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  岩手県内の汚染牧草の焼却処理:
その課題と代替案
 池田こみち
環境総合研究所顧問
掲載月日:2013年5月29日
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 2013年2月、災害廃棄物の広域処理が概ね一段落し始めた頃、岩手県内では、各地で農家が保管してきた汚染牧草を焼却処理する方針が出され、住民の不安が高まった。宮古市の一般廃棄物焼却炉はがれき専用の仮設焼却炉のすぐ近く、小山田地区の山の頂上付近に立地していることから、近くの小山田保育所に子どもを通わせるお母さんや住民の皆さんからの切実な声を受け、その実態を以下のブログで紹介した。

◆池田こみち:今、岩手県宮古で起こっていること〜汚染牧草などの焼却処理〜
 http://eritokyo.jp/independent/ikeda-iwate001.html

 宮古市だけでなく、遠野市でも同様の焼却処理が始まり、不安を訴える市民から
どうすれば焼却処理を止めさせることが出来るのかといった質問も寄せられていた。

 地元では、自治体や議会などが一体となって焼却処理を推進しており、反対や疑問の声が上げられない事態となっているという。試験焼却や焼却処理中の測定分析結果を見ても問題ないのに何を騒ぐのか、せっかく農家が汚染牧草の処理が進んで喜んでいるところなのに、余計なことを言うな、という非難も浴びているいう。

 そこで、遠野市での焼却処理の現状を踏まえ、汚染牧草の汚染レベルはどの程度なのか、焼却処理中のモニタリングデータはどのようなものなのか、その上で、焼却処理以外に方法は無かったのかについて検討を行ってみた。

 以下のコメント(意見書)は、宮古市、遠野市で活動する市民グループに送った
ものである。

 ◆意見書PDFファイル

 結論としては、少なくとも遠野市の「汚染牧草」とされる牧草の放射性物質の測定
値はそれほど高くなく、一般廃棄物に平均4%程度を混入して焼却しても主灰・飛灰の放射性セシウム濃度も比較的低く、まして、一般環境大気中の空間線量率も低い値となっていることから、一見全く問題がないように見えるが、6年間もの長期にわたり焼却により発生する飛灰を一般廃棄物の最終処分場に埋立処分すれば、半減期の長いCs-137が無害化するまでには100年以上の時間を要し、その間浸出水などに放射性物質が漏れ出す可能性もあること、また、焼却により排ガス中の放射性物質が拡散する危険性も長期にわたり続くことから、なぜ、焼却処理でなければならなかったのか、他に代替案はないのか、について納得できる説明がなかったことが最も問題であると思えた。

 一方で、独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構の研究によれば、放射性セシウムで汚染された牧草サイレージに対し、家畜ふん尿に準じた堆肥化処理を行うことにより、大幅な減量・減容が可能であり、また、堆肥化過程における原料サイレージから周辺環境への放射性セシウムの放散や漏出は微少である、と報告されている。こうした研究成果なども実際の現場の政策に生かして行くことが重要ではないだろうか。