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東京都二十三区の家庭ごみの処理・処分は、2000年3月までは「東京都清掃局」が一括して行い、2000年4月以降は各区が収集し、「東京二十三区清掃一部事務組合」が焼却等の中間処理を行い、焼却灰・飛灰と燃やさないゴミが、東京湾中央防波堤にある「東京都」の最終処分場に、埋め立てられている。 杉並区の不燃ごみ(主にプラスチック類)は、杉並区井草4丁目の区立井草森公園に設置された中継所(杉並中継所)に集められ、圧縮されて、大型のトラックに積み替えられ、最終処分場に搬入されている。 杉並中継所の周辺では、施設の稼働直後から深刻な健康影響の訴えが多発した。 この問題については、青山貞一教授(武蔵工業大学環境情報学部教授)が、以前に独立系メディア「今日のコラム」(以下の3つのURL)に紹介しているので、本稿末尾で紹介する記事と合わせてご覧頂きたい。 ■「杉並病」を風化させないために〜研究者らで現場を実査〜その12008年より「東京二十三区清掃一部事務組合」では、廃プラを「不燃ごみ」から「可燃ごみ」に変更することとなった(開始時期は区によって異なる)。多くの区では容器リサイクル法による一部のプラスチックの資源物としての回収を始めたため、一部のプラスチックはリサイクルされ、残りのプラスチックが焼却処理されている。廃プラ焼却の問題については別途大きな問題があり、以前から何度も紹介してきた。 いずれにしても東京都二十三区では廃プラがそのまま最終処分場に搬入されることはなくなるため、杉並中継所で圧縮・積み替えを行う必要は無くなった。そのため杉並中継施設は、この2009年3月に廃止されることとなっている。これを報じる毎日新聞の記事によると、杉並中継所周辺では、今でも健康影響に苦しんでいる人がいるという。 一方、大阪府寝屋川市では廃プラリサイクル施設の周辺で、杉並中継所周辺と似たような健康被害の訴えが多発して裁判となり報道でも何度か紹介されている。杉並中継所同様にプラスチックの圧縮過程に起因するものではないかと疑われており、同じ毎日新聞の記事に報じられているので、以下に紹介する。 記事にもあるように、廃棄物はリサイクルすることが「いいこと」とされ、全国各地に同様のリサイクル施設が多数建設されている。しかし、少数派とはいえ、杉並や寝屋川で被害者が出ていることに目を向けずに、リサイクルは「是」としてこうした施設をつくり続けることには問題がある。昨今の廃プラスチック焼却の是非を巡る議論と一緒になって、焼却かリサイクルかが二者択一のように言われるのも問題だ。 消費した後の製品を焼却してもリサイクルしても環境への影響は少なからず発生する。根本的な問題は、いかにごみ処理(焼却・破砕・圧縮等を経たリサイクルなど)をしなくて済む製品作りを進めるか、そのための仕組み作り、制度づくりが不可欠であり、本来の生産者責任(いわゆる拡大生産者責任)こそしっかりと問われるべきである。現状のように、すべてを消費者や自治体の「処理」に依存できるシステムは早急に見直しが必要である。 この種の施設建設をめぐり地域分断や地域紛争が起こることは不幸なことであり、地域住民の闘いがより本質的なごみ政策の見直しにつながっていくことを望みたい。なお、寝屋川事件では、原判決があまりにも不公正かつ不見識であるとして原告側が控訴している。杉並でも寝屋川でも、裁判では施設の建設や稼働を認めた行政がその背後にあって、被害実態や被害者の救済に対する判断が軽視されがちであることが課題である。その意味でも、第三者的に被害者を支援する研究者や専門家の関与が鍵となる。
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