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東京23区内清掃工場における

水銀汚染問題

池田こみち
掲載月日:2014年4月21日
 独立系メディア E−wave
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 東京23区内には、21の清掃工場が毎日稼働している。23区の一般廃棄物の焼却処理をはじめとする中間処理を行っている東京二十三区清掃一部事務組合(以後、「清掃一組」と略称する)では、最終処分場(東京湾中央防波堤沖)の延命化を目的として、平成20年度からこれまで埋立ごみとしてきた廃プラスチック類を混合焼却する方針に転換した。

 それにより、従来可燃ごみに含まれる廃プラスチック類の割合は5%程度で推移していてたものが、平均15%から高いところでは20%にまで上昇したことが明らかとなっている。

 そうしたなか、平成22年度から、23区内の清掃工場で相次いで水銀のトラブルが発生し、焼却炉が停止する事態が相次いだ。これまでに8清掃工場で水銀汚染が発覚し、そのための点検・清掃・設備交換費等で約5億円の費用がかかっている。

    表 23区内の清掃工場における排ガス中水銀汚染発覚工場一覧
   出典:東京二十三区清掃一部事務組合WEBサイトより

 これまでの中では、足立工場の2億8千万円がもっとも高額となり、バグフィルターに水銀が付着したために全面的な取り替えが必要になったと報告されていた。

 しかし、今回、新たに汚染が発覚した中央清掃工場においては、バグフィルターのみならず、脱硝設備の触媒交換を伴う大規模な修理が必要となった模様で、修理にかかる費用は約1億9000万円が予定されていることがわかった。

 停止中の中央清掃工場 2号焼却炉の経過について (清掃一組の発表情報) 

 清掃一組では、水銀汚染が発覚する度に、「不適正ごみの搬入があったため」として、水銀を含むごみの不法持ち込みや一般ごみへの混入に気をつけるような広報を行ってきたものの、これまでのところ、明確な汚染原因を突き止めることは出来ていない。清掃一組では、事業系廃棄物(例えば、水銀血圧計など)が違法に持ち込まれたことが原因との見方を強めているようだが、証拠はない。

 今回の中央清掃工場についての報道発表によれば、復旧に要した費用が高額のため、「警視庁と今後の対応について協議」とある。これは、明らかに、清掃一組が被害者として、犯罪を告発することを視野に入れたものと思われるが、外部の犯人捜しの前に、廃プラ混合焼却開始後に頻発している水銀汚染問題の原因について、しっかりとした内部の調査を行うことがまず先決ではないだろうか。

 また、「また、プラント設備の機能などを脅かす不適正ごみの搬入防止に向け て、搬入物検査を強化するとともに、23区及び東京都と連携した対策を継続していきます」しているが、一般廃棄物の処理は基礎自治体の自治事務であることから、まずは、一般廃棄物処理基本計画を策定している23区ごとの具体的施策(収集運搬体制や分別方式、危険ごみの扱いなど)について調査するとともに、区が許可している搬入業者の検査態勢についても点検が必要である。

 繰り返し指摘しているが、清掃工場の排ガス中の水銀をはじめとする有害金属類については、一切の法的規制がないため、排ガス中の濃度の測定すら行われていないのが一般的である。たまたま清掃一組においては、EUの規制基準を適用し「自主管理基準値」として監視していたために明らかになっているが、23区内ばかりでなく、各地で水銀の汚染が生じている可能性もあることから、環境省はすみやかに焼却炉に対する規制の強化を行うべきである。

 都民が排出する一般ごみ量は年々減少を続けているが、焼却炉は次々と建て替えられ十分な余力を有していることから、処分場の延命化、廃プラ焼却による高効率発電の実施などを理由に焼却強化を推進することは大気中に有害物質を捨て続けることに他ならず、早急な対応が求められる。

 震災以来、放射能への関心が高まっているが、身近なごみ焼却施設においても発がん性やアレルギー性を有する有害化学物質は日々排出されていることにもっと関心を持つべきではないだろうか。

<参考資料>
 環境総合研究所、清掃工場の連続水銀事故の検証と 課題