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オンズブズマンが問う
公共事業


その1 港湾事業(2)


川田賢司

全国市民オンブズマン連絡会議 幹事
市民オンブズ・なら 代表委員

掲載日:2006.6.21


「スーパー中枢港湾」、「国際海上コンテナターミナル」、「指定特定重要港湾」この3つの名称は、いずれも国土交通省が定めたものです。

一口に言ってしまうと、国際貿易が増加し、しかもコンテナ化とコンテナ船が大型化しているので、これに対応した港湾に整備することと、併せて、貨物取扱時間の短縮とコスト縮減などIT化による港湾諸機能の改革で国際競争力を備えアジア地域での国際ハブ港化を目指し貨物取扱量の増量を図る、と言った2つの目的を持った港湾整備計画と重点港湾の指定格付がこの3つの名称の意味なのです。

過去10年間の海上出入貨物量などを見ながら、これらの整備計画が現状と将来のために合理的で、わが国の海運事業の正常な発展を促すことになる公共事業であるのか、検討して行きたいと思います。


表1 港湾調査(年報)統計資料(海上出入貨物表・トン数総数表)

年次

区分

合計

輸出

輸入

移出

移入

港湾数

平成16年分(04)

総計

3,167

249

962

987

968

 

特定重要港湾計

1,622

187

607

400

425

23

重要港湾計

1,138

58

300

398

379

105

地方港湾計

407

2

53

187

163

951

平成15年分(03)

総計

3,099

229

949

971

949

 

特定重要港湾計

1,578

172

600

391

414

 

重要港湾計

1,141

55

301

403

381

 

地方港湾計

379

2

47

176

153

 

平成14年分(02)

総計

2,846

223

902

882

838

 

特定重要港湾計

1,429

156

523

354

394

22

重要港湾計

1,231

64

331

438

397

106

地方港湾計

185

2

47

89

46

892

平成13年分(01)

総計

2,863

200

915

890

857

 

特定重要港湾計

1,386

140

525

339

381

 

重要港湾計

1,287

58

341

459

428

 

地方港湾計

188

1

48

91

47

 

平成12年分(00)

総計

2,942

203

933

921

885

 

特定重要港湾計

1,440

146

536

356

400

21

重要港湾計

1,311

55

349

472

433

107

地方港湾計

190

1

46

92

50

960

平成11年分(99)

総計

3,087

200

888

1001

995

 

特定重要港湾計

1,385

141

507

343

392

 

重要港湾計

1,301

57

339

471

433

 

地方港湾計

400

1

41

186

170

 

平成10年分(98)

総計

3,165

204

858

1051

1049

 

特定重要港湾計

1,405

145

483

359

416

 

重要港湾計

1,335

57

334

491

451

 

地方港湾計

424

1

40

200

182

 

平成9年分(97)

総計

3,465

207

919

1165

1172

 

特定重要港湾計

1,500

146

508

395

449

 

重要港湾計

1,486

59

367

545

513

 

地方港湾計

479

1

44

223

210

 

平成8年分(96)

総計

3,467

188

901

1184

1191

 

特定重要港湾計

1,542

137

520

405

477

 

重要港湾計

1,429

49

340

540

496

 

地方港湾計

495

1

41

236

215

 

出典:国土交通省交通関係指定統計等資料・港湾調査年報

 

 

                           (単位:百万トン。以下切捨て。平成12年、16年の地方港湾には避難港含)

上の表は、国土交通省が統計資料として発表している、港湾調査年報の海上出入貨物量のトン数量を平成8年から平成16年(年報発表分最終)までの各年の総計と、特定重要港湾、重要港湾及び地方港湾の合計数を一覧表に纏めたものです。

これでは、取扱貨物量が最も多かったのは、平成8年(1996年)の34億6千7百万トンです。取扱貨物量総計の年次推移は次のようになります。

                                表2             (単位:百万トン)     

年次

8年96

9年97

10年98

11年99

12年00

13年01

14年02

15年03

16年04

合計・総計

3,467

3,465

3,165

3,087

2,942

2,863

2,846

3,099

3,167

比率H8=100%

 

100%

91%

89%

85%

83%

82%

89%

91%

 

これで見ると、平成8年、平成9年はほぼ横ばいだったのが、平成10年では、約1割貨物が減少し、その後も減少傾向が続き、平成14年には、平成8年と比べると約2割弱貨物は減少しています。

 平成16年には1割程取扱量を回復させていますが、平成8年と比べると総量としての取扱量は、約1割弱減少している状況であることが分かります。ここまでは、海上輸送貨物は増加していなかったのです。

総量が減少する中で伸びていたものがあります。輸出、輸入の海外貿易での貨物量です。

                                                   表3               (単位:百万トン)   

年次

8年96

9年97

10年98

11年99

12年00

13年01

14年02

15年03

16年04

輸出入計

1089

1,126

1,062

1,088

1,136

1,115

1,125

1,178

1,211

比率H8=100%

 

103%

98%

100%

104%

102%

103%

108%

111%

全量対比

31%

32%

34%

35%

39%

39%

40%

38%

38%

                                                      

表3は、輸出、輸入の合計を表にしたものです。平成8年の10億8千9百万トンを100として比率を計算した場合、平成10年に若干の減少が見られますが、平成16年の取扱量は、約1割強の増加となっています。

 平成8年には総量34億6千7百万トンのうち31%
(全量対比)だった取り扱い比率は、総量の減少する中、平成16年では31億6千7百万トンのうちの12億1千1百万トン、38%にと取扱量、比重共に増加しています。

内容の検討をしてみましょう。海外貿易での貨物取扱量が、斬増していることは表3のとおりですので、これの取り扱いの港湾区分を見ます。

 表1の輸出、輸入の欄の、特定重要港湾、重要港湾及び地方港湾に区分された合計の数字を拾っていきますと、平成16年輸出・輸入の合計12億1千1百万トンの取扱量の区分は、特定重要港湾が7億9千4百万トン、重要港湾が3億5千8百万トン、地方港湾が5千5百万トンとなっています。

 この年の特定重要港湾の数は23港湾、重要港湾は105港湾、地方港湾は900港湾位でした。特定重要港湾23港と重要港湾105港を合わせた128港湾で、取扱量全体の95%以上を占めていることがわかります。

 しかも、23港の特定重要港湾だけで65%3分の2を扱い、約3分の1弱は105港ある重要港湾が扱い、約900港ある地方港湾での取扱量はたったの5%弱となっています。

総量では減少している中、わずかばかり増加している海外貿易量をうまく利用した港湾の国際化を謳った公共事業計画が新しい衣で登場しているのです。

重要港湾として500億円近くの公共事業費を投下して整備された福井港は、港湾計画に謳われた100万トンクラスの船舶の接岸で競争に勝ち抜き日本海側の中心的港湾となるはずが、計画取扱量の10%にもならず、とうとう地方港湾に格下げされてしまいました。

その福井港も入れた約900港全部の地方港湾での取扱量が5%にもならないことをわれわれは再度肝に銘じ、今また、国土交通省が謳う国際化、コンテナ化、大水深化、IT化、時間短縮、コスト縮減の美辞麗句の下、必要外の事業計画が立てられ、第9次7箇年計画(平成14年で終了)の後の事業が進められてはいないか、又、必要ではあるが投資額がアメリカ、ヨーロッパなどと比べ過大で過剰となってはいないか、ここから検証にはいります。

つづく