾A表2)を記録したのでした。

 9次に及ぶ5箇年計画で投入された税金は総額が一体幾らになっているのでしょう、とにかく巨額な税金が投入され計画された港湾の整備は実現したのです、港湾を造ることだけが目的ではなかったはずなのに。

 第9次港湾整備5箇年計画(その後7箇年計画に2年間延長)の当初の計画期間と投資規模は、平成8年12月13日の閣議決定によると次のとおりです。(第40回港湾審議会答申:国土交通省HP)

II 計画期間及び投資規模

(1)計画期間

 平成8年度 〜 平成12年度

(2)投資規模(平成8年3月5日 閣議了解)

港湾整備事業

4兆3,100億円

災害関連事業・地方単独事業

6,800億円

港湾機能施設整備事業等

1兆4,000億円

調整費

1兆1,000億円

7兆4,900億円

                 出典:第40回港湾審議会答申

 平成8年度から2年間の延長で、平成14年度まで第9次港湾整備7箇年計画は実施され少なくとも7兆4千900億円が投入されたのですから、さぞかし全国の港湾は立派なものが出来あがっているに違いないはずです。

 「第9次港湾整備5箇年計画」の当初の計画内訳は次のとおりです。
 (第40回港湾審議会答申から引用)

国際海運ネットワークにおける拠点形成
 国際海上コンテナターミナル 東京港、常陸那珂港等18港 約6,020億円
 多目的国際ターミナル 伏木富山港、八代港等93港 約6,280億円
 幹線臨港道路 新潟港等16港 約3,390億円
 複合一貫輸送ターミナル 堺泉北港等24港 約540億円
 国内物流ターミナル 姫路港等255港 約3,950億円

災害に強い港湾システム
耐震強化岸壁等 秋田港、三河港等37港 約830億円
 臨海部防災拠点等 函館港等51港 約1,220億円
 海上交通の安定性の向上
 防波堤等 関門航路等16航路 約5,420億円
 避難港 下田港等12港 約470億円

活力に満ちた地域づくり
 地域生活基盤 姫川港等428港 約4,210億円
 軌道系アクセス 大阪港等3港 約80億円
 旅客ターミナル 横浜港等54港 約710億円
 地域交通拠点福江港等97港 約1,590億円
 マリーナ等 新潟港、東播磨港等53港 約560億円
 緑地等 伏木富山港等208港 約770億円
 港湾再開発 高松港等60港 約1,960億円
 調査・技術開発 質の高い港湾を効率的・効果的整備 約280億円
 廃棄物海面処分場 東京港、大阪湾等61港1湾 約4,280億円
 海域環境 博多港等52港3海域 約540億円

 (以上合計4兆3千1百億円、閣議決定港湾整備事業。)

 これらの事業計画を策定する基礎となった港湾取扱貨物量と推定値の資料があります。

表4 全国港湾取扱貨物量の推定

区分

平成6年
実績
(百万トン)

平成12年
推定
(百万トン)

年平均伸率
(H6〜H12)
(%)

備考

合計
外貨
(輸出)
(輸入)
うち外貿コンテナ
内貿
うち内貿フェリー

3,399
1,054
191
863
147
2,345
1,064

3,703
1,199
218
981
228
2,504
1,163

1.4
2.2
2.2
2.2
7.6
1.1
1.5

実績値は港湾統計による



実績値は港湾局調べによる
実績値は港湾統計による

(出典:第40回港湾審議会答申付表)

 表4の平成6年の実績欄に掲げられた、合計33億9千9百万トン、輸出1億9千1百万トンと輸入8億6千3百万トンは港湾統計の数値をそのまま持ってきたものです。

 しかし、平成12年の推定数値総量37億3百万トンは、港湾統計の実績では29億4千2百万トンでしたから、7億6千1百万トンも過大な推定、4分の1近い水増しをした予測値を基に整備計画が作られ事業は完成しているのです。

 この過大な推定値を含めた取扱貨物量の伸率は、それでも年平均たったの1.4%の見込みでした。実際には、平成14年まで取扱貨物量(平成14年取扱貨物総量28億4千6百万トン:平成6年対比▲5億5千300万トン・▲16%)は減少していきました。

 この推定の政府の狙いはなにがなんでも取扱量は増加することにし、その増加に対応した事業計画を作り、巨大工事を繰り返し続けることこそが目的だったのです。公共事業のカラクリの謎、予算取りの段階での「膨大な需要予測」はこうして生まれていたのです。

 資料をもう1つ見ていただきましょう。

 バブルが崩壊し経済の減速が続き、取扱貨物量は減少しているさなかに作られたこの計画が過大で過剰であったことを何よりも証明しているのがこの表です。

 平成7年までの第8次5箇年計画で5兆7千億円の事業費は、第9次5箇年計画では、7兆4千900億円と31%、実に2兆円近く増額させていたのです。
      
表5 新港湾整備五箇年計画と前五箇年計画の対比表

区分

前五箇年計画
(H3〜7)

新五箇年計画
(H8〜12)

投資額
(億円)

シェア
(%)

投資額
(億円)

シェア
(%)

港湾整備事業費

35,900

63.0

4,100

57.5

災害関連事業・地方単独事業

5,400

9.5

6,800

9.1

港湾機能施設整備事業等

9,400

16.5

14,000

18.7

小計

50,700

63,000

調整費

6,300

11.0

11,000

14.7

合計

57,000

100.0

74,900

100.0

(出典:第40回港湾審議会答申付表)

  つづく