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教育基本法案の本当の大問題
─ 7条分の増加(全11条→全18条)
の中に何が隠されているか ─


加藤 秀樹
構想日本 代表

掲載:2006年12月1日

                    
 みなさん、教育基本法を実際にお読みになったことがありますか。

 現在の教育基本法は全11条という短い法律で、教育の目的、機会均等、義務教育、男女共学、学校教育などについての基本的な理念を定めたものです。

 現在、政府の改正案に対して国会やマスコミでもっぱら議論になっているのが、「愛国心」です。しかし、実は「敵は本能寺」なのです。マスメディアは話題になることしか取り上げませんが、私は今回の改正の本当の問題は教育に対する文部科学省のコントロールの強化と一層の中央集権化にあると思っています。

 改正法案には「生涯学習」「家庭教育」「幼児期の教育」「教育振興基本計画」などの新しい条項が追加され、全18条へと7条分増えていて、その中に大問題が隠されています。

 最大の問題は「教育振興基本計画(第17条)」です。問題点は大きく2つあります。

 まず1点目は、「文部科学省のコントロール強化」が進むことです。これが、「小さな政府」をめざす流れに真っ向から逆行するのは明らかです。一旦法律ができるとその運用は文部科学省の手に委ねられてしまい、その手の中でどんどん膨らみ、私たちの生活の隅々にまで入ってきます。(文末の〔注1〕参照)

 さらに、新設される「家庭教育」「幼児期の教育」などの条項とあいまって、生涯をとおして家庭にまで教育行政が介してくる恐れがあります。

 2点目は、「地方分権」の流れに逆行していることです。第17条の第2項は、地方公共団体は国に従う旨を指示しています。(文末の〔注2〕参照)

 地方分権と小さな政府は、政府・与党が進めてきた政策です。それらの実現が国民のほぼ総意になっている時に、政府が基本計画を策定し、家庭教育にまで口をはさむべきなのでしょうか?

 要するに、教育への文部科学省の関与が増大し、一層の中央集権化が進む恐れが大いにあるということです。法案の中には政治家や官僚の思惑が盛り込まれ、きちんとした議論を経ないまま法律となってしまうことが多いのです。

 教育基本法改正が将来に禍根を残すことがないよう、参議院での審議の中できちんとした議論が行われるよう私たちも声を出していきましょう。
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(注1) 教育基本法改正案 第17条

「政府は、教育の振興に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、教育の振興に関する施策についての基本的な方針及び講ずべき施策その他必要な事項について、基本的な計画を定め・・・」

(注2) 教育基本法改正案 第17条第2項

「地方公共団体は、前項の計画を参酌し、その地域の実情に応じ、当該地方公共団体における教育の振興のための施策に関する基本的な計画を定めるよう・・・」